第五章「御仮屋書店にて」⑩
なんのかの。やっぱり“堅い本”を読む気になれないのは、気力が衰えて
いるからなんでしょうね・・・・。ふ~~。
せめてもの抵抗で読了した小説。
有川浩(ありかわ・ひろ。女性です)著『レインツリーの国』。
新潮文庫・定価400円(税別)
内容は、難聴者と健聴者の恋。とはいえ、普通に男女が付き合っていく上
でも、すれちがい・いらだちって多々あるのだろうし、“難聴者と健聴者の
恋”といっても、それは特別なものではない、と思わせてくれる(少なくと
も自分はそう思いました)作品でした。
とはいえ、やっぱり地方在住者のヒガミなのでしょうか・・・。それでも、
もし作品中の(難聴者)ヒロインが地方在住であったら、もっと人知れずひっ
そりと暮す生活を余儀なくされてしまうんじゃないだろうか・・・・、
そんなことも思わざる得ませんでした。
さ、プロの作家の方には遠く及びませんが、わがヒロイン・むっちゃんに
大活躍していただきましょう・・・。
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第五章「御仮屋書店にて」⑩
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「もっと、私のスーパーテクニックも見せてあげようか・・・」
睦は、思わせぶりに坂道に言った。
「は、はい」
店内は、意外に奥行きがある。約十五メートルぐらいだろうか。間口は約
五メートル。壁沿いに設けられた書棚以外に、二列棚が設けられ、フロアを
三列に仕切っている。店内を壁沿いに一周してくると、四十メートルくらい
だろうか。
睦は、改めて
「しっかり帰ってくるのよ」
と、スーパーボールに話しかけた。そして、
「よっ」
横の壁めがけて、ボールを放った。壁に当たったボールは向きを変えて、
店の奥目指して、フロアを跳ねていく。
「私だって、本屋の娘よ。商品である本には、一切当たっていないのも、
ポイント。よく見ててね」
坂道に、解説を加えた。奥の壁に到達したボールは、そこでまた向きを変え、
今は奥の通路を跳ね進んでいる。
「まさか、今度もここに戻ってくるとか・・・・」
「さあ、どうでしょう・・・」
睦は、にっこり微笑んでみせる。
そして、確かにボールはまた向きを変え、こちらに戻るべき進路を取り始めた。
「ああ・・・、さすがにここまではちょっと無理だったわ・・・」
少し身体を動かして、ボールが進む通路の位置に立った。
「さあ、しっかり帰ってらっしゃい~」
ボールに手招きをする。
勢いを失って、膝丈くらいの高さまでしか跳ね上がらなくなったボールを、
「よし、よし、いい子~」
とすくい上げて、キャッチ。
「どう?」
睦は、再び坂道に微笑んでみせた。
(つづく)
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