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2011年10月 3日 (月)

第十章「新米館主、後輩を得る」⑧

 いつも、いつもの、立って食べる「夕食」。

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 いや、ですから、
 「鈴木さん、もっとゆっくり休憩していいんですよ」
 と言われながらもの、

  ああ・・・・、わが貧乏性。 と、ご理解頂きたく。m(__)m
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     第十章「新米館主、後輩を得る」⑧
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m

 それでも、睦は“普通な女の子”だ。振り返って見る、祝子のたたずまいが、
確かに怖く見える。
 (いや、いや。
  Even the hunter will refrain from killing the bird that has flown to
him for shelter・・・・)
 自分に念じて、祝子には笑顔を見せる。
 「ね!。祝子ちゃん、弟が淹れてくれた、ココア、飲もう!」
 「あっ、・・・・・睦さん・・・・、無理しなくていいんです。私のあだ名が
“呪いの美少女”、ってことも、私、知っています」
 
 「おいしい・・・・・」
 睦から手渡されたカップに、ひとくち口をつけた祝子が、感想を述べた。
 「えっ?」
 「コーヒーとか、ココアとかって、『魔性の飲み物』とされているんです。
だから、初めてかな?、母が『入信』したのは、私が3歳の時だから、本当に、
初めての“ココア体験”です」
 「えっ??!!!。私、とってもいけないこと、しちゃったの~~!!」
  つい、睦は慌ててしまったが、
 「はい。
   ・・・・・でも、
  だからこそ、睦さんに、お会いしてよかったな・・・・・・」
 祝子の言葉は途切れる。

 「私、教主様の、御目にとまったんです。東京にある神殿で、教主様に
お仕えする巫女にならないかって」
 「私には、よくわからないけど、それって“名誉”なことなんじゃない?」
 「はい、とても。私にとっても、母にとっても。そして、ここ紫尾教区の
信者の皆さんにとっても、大変名誉なことなんです。
                        ・・・・・でも・・・」
 「でも?」
 なぜ祝子が今日、睦を訪ねてきたのか、なんとなくわかった。
 「・・・でも・・・。女手ひとつで、ここまで私を育ててくれた母には、
とても感謝しています。・・・・でも、でも・・・・・」
 なかなか、その先が出てこない。
 「あっ、祝子ちゃんの悩みを聴こうとしている私って、もう呪われちゃっ
てるってこと~?」
 わざと、軽い口調で言ってみる。
 「あは。そうですね。大きな『お報せ』が、睦さんにあるはずです」
 祝子も、すこし笑ってくれた。
 「・・・・英語か・・・。勉強って、一所懸命したら、楽しいんだろう
な・・・・」
 睦の本棚に目をやりながら、つぶやくように、言う。
 「えっ?。祝子ちゃん、今、高校生でしょ・・・・」
 定期テストがある。否応なく、勉強しなければならない立場のはずだ。
 「はい。・・・でも『御教え』と、学校の授業って、一致しなくて・・・。
『御教え』を守っていると・・・、私、学校の成績、とっても悪いんです。
体育も、『女人、ふしだらな装いを、するべからず』っていうのがあって・・・」
 「ふ~~ん。大変なんだ・・・・」
 睦は、返す言葉を失くした。
 「・・・・でも・・・・」
 祝子の口から、何度目かの「でも」が、出た。
 「昨日、睦さんが男の人を倒して、抑え付けるところ、見ました。とっても
素敵だな~~って。思い切って、話をしてみたいなって。決心して、来てみま
した」
 「そう・・・・」
 すぐには返す言葉を、睦には思い浮かばない。代わりに、あらためて祝子の
細い肩に、手を置いてあげた。
                          (つづく)

    

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