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2011年5月21日 (土)

第五章「御仮屋書店にて」⑧

 一雨来るな~、と思った雲行き。

1105211s
 でも、あれれれ・・・・。
 一滴も降らなかったような。

 少しでも。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑧
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 そりゃあ、国立理系コースでもトップの成績を誇る弟・瞬からすれば、短大
英語科に進学した姉・睦のことを、せめて「頭カラッポ」と負け惜しみを言う
しかないのだろう。

 「聡君」
 睦は、「坂道君」から「聡君」に呼び方を変えた。
 「今、時間ある?ちょっと、私と遊んでいかない?」
 その一言だけで、坂道は明らかに動揺している。
(あれれれ・・・、ゴメン、ごめん。「遊んでいかない」が、ヘンに誤解さ
れちゃったね・・・)

 「バックをおろして」
 坂道に指示してから、睦はレジカウンタ代わりにしている事務机へと向った。
引き出しを開けて、ある物を取り出した。
 「いくよ」
 坂道に一声かけて、ポイと投げた。
 さすが、運動部所属。坂道は、さっと受け取った。
 「ほい」
 今度は坂道に投げ返すよう、促した。これも、坂道は、すっと睦が構えた手の
ところに、投げ返してきた。
 「スーパーボールですね」
 「そう、スーパーボール」
 睦はそう言って、また坂道に投げた。

 幸か不幸か。土曜午後、商店街の本屋に足を踏み入れる者は、極めて少ない。
                             (つづく)

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