『あしたの神さま』西川美和著
気がつけば、早帰省ラッシュの時期なのですね。
東武野田線愛宕駅前の商店。日よけの内側は、お墓参り用の切り花。
さて。手にしたのは、三根梓さんが帯カバーを飾る『フリーター、家を買う。』より
先に、『きのうの神さま』西川美和著・ポプラ文庫。
こちらも、八重洲ブックセンター丸井柏店にて、購入。
・・・・・首都圏に“Uターン”してきて、ひとつよかったこと。
気軽に大型書店に行けて、陳列を楽しみつつ、手に取って本を選べるって、シアワセだ~~。
(まあ、その前提に「本を読もう」と思える生活環境にあるシアワセを、
噛みしめなければ・・・・)
西川美和氏って、映画監督して有名である。
吉川さんから
はい、自分も存じております。
けれども、その作品って観たことあったかな~~・・・
というのが、私。
「謝辞」の中で、西川氏は
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僻地の医療を題材にした映画を作りたい。ちゃんと現状を投影して作れば面白いと思う。それに
は時間をかけた綿密な取材が不可欠だ。----けど、金がない。映画界の輩というのはそもそも勝算
のある脚本が上がるまではびた一文出す気はない、一番肝心なのはその脚本作りのプロセスだって
のにですよ、などと夢は次第にボヤキに変わったのですが、たぶんその様が聞くに堪えないほど惨
めだったのでしょう。どうにか取材の支援をするから、同じような題材で後々小説を書いてみません
か、と吉川さんから大変力強い言葉をその場でいただいたのでした。
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とのこと。
なるほど、ここから映画『ディア・ドクター』が産まれたのですね・・・・・。
そして、この短編集が直木賞候補にもなったとのこと。
(才能のある方は、とことん才能をお持ちのようで・・・・・(-_-;))
とはいえ、私は文庫化されて、今回初めてこの短編集を手にしました。
で、一読して。決して僻地ばかりが舞台の作品を収めた短編集ではないのですが、
私の脳裏には、青ヶ島、宝島、あるいは大隅半島、球磨川流域の光景が鮮やかに甦ってきて、
息苦しくなり。
このアホブログをさっと見ただけで、お解り頂けると思いますが、
駅前の大型書店をブラブラうろついて、休みの日には、ショッピング・モールに併設されたシネコン
へ足を運ぶ・・・・・・そんな首都圏暮らしを、エンジョイしております。
そんな自分が、ふと後ろ髪をつかまれて、後ろを振り向かされた・・・・感じです。
『1983年のほたる』。
村まで来る最終バス。バスはそのまま運転手とともに一夜を過ごし、翌朝の始発バスになる・・・。
佐多町辺塚の光景が目に浮かび。
ですが、一点、この作品集にケチをつけたいこと。
「現状を投影した」ものと思ってしまうのは、要注意。
『1983年のほたる』という題名が示すように、“一昔前”が舞台のように思います。
小さい集落に一人の医師が駐在する診療所、って、平成の市町村合併が推進される以前、
2000(平成12)年より前の形式なのでは・・・・・と思うのですが。
作品の中でも描かれておりますが、地元の人間も小さな診療所よりも、都市部の大病院に行きたがる
ようになり。
行政も、小さな診療所を維持するよりも、ある程度の病院に統合しようとしている・・・・・
それが、ただいまの僻地の医療の現状なのではないでしょうか。
いや、ですから、首都圏暮らしの身には、それが遠い“日常”であり。
じゃあ、出水市の総合医療センターは今どうなっているの??
ちょっともどかしさを感じたことも、確か。
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