第十章「新米館主、後輩を得る」⑥
山上でゆらめく、鬼火!?
・・・いえ、電灯のようです。
でも、なにか徹夜での工事をしていたんでしょうか。
さて、自作小説。
あっ、くどくお断りさせて頂きますが、
あくまでフィクションです。
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第十章「新米館主、後輩を得る」⑥
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m
「わ~~っ、部屋に招待してもらえるんですか。嬉しいです」
祝子が、大袈裟に喜んでくれる。
「その前に・・。ちょっと待ってね」
もちろん、じいさんとタダモトへ連絡だ。さりげなく、睦の「ただいま~っ」
という声を待っている時間だ。数回の呼び出し音で、すぐじいさんが出た。も
ちろん、タダモトの飼い主であるじいさんにも、昨日の件は報告していたので、
話はすぐ通じた。
「ごめん。タダモトのご飯はちょっと遅くなるし、散歩は暗くなってからね」
携帯を切って、祝子に振り向いた。
「さ、どうぞ、上がってね」
「いいんですか。・・・・睦さん、お忙しいみたい」
「なんの。わざわざ私を訪ねてきてくれた、大事なお客さんですから。
さ、行こ」
祝子を促して、店の奥の住居部分へ通じる階段を上がる。
再び「ただいま~っ」と居間へ入ってみれば、運よく弟の瞬(しゅん)が
いた。
「おっ、瞬。いいところにいた。私、お客さんがいるの。そうだな・・・、
ココアふたつ、持ってきて」
「なんだよ~。いきなり・・・」
と顔を上げた瞬は、祝子の姿を認めると、明らかに狼狽した。
「ああ・・・。なんで・・・・・・」
「はじめまして。お邪魔します」
祝子の方は、きちんとお辞儀をする。
「じゃあ、瞬。頼むね」
瞬の狼狽ぶりを無視して、睦は自室へと祝子を案内する。
睦の部屋は、北向き。そして、四畳半のスペースだから、けっして広くない。
ベットに、学習机、そして“女の子の部屋”には少々不釣合いの本棚まである
から、床の部分はほとんどない。
「あっ。あのタダモトくんでしたっけ。ここにもいるんですね」
祝子が言ったのは、ベットの上にある大きな犬のぬいぐるみのことだ。
「あははっ。お恥ずかしいけれど、小学生の頃から、いつも一緒に寝ている
相手。祝子ちゃん、ちょっと待ってね」
睦は、かばんを机の上に置き、通勤着の上着を脱いだ。
「ちょっと、ごめん」
とぬいぐるみを動かして、ベットの上に二人が座れるスペースを作った。
「さ、どうぞ、座って」
と祝子を促したのだが、
「ええっ、えっ・・・・、どうやって・・・」
と迷っている祝子は、なんとベットの上に正座した。
「あの~。正座は、ないんじゃない。もっと楽な姿勢になろうよ」
「ごめんなさい。私、正座以外の座る姿勢って、よくわからないんです」
「えっ!?」
昔の武家の娘でもなかろうに・・・・。
「もう・・・・。それならば、と。祝子ちゃん、ちょっとごめんね」
睦は、祝子の身体を抱えあげるようにして、膝を崩させた。祝子の身体は、
睦より身長はあるものの、軽くて、とても華奢な感じがする。
(つづく)
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