第二章「新館主の朝」⑦
深夜の街に、ぽっかりとお月様。
さ、出勤前のあわただしさ・・・。
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第二章「新館主の朝」⑦
「ふふ、早い者勝ちよね。おはよう、睦ちゃん。新人さんが、もう
“遅刻”ですか~?」
「茜さん、おはようございます。・・・いえ、ちょっと早起きして、
いろいろあったもので・・・・。」
「あらあら、なにそれ?その“早起きしたから、遅刻しました”って。」
「あっ、いえ・・・、ですから・・・」
なかなか一言で説明するのは、難しそうだ。
茜に続いて睦も肉まんを買って、二人はコンビニを出た。
「もうあわてても仕方がないわよ。私の車の中で食べてから、行きまし
ょう。」
二人は、運転席と助手席に座った。
「はい。塩豚まんは、半分こしよう。」
田所茜(たどころ・あかね)。小学生の娘と幼稚園児の息子の二児
のママさんだ。鶴亀信用金庫は、結婚を機に一度退職したものの、子育て
が一段落して、嘱託職員として職場復帰している。正職員である睦より、
出勤時刻は遅くてよいものの、掃除洗濯、子ども達をきちんと送り出し・
・・などとしていると、毎朝てんてこ舞いなのだそうだ。自分の朝食が
後回しになってしまい、今朝のようにコンビニで、というのも日常茶飯事
のようだ。
「あらあら・・・。睦ちゃん、なに?その顔の生々しい傷は。」
茜が気づいて、訊ねてきた。
(つづく)
やっぱり、急げ。
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