第八章「新米館主、お見合いする?」⑯
ファミリーマート、今週の新発売商品。
「おでんらーめん」(一玉120円。具のトッピングは、ご自由に)
さ、愛しのヒロイン・むっちゃんに活躍して頂くべく。
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第八章「新米館主、お見合いする?」⑯
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m)
「こらっ、慎三郎。御仮屋さんに、失礼じゃない。お辞儀くらい、きちんと
しなさいよ~」
「いいんだ、おふくろ。オレが、リアルな女は嫌いなこと、知っているだろ」
そんな親子の会話が、睦の耳にも届く。
仕方がない。
「聡くん、ちょっと、この棒、持っててね」
棒を坂道に預けると、二人のそばへと歩み寄った。
「おはようございます。私が、御仮屋睦です。平手慎三郎(ひらで・しんざぶろ
う)さん、ですよね。はじめまして。あの、その姿は・・・、剣道をやっていら
っしゃるんでしょうか?」
「そうなの、そうなの・・。実は、私が御仮屋さんに隠していたの。慎三郎は、
庭に巻藁(まきわら)を立てて、夜中に何時間も、木刀で叩いているのよ~~。
ちょっと怖いくらい・・・・。でも、私だって、御仮屋さんに、本当に慎三郎の
こと、気に入って欲しいな~って気持もあるの、母親だもん。どう?外見だけ
なら、ちょっと青年剣士でしょ」
タツばあさんが、ここぞとばかりに説明してくれる。
・・・・が、当の慎三郎はというと。
睦を前にして、みるみる顔が紅潮し始めている。
「おっ、おまえ、女っ臭えな・・・・・」
確かに、一運動した後の睦からは、それだけ激しく芳香が湧き上がっている。
「ほ~~、むっちゃんの香りが、わかるか・・・」
じいさんが、感心する。
当の慎三郎は、顔面の紅潮を、なんとか取り繕うとしているらしい。
二,三咳払いをした後、
「ご、誤解するな。顔が赤くなったのは、あんたに会ったからじゃない。
普段、若い女を見る機会がないから、身体が勝手に反応しているだけだ。単なる
“生理現象”って、やつだ」
言い訳にならない、言い訳をする。
(あらあら・・・・・。ふ~~ん、やっぱり、ここは私が、積極的にリード
しちゃって、いいのかしらね・・・・)
「そう、大変・・・。話は、あとにしましょう。その頭にのぼっちゃった血を
戻すためにも、せっかく愛用の木刀を持っていらっしゃたようだから、私たち
に、あなたの剣の腕を見せてくれないかしら」
慎三郎は、二十代後半か三十代前半といったところか。二十の睦に、にわか
にタメ口にされて、ちょっとびっくりしたようだが、ろくな挨拶をしなかった
慎三郎に非がある。気にしないふりをするつもりのようだ。
「・・・・・わかった。いいとも」
慎三郎が応じた。
(つづく)
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