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2011年8月 4日 (木)

第八章「新米館主、お見合いする?」④

 帰ってきたのは、午前4時前。

1108041s
 さすがに10時間以上立ちづくめでいると、最後は床にしゃがみこんで、
発注をとる我が身ナリ・・・・・・・。

 さあ、少々の意地を。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」④
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 「でね・・・・・。そのお見合い相手ってのは・・・・・・」
 ここでタツばあさんは、今までの絶好調ぶりから一転、かなり躊躇している
模様だ。
 (あれ?)
 睦は、不思議に思った。
 
 「どなたなのでしょうか?」
 タツばあさんが、とても言いづらそうなので、思わず促してみせた。
 「うん・・・・・」
 それでも、タツばあさんは、なおも言いよどむ。
 「どうぞ、私にはご遠慮なく、おっしゃってください」
 (こうなったら、最後までしっかりお伺いしよう)
 睦は、再度促した。

 「ありがとう、御仮屋さん。やっぱり、あなたは私が思ったとおりの女の子
ね・・・・・・」

 やがて、タツばあさんは意を決したのだろう。一呼吸で言った。
 「平手慎三郎(ひらで・しんざぶろう)。わたしの一番下の息子。職業・無職。
いわゆる『ひきこもり』ってヤツかしら。」
 「ああ、そうなんですか・・・・」
 睦は、タツばあさんが、とても言いづらそうだった理由を理解した。
 「でしょ。あなたなら、解ってくださるわよね。主人と支店長さんに席を外して
もらったのは、主人は『あんな家の恥、外で話題にするな』って、言うのよ・・・。
でも、やっぱり、わたしにとっては、かわいい子どもの一人なの。それが、一日中
部屋に閉じ籠もって、パソコンに向ってゲームしているのよ・・・・・。不憫でなら
ないの・・・・」
 「それは・・・・・」
 予想していた『お見合い話』とはかなり違うが、タツばあさんは、思い切って話を
切り出したのだろう。睦も、真剣に話を聴かなければならないようだ。
 「ううん。でも、慎三郎だって、ちゃんと東京で大学を卒業して、『難関ゼミナール』
っていう大手の予備校に、講師として就職して、何年も頑張ってきたの。紫尾に帰って
きてからも、きちんと就職しようと頑張ってきたこともあるのよ。・・・・・・・でも、
ここ一年は、すっかり・・・・・・・」
 タツばあさんは、視線を足下に落とした。
                             (つづく)

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