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2013年3月17日 (日)

自作小説『続 新米館主・御仮屋睦』(3/17)

 3月17日、今朝の夜明け。

1303171s

  鹿児島を離れて、早一年。

  「もっと天文館にも、遊びに行っておけばよかった・・・・・」と、心底思います。

 そして、オジサンが必死に“性欲”と戦いながら書く、“明るいお色気”を評価して頂きたく。

 最初から読んでみたいと思ってくださった方は、

 ・薩摩の東夷さんの小説一覧 FC2小説   から、是非に。m(__)m

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  水着を買いに(4)
  紫尾を出発した途端、ちょっとイヤな気分を味わった三人だが、そこは若い。さっと気分転換して、車中のおしゃべりを楽しむ。御仮屋姉弟が通った(または、通っている)紫尾高校・通称“普通高”と祝子の通う紫尾中央高校・通称“中央高”との、ちょっとした校風の違いなども、いいネタだ。おまけに、睦がスカイラインのエンジン出力を利用して、山道のカーブもすいすい走ってみせれば、祝子が「睦さん、すごいですっ!」と素直に感心してくれるから、“運転し甲斐がある”というものだ。
 やがて、三人の乗った車は、甲突川の上流で国道3号線に出る。行政区域としての「鹿児島市」にはすでに入っているのだが、「市内」という気分は、ここからだ。
 「A lady & A boy, we'll soon arrive at Kagoshima.For a long time,thank you.
   もうすぐ“市内”だけれど、祝子ちゃん、どこか行きたい希望はある?」
 「えっ、私・・・、ショッピングなんてしたことないから・・・」
 「ははっ、そうだよね。う~~ん、と言っても、私も短大は熊本市内だったから、実は鹿児島市内って、あんまり詳しくないのよね~~」
 谷山方面に新しく開店したショッピングモールを利用するのが、駐車場にも困らないし、夏のこの時期なら、水着もお手頃価格でそこそこ品揃えもありそうだ。だが、御仮屋書店という商店街の一角に店を構える家の娘としては、やっぱり昔からの繁華街「天文館(てんもんかん)」で買い物をしたい。そして、今日は水着だけでなく、ビーチウェア一式を祝子と一緒に買い揃えるつもりだ。OLである自分はともかく、高校生である祝子の金銭的負担を軽くしてあげたい。
 (う~~ん、やっぱり何軒か、見て回りたいわよね・・・)
「よしっ、車は山形屋の駐車場に停めさせてもらって、お昼は七階の大食堂で食べることにしよう」
「そうだな。オレ、久しぶりに、あそこの『かた焼きそば』食べたくなった」
 というのは、弟・瞬。
「そうよね。あっ、祝子ちゃん、『かた焼きそば』って、食べたことない?」
「あっ、有名なんですか・・・」
「そう、隠れた鹿児島名物」
      *             *             *       
 駐車場に車を停めた後、瞬とは落ち合う時刻を決めて、別れる。さて、女二人で“天文館ブラ”の始まりだ。よく“温かい人情が活きる町”と言われるが、裏を返せば、窮屈に感じる時も多い。さすがに、ここ鹿児島県一の繁華街・天文館まで来れば、“若い女性の二人連れ”になれる。
 「でもさ~、祝子ちゃん。その相変わらずの、いかにも今は絶滅した清純美少女ファッションって、どうよ~」
 「えっ・・・。あの~、これは『お教え』に基づく“純潔な乙女”を象徴する、夏の推薦衣装なんです」
 (それって、結局教祖様とやらの、趣味なんじゃない?)
と思うが、口にはしない。水着を試着するから、さっと脱ぎ着(き)出来るようにワンピースがいいんじゃない、と事前に言ったのは睦だ。それを祝子は・・・・、いまどき、そんなのあるの?という純白ワンピースをお召しで登場だ。
 「ほ~ら、みんな、こっちをちらっと見ていく・・・。みんな、祝子ちゃんを見ていくのよ」
 男性ばかりでなく道行く女性も、ちらっとこちらに視線を走らせていくように思えるのは、決して気のぜいではない。
 「私じゃないですよ。みんな、睦さんの健康的な肉体美が、目に入っちゃうんですよ~」
 「えっ?」
  睦は、自分の今日のいでたちを確認する。ピンク地のワンピースだ。高校生の時、身体のラインを見せたくない・・・と悩む睦を見かねた母に、「それなら、自分で作ってみればいい」と教えてもらいながら手作りした一着だ。我ながら上手く縫い上げられ、蒸し暑い夏を快適に過ごせる、お気に入りの一枚である。
 「も~う。ほんと、睦さんはご自分の溢れんばかりのお色気に、鈍感なんだから・・・、ほらっ」
 祝子が小声で指し示したその先には、確かに“ちらっ”ではなく、顔をこちらに向けた“ガン見(がんみ)”状態の男性が歩いている。
 「あっ」
  そして、こちらも“よそ見”で前がおろそかになってしまっている男性と正面衝突か・・、
(いけないっ)
 睦は、身体をすっと走らせ、衝突寸前の二人の間に割り込ませる。
「どうも、です」
 眺めていた対象がにわかに眼前に出現したことに驚く、二人の男性の足を止める。
(ほら。お二人ともぶつかるところだったんですから~)
 ニコッと二人に笑いかけてから、
「じゃあ、祝子ちゃん、行こうか。私たちおのぼりさんも、人にぶつからないよう、気をつけなきゃね」 祝子に声をかける。
        *             *                  *
  肝心の水着は、やっぱり最初は山形屋で見てみよう、ということになった。
「ほ~ら。祝子ちゃん、スタイルがとってもナイスなんだから、このくらい着こなせるって」
「いや~っです。こんなの横から見たら、ほとんど裸じゃないですか・・・」
「大丈夫。炎天下のビーチでなら、かえってこのくらいの方がエロくないからって」
「もう、睦さん。他人(ひと)の水着だと思って・・・。じゃあ、睦さんは、その身体をひきたてるためには、このくらい原色系の色使いなやつが、いいと思います」
「いやっ。だいいち9号じゃあ、私には小さいのよ」
「そうか・・。睦さんは小柄なのに、メリハリは常識はずれだからですね・・・。あっ、これは大きいサイズです」
「も~、私は海で泳ぎたいの~。なのに、これじゃあ、気になって胸から手を離せない・・・」     
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「水着を買いに」章、了
  次章は、いよいよ水着姿で大暴れ!シーンとなりますか、どうか・・・                 

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