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2011年9月13日 (火)

第九章「ひきこもり剣士」④

 「休みの日」の夜は、早々と明け。

1109131s
 いえ、実のところ「あれ?まだ、空が明るくなり始めない・・・」
と、やっぱり季節の移り変わりを感じ。

 さ、今週も長い一週間が始まります。
   気合。
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     第九章「ひきこもり剣士」④
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m

 「慎三郎さんは、大学では何を勉強したの?」
 「あっ、初めてオレに質問してくれたね。・・・・あっ、またまた、ごめん。
オレ、“アンタ”なんて呼び方してたな・・・。ホント、久しぶりに女の子と
話をしてるんで、調子狂ってる・・・・。うん、睦さん・・・・」
 「いい。全然気にしてないから」
 「ありがとう。・・・・ところで、質問の答えなんだけれど、睦さん、聞いた
ら、ゼッタイ『あっ、だから、ひきこもりなんだ~』って、笑うと思う・・・・」
 「わかった。笑わないよう、努力してみる」
 「そう?、・・・・・そうかな・・・・」
 慎三郎は、また空を見上げて、目をショボショボとさせた。
 「・・・・哲学」
 小さな声だったので、睦は聞き漏らした。
 「えっ?」
 「だから・・・・・。philosophy(哲学)さ」
 (あっ、な~るほど)
 と思ったが、ここは本当に笑わないよう努力してあげよう。
 「For there was never yet philosopher,
        That could endure the toothache patiently,
(虫歯の痛みを辛抱できる哲学者はおりませんでしたから)
  But,I can endure laughing.
(私は、笑うのは我慢してあげる)」
 「Thank you.
     ふ~~ん、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』か・・・・」
 「あ、わかるんだ?」
 「もちろん。・・・・・ふ~~ん、睦さんのような女の子が、シェイクスピア
か・・・・」
 「あっ。それって、慎三郎さんこそ、私のこと、バカだと思っているでしょ?」
 「あっ、いや・・・・、全然そうじゃなくて。英語が好きだからって、シェイク
スピアの台詞を暗記しているって、すごいな~~って、率直に思った」
 「そうかな。じいさん・・・・、って、さっき審判をしてくれたオジイサンのこと
なんだけど・・・・・。機嫌がいいときなんて、よくシェイクスピアの一人芝居を
してくれるの」
 「そうなんだ、へ~~・・・。じいさん・・・、イヤ、新納さんだっけ。話して
みたいな・・・・」
 「そうよ。話し相手になってあげて。いつもは、このタダモトが、おしゃべり相手
なんだから」
 と、睦はタダモトの頭を撫でてあげた。
 「ふ~~ん。シェイクスピアを聴く犬か・・・。そりゃあ、利巧になるよな・・・」
 感心したように、慎三郎がタダモトを見下ろしてくれる。

 二人と一匹は、武家屋敷街の散策コースのはずれに設けられた小さな公園の前にさし
かかった。観光客が休憩できるようにと、武家屋敷街をイメージしたトイレ・東屋が設
けられているが、ここまでやってくる観光客は少ない。

 「あっ、ごめんなさい。ちょっと休憩させて。ううん、私じゃなくて、タダモトね。
犬って、元来は夜行性だから。いつもは、こんな真昼間に散歩には連れ出さないのよ」
 「そうか。犬って、人間より暑がりらしいよな。タダモトくん、お姫様のボディガー
ドも、大変だよな~」
 慎三郎としては、タダモトへの親しみをこめて、そう言ったのだろうが、当のタダモト
は、フン!というように、そっぽを向いた。
                             (つづく) 

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