第十章「新米館主、後輩を得る」③
いつもの、ねぐらの台所の窓。
陽射しは、まだまだきついような・・・・。
さて、急転直下。来月中旬に帰省することが出来そう・・・。
で、ついつい調べてしまったこと。
途中、愛媛の某市に立ち寄っていくこと。
(いえいえ、単にそこの空気を吸う、以上のことは致しません)
新幹線で福岡まで行き、そこから飛行機で四国へ。
う~~ん、出来ないことはないのだな・・・・・。
(歳をとって、年々バカなことをするエネルギーが低下する中、
久しぶりにバカなことをしてみたいな~という願望です)
さて、パブリック・コメントとは別腹。
改めて書きますが、この小説はフィクションであり、実在するもの一切とは、
全く関係ございません。
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第十章「新米館主、後輩を得る」③
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m
『ハイツM』。
話は逸れるが、確かにその『M』は、実は睦のイニシャルだ。
御仮屋家といえば「商店街の本屋さん」なのだが、同時に御館町一帯に地所
を持つ「地主さん」でもあるのだ。明治維新を迎えた当時は、御仮屋家は新納家
と同じように、武家屋敷の門を構えていた。今でも頑なに当時の敷地を維持して
いる新納家とは対照的に、御仮屋家は、御館町の「閑静な住宅街」という面に
いち早く注目した。広大な敷地を分割して、小粋な貸家を建築したのだ。それ
は、金融機関の支店長クラス等“転勤族”の需要にマッチした。今でも、鶴亀
信用金庫紫尾支店長宅は、その御仮屋家の持ち家だ。まあ、その“コネ”のお
かげで、睦は現在OLとなれたことは、さらなる蛇足。
その『ハイツM』。睦が産まれた時、祖父母が建てた賃貸アパートなのだ。
「おまえの教育費は、あのアパートから出ているんだ」、睦は、両親から冗談
めかして、よく言われていた。
話を元に戻そう。
その『ハイツM』一階の部屋のドアが開け放たれ、三十代後半?とおぼしき
男女がなにやら激しく言い争っている。いや、地面に倒れこんだ女に対して、
男はどうやら足蹴さえ加えているようだ。「やめてください!」と男に向って
叫んでいるのは、女の方の娘だろうか。
典型的な“痴話ゲンカ”の現場のようだが、女の方が暴力を受けていると
あれば、見捨ててはおけない。
「タダモト、行こう!」
睦は、タダモトの首輪から、引き綱を外した。一人と一匹は、走り出す。
先に、ドスン!と男に体当たりをしたのは、もちろんタダモトだ。
その勢いで、男がよろめいている隙を逃さず、睦が男の右手を制して、身体
を地面に押し倒す。右手を背中に押さえつけながら、睦は男に馬乗りになった。
「なんだか知らないけど、暴力はよしなさい!」
睦は、できるだけドスを利かせて、男に叫んだ。
「な、な、ナンダト~~。おまえには、関係ねえ~っ!」
こういう場合の、いつものセリフが返ってくる。睦から逃れようと、激しく
暴れ続ける。小柄な睦では、押さえ続けるのは、ちょっと苦しい。
「タダモト、お願い。頭を抑えつけて」
だが、タダモトと一緒というのは、なんとも心強い。タダモトが、前足で
男の頭を抑えつけてくれる。
「ぐぐぐぐ・・・・」
声すら満足に出せなくなった男の抵抗が、徐々に弱まっていくのを、お尻
に感じつつ、じっと睦は耐えた。
「・・・・・わかった。・・・もう黙って帰る・・・。だから、放して
くれ・・・・・」
やがて、男が哀願してきた。
「・・・ほんと?」
男を抑え続けてきた睦も、息が少々苦しい。
「・・・・ああ・・・、ホントだ」
「わかったわ。離れるわよ、タダモト」
タダモトに、まず前足を外させる。そして、睦は、さっと男から離れた。
(つづく)
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