第1章「新納流試心館」⑦
「あれっ、雨が降っているんですか~?」
なんて言った、連休中日の店番。
でも、帰り道にはお月様。
さ~~て、集中集中・・・・。
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第1章「新納流試心館」⑦
あるいは義彰なら「人の心を読む」ことぐらいできるのではないか、
と睦は思う。が、
「それはウソでしょ。・・・・う~~ん、さては夕方のニュースに
私が映っていたとか・・・?」
と否定してみせる。
「ふふ~~ん、どうだったかの~~。じゃが、ひとつ本当のことを
教えてやろう。むっちゃん、女の色香、まさにあふれんばかりじゃ。わ
しの嗅覚なら、その香り、一里(約4キロ)先からでもかぎわけること
ができるぞ。」
「またまた・・・。“一里先”から、なんて言ったら、結局ほとん
ど毎日、じいさんに私は居所を突き止められているって、ことじゃな
い、もう~~。それに、私なんてまだペーペーの社会人一年生よ。まだ
まだ小娘。」
「そうじゃな。つぼみはゆっくり花開くように、むっちゃんは、ます
ますきれいになっていく・・・わしなぞ、その香りにむせ返る・・・・、
わしはそれまで生きておるかの~。」
「じいさん、そんなこと言わないのっ!」
「老いたる者は静かに消えるのみ。『新納流(にいろりゅう)』は、
むっちゃんの心と身体に宿り続け、名は消える。それでいいんじゃ。」
「そんなじいさんの代で、おしまいなんて・・・・」
「いまさら、何を言う。わしには子供がおらんこと、いまさら言うこと
じゃなかろう。それにほら、弟子なんぞ、むっちゃんが最後だわい。」
確かに、今さら耳にしたい話ではない。
おおざっぱに言ってしまえば、時代の変化に取り残された古武道の一小
流派が、消えようとしている。御仮屋睦は、たまたま“最後の弟子”とし
て、その消失の時に立ち会おうとしているのか。
「私が、最後の弟子か・・・・」
東の空に、春の朧月(おぼろづき)が出たのだろう。縁側から見上げる
夜空は、ほのかに明るい。
睦は、その夜空を見上げながら、つぶやいた。
(つづく)
なかか艶っぽい会話になりません・・・・。
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