第四章「新米館主、初仕事」⑱
どんよりと曇った空。夜には、本格的な雨降りに。
そういえば、ここ出水の市街地に、オオルリ?でしょうか。
きれいな声で鳴く“山の小鳥”が。夏鳥の渡りの季節なのでしょうね。
疲れておりますが、少しでも先に進むべく。
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第四章「新米館主、初仕事」⑱
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睦と大山は、今までよりも半歩ずつ間合いを広げた。そして、ゆっくりと円
を描きながら、間合いを保つ。
どうしたものか?。もちろん、大山が諸手刈りに来た瞬間に、後ろに飛びず
さる、あるいは横っ飛びで避ける方法が、最も確実だが、それでは新納流らし
くない。出会い頭に顔面へひざ蹴りというのは実戦的だが、“優しい”相手・
大山の顔面を蹴ることなぞ出来ない。
子供の頃の睦なら、ここはひらっと上に跳んでかわすことが出来たろう。
そうか。
当時の跳躍力は、胸と腰のおかげで失われてしまっているが、身長そのもの
は、今も十分小柄だ。身体の柔軟性も、失われていない。そして、一瞬の判断
力は、二十を過ぎた今の自分の方が、磨かれているのではないか。
よし。
睦は、決めた。改めて、向かい合う大山の目を見た。
大山が、小さくうなずいてくれた。
「おっ」
身体を低くしながら、猛然と突進してきた。
「はっ」
睦も半歩踏み込んでから、両脚を踏み切った。
(つづく)
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