第十章「新米館主、後輩を得る」⑬
月夜の晩。
・・・・・今週は、夜勤に入っています。
したがって、今夜の店番は午前0時から。
午後5時から始まる日よりも、7時間分だけ「休み」を有効利用
できるはずなのですが・・・・。
なんなんだろう・・・・、この無気力っぷり。
(って、いつも書いていますね)
あっ、それでも『撤退の農村計画』読了。
ひさしぶりに“硬い本”を読みました。
・・・・と、前向きに考えると、いいことがあるのかもしれ
ませんね・・・・(願望)
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第十章「新米館主、後輩を得る」⑬
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m
「はい。祝子さんがお礼を言いがてら、私の家に遊びに来てくれたので、二人
でちょっとおしゃべりをしました」
(祝子ちゃん)という呼び方をしないよう注意して、睦は答えた。さすがに
(友達になろう)と言ったことは、伏せておいた方がよいだろう。
「ふ~~~ん。抱き合ったり、してない?」
「えっ?!」
睦は、びっくり仰天だ。
「ふふふ・・・、あ~ら、図星なの・・・、こりゃあ、失礼したわね。あなた
みたいなムチムチな身体に抱きしめられたら、娘の祝子だって、ドキドキしちゃ
うでしょうね・・・・・」
祝子の母は、間を空けた。
「御仮屋さん、信仰の邪魔をする者には、大きな『お報せ』があるって、知って
いるわよね?」
「はい、祝子さんから聞きました。でも、それって、“脅し”ですか」
「あらあら・・・、“脅し”なんて。『お報せ』って、私たち人間が下すも
のじゃないの。それが大きいものか、小さいものとなるのかは、誰も知ることは
できないの・・・・・。怖いと思わない?」
「いいえ、怖くありません。私と祝子ちゃんは『お友達になろう』って、約束
しましたから」
ここで睦は、あえて口にした。『お報せ』とやらをちらつかせれば、睦ごとき
小娘なぞすぐ怖がる・・・と思っている相手に、一矢報いてやろう。
「ふ~~~」
意外な睦の反応に、祝子の母がため息をつく。
「祝子も、反抗期なのかしらね・・・・・・。今まで女手ひとつで育てて
きたけれど、手がかからない子に育った、と思っていたんだけどね・・・・・」
いっとき、“母親の顔”が睦には見えたように思う。
だが、祝子の母は、ふたたび表情を変えた。
「『お教え』では、人の一生において、邪悪な『天魔』が三度現われて、
信仰が試される、って言われているの。祝子にとって最初の『天魔』は、当然
“男”だと思っていたんだけど、あなたみたいな女だとはね・・・・・・」
「私が『天魔』ですか~」
睦は笑っていいのか、怒ってよいのか、よくわからない。
「そう。・・・・正直なところ、これが“男”なら、怒鳴って追っ払って
やるつもりだったんだけど、あなたみたいな外見の持ち主じゃね・・・・・」
祝子の母は、しばし黙り込んだ。
「・・・・・・うん、祝子が、より強く“試されている”って、ことかしら
ね・・・・・・」
改めて、睦めがけて、宣言するように口を開いた。
「御仮屋さん、祝子とあなたのこと、私は気づかないふりをする。好きに
してみたらいいわよ。でも、あなたにも、祝子にも、大きな『お報せ』がある
わよ。その時は、自分の娘ですもの、祝子は助けてあげるけど、あなたが泣
いて頭を下げてきても、助けないから」
祝子の母は、立ち上がった。そして、今度は満面の笑みを浮かべながら、
「あらあら・・・、ついしゃべりすぎてしまって、ごめんなさい。御仮屋さん、
仕事中に御邪魔して、失礼したわ」
さっと軽く頭を下げると、さっさと支店から出ていった。
「ふ~~」
睦は、ため息をつく。確かに自分は、関わるべきでないことに関わってしまった
ようだ。それでも、
(よ~~し。仕事、仕事。頭、切り換えなくちゃ)
「ごめんなさい。御仮屋、仕事に戻ります」
支店内の全員に聞こえるよう挨拶をして、睦は窓口に戻るため、急ぐ。
(第十章「新米館主、後輩を得る」、おしまい)
(いや、まだまだ続きます)
・・・・・・さあこの後の展開ドウスル・・・・・・
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