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2011年6月28日 (火)

第七章「女三人+犬一匹」③

1106282s
 九州南部地方、梅雨明け。

 さて、わが愛しのヒロイン・むっちゃんも、
 決して武田梨奈サマには、負けません!
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         第七章「女三人+犬一匹」③
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 睦と小雪の頑張りにより、もちろんその大部分はベテランである小雪の奮闘
のおかげだが、なんとか午後六時半には「帰ってよし」となった。
 ガラス修理が完了するまでは、支店長と警備会社から派遣されてきたガード
マンが見張りの任だ。
 「お先に失礼します!」
 慌しく支店を出たところで、小雪が
 「御仮屋さん、今日は乗ってかない?少しでも時間の節約ね」
 と睦を誘ってくれた。
 「いいんですか」
 実のところ、小雪の愛車・イタリア製のフィアットに、乗ってみたかったのだ。
 「嬉しいです。実は、乗ってみたかったんです」
 睦は、率直に嬉しさを口にした。
 「どうぞ、どうぞ。さあ、お嬢さま、こちらへ」
 小雪がちょっとふざけた表情で、助手席のドアを開けてくれた。助手席に座っ
て、見回してみると、余計なアクセサリーなぞ無い代わりに、清掃がきちんと行き
届いている。いかにも、小雪らしい。
 運転席に座った小雪が、さっとエンジンを掛けて、発進させた。
 「どう、御仮屋さん、車を買う予定は?」
 表通りの帰宅を急ぐ車の列に加わったところで、小雪が訊いてきた。
 もちろん、紫尾市のような地方で暮す場合、マイカーは必須だ。睦も勤め先に
よっては、通勤用に一台買わなければならなかったのだが、幸い御仮屋書店と鶴亀
信用金庫紫尾支店の間は、睦の急ぎ足で所要十六分だ。歩くことが嫌いでない睦は、
毎日徒歩通勤をしている。車が必要な時は、親から借りることにして、しばらくは
給料をしっかり貯蓄に回したい、と思っていた。
 「はい。しばらくはお金を貯めるつもりなのですが・・・。でも、車に乗せて
頂くと、やっぱり欲しくなります」
 「あらあら。決して、鶴亀信金のマイカー・ローンをお薦めするために、乗って
もらったわけじゃないからね。でも、ドライブって、結構いいものよ」
 「彼氏、とですか?」
 睦は、思い切って訊いてみたつもりだったが、
 「時にはね」
 軽くかわされてしまった。
 「ううん、一人でハンドル握って知らない道を走る・・・。なんて言うかな~、
いいリフレッシュなのよ」

 ほどなく、商店街の中の御仮屋書店前に着いた。
 「お酒とかは、私がこれから買出ししてくるし、料理も、私が準備する。
御仮屋さんは、遠慮なく手ぶらで来てね。あなたの歓迎会でもあるんだから。
新納さんとタダモトくんに、よろしく」
 小雪が走り去るのを見送ると、睦は大急ぎで店内に駆け込んだ。
 「ただいま~っ!」
 と店番をしている母に挨拶をする。
 「母さん、ごめん。今夜は、先輩の水溜さんの家に“お呼ばれ”されたの。
だから、夕飯は、いらない」
 「あらあら・・・。楽しそうじゃない、行っておいで」

 (さ、急げ、急げ)
 店内を駆け抜け、階段を駆け上って、住居の部分に入る。まずは、台所だ。
冷凍庫に作り置きしているタダモトの食事を、電子レンジに入れて解凍させる。
その間に、着替えだ。
                           (つづく)

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