第七章「女三人+犬一匹」①
今日も暑くなりそう、な朝。
ついつい外が白み始める頃にようやく寝て、朝の陽射しで気温が上昇
し始めると、暑さで起きてしまうパターンの予感。
そうか、いっそのこと、表に面したドアも堂々と開け放して寝る、と
いうのは?
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第七章「女三人+犬一匹」①
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“大事故”のおかげで、バタバタと大騒ぎになったものの、なんとか午後三時
までの営業時間を終えた。ガラスの修理は突貫工事で行われており、今日の夜
までにはなんとかなりそう、とのこと。
ロビーから最後のお客さまを送り出した直後、いかにも「待ってました」と
ばかりに、支店長から睦・茜・小雪の三人は、支店長席前に呼び出された。
支店長は、机に肘を突きながら、おもむろに口を開いた。
「君たちはだ・・・。いざ、ことが起こったら、三人揃って、鉄砲玉のよう
に飛び出していってしまうんかい・・・・。そうなるとだ。次、もしまた、いざ
ということが起こったら、私は、まずなによりも、君たち女の子三人が飛び出し
ていってしまわないよう、三人もの女の子の首根っこを、抑え付けなきゃならん
のかい・・・・・」
三人は、一応申し訳なさそうに首をうなだれていたが、茜がおずおずと顔を
上げて、口を開いた。
「あの・・・、支店長。お言葉を返すようで申し訳ありませんが、私、子供
は二人いて、毎日バリバリ120%“おばさん”全開していますから。女の子は
二人です。二人なら、支店長。片方の手で一人ずつ、抑え付けることはできま
す」
小雪が、続く。
「はい、支店長。私が前の支店では“鉄のお局様”と呼ばれていたことは、
ご存知だと思います。本当は、私なんて、さっさと円満退職して欲しいクチ
だってことは、自分でも承知しておりますわ。そう、支店長は、いざという
時は、正真正銘のピチピチギャル、御仮屋さんをトッ捕まえて、机にギュ~
と抑えつけておくこと、お願いします」
「ふ~~~・・・・」
支店長は、呆れたというようにため息をついた。
「・・・・、まさか、御仮屋くんまで、なにか減らず口を叩くつもりじゃ
ないだろうな・・・」
茜・小雪・支店長の視線が、睦に集まった。睦は黙ってお説教を聴いて
いるつもりだったが、ここはなにか言わなければならないのか・・・。
「あ、あの~~。私は、仕事中ハイヒールを履くことを止めます。私は、
チビはチビなりのフットワークのよさを活かして、少しでも紫尾支店に貢献
したい、と思います」
ややトンチンカンであるとは解っているが、それでも自身が思っている
ことを話したつもりだ。
瞬時に
「たわけっ!」
と、支店長に、一喝されてしまった。
「どこの世界のテラー(窓口係)に、机の上に現金をほっぽらかして、
飛び出していってしまうヤツがいるんだっ」
(つづく)
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