第九章「ひきこもり剣士」①
日ごとに早くなる、日没時間。
昨日は、バイク通勤の同僚が、上着を羽織って出勤されてきました。
今年の夏は短かった・・・・・・でしょうか?
FC2小説で、皆さんの作品を拝読すると、短編小説を量産するという
スタイルが楽しそう・・・・・に思うのですが、
我は、やっぱり愛しのヒロイン・むっちゃん。
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第九章「ひきこもり剣士」①
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m
「・・・・さっきは、ごめん」
「うん。もういい・・・」
新納流試心館の館主・御仮屋睦と“ひきこもり剣士”平手慎三郎は、紫尾市
御館町(しびし・おたてちょう)の武家屋敷街を、散歩している。
二人っきり、と言いたいが、そこはしっかり、大型犬のタダモトが「ぼく、
ボディーガード」と言わんばかりに、従っている。そして、二人の会話を子細
逃さないよう、しっかり聞き耳を立てているのだろう。もっとも、土曜午前、
一応紫尾市の観光地だ。睦が、しっかり曳き綱を握っている。
「立ち合い」を終えて、今度は「お見合い」らしく、睦は慎三郎と屋敷の
縁側にでも座って、話をしようと思ったのだが、どうにも人が集まりすぎて
しまった。ゆっくり二人で話をする雰囲気では、ない。
それならば、と、慎三郎を散歩に誘ったのだ。
それでも、ビシッとおしゃれをした女の子と、剣道着姿の男と、大型犬の
組み合わせは、目立ってしまう。すれちがう観光客から、「なにごと?」と
ばかりに好奇心に満ちた視線を受けてしまうが、それも“修行”だ。気に
しないことにしよう。
とはいえ、睦は、まだ恥ずかしさから、完全に回復していない。なかなか
滑らかに、言葉が出てこない。
“ひきこもり”の慎三郎の方が、気を使ってくれるのだろう、
「・・・いい天気だな。夜行性のオレには、ホント眩しすぎる。あっ、日傘
か、せめて帽子でもないのか?」
存外、慎三郎は気が利くようだ。
「うん。大丈夫」
睦は、短く答えた。
(つづく)
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