第四章「新米館主、初仕事」⑰
今度は、一気に初夏になったような。
爽やかな雨。
・・・と思ったら、噴火活動が続く霧島連山の麓では、
「土石流の危険により、避難勧告」が出されたとのこと。
降れば、降ったで、自然災害を心配しなければならず。
さて、大の中年オジサンが、部屋の中で構えを取って、
(相手がこうきたら、こう動けるものだろうか・・・)
と、あれやこれや研究中。
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第四章「新米館主、初仕事」⑰
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「いきます」
大山が動いた。これまでよりも、早い動作だ。左手が右腕を狙ってきたのは
ひょいとかわしたら、右手は今度はぐっと突き進んで、道着の襟を狙ってきた。
(おっと)
相手の右手を軽く左手で払いながら、睦の足が動いた。ただ後ろに下がって
かわすのでは面白くない。左足を軸に半回転しながら、大山の身体の右側を沿
うように移動して、後ろに出た。
「出ましたね、新納流。相手の身体の弱点となる側を移動する術。」
「あらあら、大山さん、よく新納流を研究されていらっしゃるようで。私、
すぐ捕まってしまうのかしら・・・。」
人体は、一見左右対称のように見えるが、もちろん「右利き」「左利き」が
あるように、それは非対称だ。右利きの人間は、左方向への動きより、右方向
への動きはワンテンポ遅れがちだ。確かに新納流は、相手の身体のクセを素早
く把握して、それを利とすることが、動きの基本だ。
「さ、今度は諸手(もろて)刈りで、いきます」
大山が、宣した。「諸手刈り」とは、つまりタックルだ。早い動きが、襲っ
てきそうだ。
「さて、私は、どうしましょう・・」
睦も、応じた。
(つづき)
スミマセン、アクション・シーンは少し端折ります。
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