太宰治『ア、秋』
勝手なもので、
曇り空続きだと、真夏の青い空とギラギラの陽射しが欲しくなってしまうのですが・・・、
トマトなんて、スーパーの青果売り場では、一年中並んでいるものですが、
でも、やっぱり完熟トマトの赤い色って、真夏ならでは、ですよね・・・・。
そして、今夏初めて目撃、
心置きなく、鳴くことは出来た?
そしてそして、家から柏駅までの道すがらの、ある御宅。
ご主人が、毎日丹念にお手入れをされているお庭にて。
・・・・・で、思い出したのは、太宰治の短編『ア、秋』。
青空文庫より、一部引用させて頂きます。
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秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル。と書いてある。
夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。耳を澄まして注意をしていると、夏になると同時に、虫が鳴いているのだし、庭に気をくばって見ていると、
桔梗
の花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。
秋は、ずるい悪魔だ。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。僕くらいの
炯眼
の詩人になると、それを見破ることができる。家の者が、夏をよろこび海へ行こうか、山へ行こうかなど、はしゃいで言っているのを見ると、ふびんに思う。もう秋が夏と一緒に忍び込んで来ているのに。秋は、根強い
曲者
である。
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