自作小説『続 新米館主・御仮屋睦』(10/25)
夏は、とうの昔に過ぎ・・・。すでに、冬の足音を感じる、今日この頃ですが。
われらが(笑)スーパーヒロイン・むっちゃんに、ぜひぜひ水着姿で大活躍して
もらいたい!妄想は、衰えず。
こちらにも、ワードパッドからのコピーを貼ってみます。(長過ぎるか・・)
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駆けっこ(1)
「夏休みになったら、みんなで湊大島(みなとおおしま)に、海水浴に行こうよ」
と睦は提案した。七月の土曜夕方、高校の期末テストは昨日で終わった。高校生の米櫃祝子(こめびつ・いわいこ)・坂道聡(さかみち・さとし)、そして弟の瞬(しゅん)を誘って、散歩中だ。もちろん、大型犬タダモトが四人の前を歩いている。その耳は、しっかり後ろの四人の声に向けられているのだろう、小刻みに動いている。
「え~っ、海水浴ですか~」
睦の年下のボーイフレンド・聡が、さっと睦の方に視線を走らせたと思ったら、すっとあらぬ方向に視線を逸らした。
(ふふ~ん、私の水着姿を想像したな・・・)
「そう。そして、島でキャンプしよっか。夜は、もちろん花火よね」
「うん、それ楽しそうです。行きましょっ!」
聡が、さっそく賛成してくれた。
(そうこなくっちゃ!)
・・・・・ところが、わがシラけた弟・瞬は、
「おい、瞬。にやけてるぞ。・・・やめとけ、やめとけ。近頃の姉ちゃんは、欲求不満が溜まっているらしいぜ。ストレス解消とかなんとか、ますます長風呂になっちまって・・・。ヤケ食いとか称して、いつもご飯は三杯・・・・」
「こらっ、瞬!」
瞬の身体を叩こうとしたが、ひょいと避けられてしまった。
「そんな姉ちゃんと、海になんて、行ってみろ。それこそ、ストレス解消のおもちゃ代わりだ。海で泳げば、水の中に引きずり込まれ・・・。夜は、肝試しとか言って、暗いところに連れて行かれ・・・・だ」
「もうっ、瞬!。聡君、大丈夫、わたし、そんなことしないから」
と言ってみたものの、睦の得意な“泳ぎ”とは、体育の授業で行われるような、タイムを競う競泳ではない。立ち泳ぎで水上に浮かび、そして、ひょいと水中に潜る・・・久しぶりに、そんな“泳ぎ”を楽しみたい。夜の暗がりの中を、視覚だけに頼らずに歩くのも、面白そうだ。
「あ、あの・・・。睦さん、ストレス溜まっているんですか?・・・」
「えっ!」
ふりむけば、祝子が真面目な顔をしている。
「もうっ~、祝子ちゃん、ちがう、ちがう~っ!。う~~ん、学生の頃には、考えたこともないような・・・、そう、社会人になった憂鬱って、言うのかしら・・・」
「えっ、社会人の憂鬱って、どんなことですか?」
訊き返してくるくる祝子は、母子家庭の一人娘で、とある新興宗教団体の信者だ。信者以外の人間と関わることを、とにかく嫌う教義であるらしく、関わる人に「お知らせ」という名の天罰が下るそうだ。祝子自身、「呪いの美少女」という仇名を持っている。ナンパ目的で近づいた男子生徒、いじめようとした女子生徒が、ことごとく大怪我をした・・・と、まことしとやかに語られている。だから、友人として接してくれる睦たちにも、いつか「お知らせ」があってしまうのでは・・・と、心配してくれているようだ。
「あっ、祝子ちゃん、ぜったい『お知らせ』とかじゃないから、心配しないで。う~ん、例えば私、一応世間様のいう“OL”じゃない。そして、紫尾(しび)みたいな田舎じゃ、それって、普通の人と比べれば、恵まれているわけじゃない。うん、私だって、そのくらい解るよ。ホントのところ、祝子ちゃんだって、私のこと、そう思うでしょ?」
「えっ、エッ・・・、あの~・・。あっ、私は、お金とか、この世の見せかけの姿に惑わされてはならない、って思います。あ・・、こういうふうに教わっているのだけれど・・・。でも、睦さんは、そんな“OL”とか言う前に、私の“お友だち”だから、好きです」
祝子は、ちょっと照れたように俯いた。
「祝子ちゃん、ありがとう。でもね・・、私なんて、会う人会う人から『いいお仕事ですね~』って、言われるわけじゃない。そりゃあ、言われれば、笑って『そうでもないですよ~』って、答えるくらい、私にだって出来るけどさ・・・。『いい給料貰って、うらやましい』って、思われているんだ~と考えると、憂鬱になってきちゃうわけなのよね~。
ね!聡君。私の憂鬱、わかってくれる?」
実は、祝子が「好きです」と言った時、一緒に聡まで俯いてしまったのを、睦は見逃していない。
(ふふ・・、かわいいんだから~。“年上のおねえさん”らしく、ね。聡君にも、しっかり話を振ってあげなきゃ)
「えっ、はい、オレ、わかります。親父が家で飲んでいる時なんて、よくぼやいています。ほら、うちはローン組んでマイホーム建てたんですけれど、親父の同級生には、まだ市営住宅暮らしという人もいるじゃないですか。だから、同窓会とかで飲むときって、さりげなく家の話題はしないとか、結構気を使っているって」
「あっ、ひょっとして、聡君の親御さん、鶴亀(信用金庫)のお客さん?」
「スミマセン。たしか、桜島銀行でした・・・」
「聡。そこで、姉ちゃんのために、ひとつ、定期預金をポンと。姉ちゃんの憂鬱、その二。今、夏のキャンペーンで、新米OLの姉ちゃんにも、ノルマがあって、大変なんだよな~」
余計なことを、瞬がしゃべりやがる。
「ああ・・・・、残念、オレ・・・、ほとんどお金、持ってません・・・」
聡が、心底残念そうに言ってくれる。無理もない、進学校である紫尾高校では、バイト禁止。おまけにバスケ部員として部活に励む聡には、なかなかお金を貯める機会はないだろう。
「あっ、私、バイトのお金、ちょっとずつ貯めているから、今度睦さんのところで、口座を・・・」
と言ってくれたのは、祝子。
「あっ、いいの、いいの。気を使ってくれて、ありがとう。でも、未成年の若者にまで、お願いしたなんて云ったら、私が怒られちゃう」
前を歩くタダモトが、振り向いて睦を見上げてくる。
(ふふ・・。タダモト、私、いいお友達、持ったよね~)
(つづく)
こんばんは、小説久々ですね(≧∇≦)4人+1匹の会話がぽんぽん弾んで私としてはなんか嬉しい。続き期待してます。
投稿: | 2012年10月27日 (土) 00:04
おはようございます。
とっても読みづらいのに、読んでくださったのですね。
ありがとうございます。
湊大島でキャンプ、まできちんと書けるように、努力します。
投稿: ごろごろ | 2012年10月27日 (土) 06:06