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2013年1月15日 (火)

自作小説『続 新米館主・御仮屋睦』(1/15)

 日没後に雪は止み。

 しがない孫請け労務者としては、「雪かきって、契約業務外だよな~」と悩みつつも、

裏門から庁舎軒下までを、雪かき

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 半分溶けたような、水気の多い雪なので、結構面倒・・・・・。

 おまけに、隣近所の方から「うるさいっ!」と苦情が来たらと、ヒヤヒヤ・・・。

  さて。

 洗濯物を干せば、2時間でカラカラッに乾き、クマゼミがシャンシャカ鳴き、

 「海、行きたい~っ!」と思う、梅雨明け直後、太陽ぎらぎらの季節を思い出してくださいナ

 最初から読んでくださる方は、こちらから是非に。m(__)m

薩摩の東夷さんの小説一覧ーFC2小説ー

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    水着を買いに
  水着を買いに(1)
 紫尾の商店街の中ほどにある御仮屋書店は、御館町の武家屋敷街に上る坂道にも面している。かつては敵の侵入を阻むため道幅は極端に狭かった。ところが、睦が生まれる以前に拡幅され、その分御仮屋書店の敷地は削られた。睦が生まれ育ったこの店舗兼住宅は、その際建て替えられたものだ。庭がない代わりに、坂道に面した部分にテラスを広く設け、庭代わりにしている。
 睦はそのテラスで洗濯物を干している。梅雨明けした日差しがきつい今の時期なら、洗濯物も外に干せば、瞬く間に乾くだろう。平日こそ、洗濯は母親まかせだが、土日は睦がするようにしている。思春期の弟二人の姉として、自分の下着を不用意に二人の視線に晒(さら)さない・・そんな心得のつもりだ。ところが、家族五人分の一日の洗濯物の量が、夏場は半端ではない。少年野球に打ち込む下の弟・時(とき)はもちろんだが、睦が日々生産する(?)洗濯物の量も、弟に負けない。朝、試心館の清掃とタダモトの散歩で、早々と一汗をかき、出勤前に大急ぎでシャワーを浴びて、飛び出すように出勤。職場こそは冷房完備であるが、そこは「節電」。夕方までみっちり仕事しようものなら、身体中に汗がまとわりついている気分だ。またまた大急ぎで家に戻れば、さっと着替えて、夕方のタダモトの散歩に、“じいさん”こと義彰(よしあき)との稽古で、また大汗。化粧を入念にする暇なぞない。そんな睦にとっての夏の日々だ。
 (う~~ん、夏の日差しの下で、物干し竿に並ぶ洗濯物って、なかなか爽快な光景よね・・)
 問題の“睦の下着”は、ネットに入れて洗濯し、終われば、それだけは自室で部屋干しだ。もっとも弟二人のトランクスなんぞ、睦は平然と物干し竿に干していく。
 「睦さん、おはようございます」
 テラス横の道路から、声がかかる。睦の年下の友達・米櫃祝子(こめびつ・いわいこ)だ。
 「あっ、祝子ちゃん、おはよう。もうちょっと待ってね。・・・そうそう、そこから上がってきて」
 道路から直接テラスに上がれる。
 「はい、それでは、お邪魔します。あっ、私も手伝います!」
 「そう!、ありがとう。今日は一日天気がよさそうだから、家族五人分のシーツも洗ったの」
  祝子も手慣れた様子で、洗濯物干しに参加してくれる。・・・とそこへ、いかにも何気なく~を装いつつ、上の弟・瞬(しゅん)がテラスに出てきた。
 「・・・あ・・、米櫃さん、おはよう」
 (ふふふっ・・・、眠気覚ましに出てきました~って、言いたいわけね)
 睦には、弟の目論みなんぞ丸解りだが、そこは姉の慈悲。知らぬふり、をしてあげる。
「・・あっ・・、おはようございます・・・お、御仮屋くん・・・」
「あっ、オレのこと、瞬って、呼んでいいから・・・」
 (く~~っ、弟よ、思い切ったことを)
「そ、そう?、そうか、お姉さんが睦さんなんだから、弟は瞬くんね」
 (おっ、いい雰囲気ってヤツ?)
 ・・・・と。祝子が洗濯籠(せんたくかご)から何気なく取り出して、広げたものは・・・、
 「きゃっ!」
 「うわっっ!!、それ、オレのトランクスッ!!」
  瞬が大慌てで、祝子の手から、自分の下着を奪い取る。
 「はははっ、ごめん、ごめん。そうか、祝子ちゃんも、男モノの下着なんて、縁無いわよね~」
 
  今日は、これから県庁所在地まで鹿児島市内までドライブがてら、祝子と一緒に水着を買いに行く約束をしている。弟・瞬も連れて行ってあげたら、とは思ったが、水着姿は当日までの秘密にしておきたい。ちょっとかわいそうだが、今日は誘わない。
 「じゃあ、瞬。留守番お願い。今度、瞬も一緒にドライブへ行こう」 
 カワイイ弟に、一言フォローする。ところが、祝子が
 「あの~、瞬くんも、今日は一緒に行きません?」
 と、瞬を誘ってくれた。くっ、瞬の喉が鳴る。もうここは「行きますっ!」と即答したいところだろうが、
 「あっ、祝子さん、ありがとう・・・。だけれど、今日は、水着を買いに行くんだろ?。それじゃあ、男は遠慮すべきだな・・・」
(おっ、我慢しちゃって~。ここは"Support his boy's heart"〔“男の子心”を援護ね〕)
 「そうだ、瞬。私たちがお買い物をしている間は、本屋にでも行っててよ。そして、また合流してランチを三人で食べよ」
 「あら。本屋の息子さんが、鹿児島市内の本屋に行くのかしら?」
祝子にすれば、当然の疑問か。
 「わはっ。市内の大きい本屋さんに行くのも、楽しいのよね。ね、瞬?」
 「そう・・・。やっぱり本屋の息子が、Savanna(サバンナ・某巨大通販サイトを思い浮かべてください)で本を買うわけにはいかないんだよね・・・」
 「よしっ、決まりっ。さ、瞬、五分で身だしなみを整えてくるっ!。祝子ちゃんを待たせたら、男が廃る(すたる)ぞ」
 瞬が、大急ぎで室内に駆け戻る。
 
                              (つづく)



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