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2011年2月13日 (日)

第1章「新納流試心館」⑦

 「あれっ、雨が降っているんですか~?」
 なんて言った、連休中日の店番。
 でも、帰り道にはお月様。

1102131s
 さ~~て、集中集中・・・・。
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  第1章「新納流試心館」⑦
 あるいは義彰なら「人の心を読む」ことぐらいできるのではないか、
と睦は思う。が、
 「それはウソでしょ。・・・・う~~ん、さては夕方のニュースに
私が映っていたとか・・・?」
 と否定してみせる。
 「ふふ~~ん、どうだったかの~~。じゃが、ひとつ本当のことを
教えてやろう。むっちゃん、女の色香、まさにあふれんばかりじゃ。わ
しの嗅覚なら、その香り、一里(約4キロ)先からでもかぎわけること
ができるぞ。」
 「またまた・・・。“一里先”から、なんて言ったら、結局ほとん
ど毎日、じいさんに私は居所を突き止められているって、ことじゃな
い、もう~~。それに、私なんてまだペーペーの社会人一年生よ。まだ
まだ小娘。」
 「そうじゃな。つぼみはゆっくり花開くように、むっちゃんは、ます
ますきれいになっていく・・・わしなぞ、その香りにむせ返る・・・・、
わしはそれまで生きておるかの~。」
 「じいさん、そんなこと言わないのっ!」
 「老いたる者は静かに消えるのみ。『新納流(にいろりゅう)』は、
むっちゃんの心と身体に宿り続け、名は消える。それでいいんじゃ。」
 「そんなじいさんの代で、おしまいなんて・・・・」
 「いまさら、何を言う。わしには子供がおらんこと、いまさら言うこと
じゃなかろう。それにほら、弟子なんぞ、むっちゃんが最後だわい。」
 確かに、今さら耳にしたい話ではない。
 おおざっぱに言ってしまえば、時代の変化に取り残された古武道の一小
流派が、消えようとしている。御仮屋睦は、たまたま“最後の弟子”とし
て、その消失の時に立ち会おうとしているのか。

 「私が、最後の弟子か・・・・」
 東の空に、春の朧月(おぼろづき)が出たのだろう。縁側から見上げる
夜空は、ほのかに明るい。
 睦は、その夜空を見上げながら、つぶやいた。
                         (つづく)
  なかか艶っぽい会話になりません・・・・。

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