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2011年9月30日 (金)

第十章「新米館主、後輩を得る」⑤

 28日付南日本新聞一面記事。
 「観光重視の総合戦略を」
 について、いずれ書いてみたいな~~。

1109301s
 で、今日はやっぱり、自作小説。
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     第十章「新米館主、後輩を得る」⑤
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m

 『ハイツM』の大家である両親には、念のため報告した。ところが、両親か
らも「あの親子には、あまり関わらないほうがいい」と言われた。築二十年が
経過して、今では比較的手軽な家賃で入居できるアパートとなっている。空室
を作りたくない大家としては、ことさらに問題のある人物以外には貸す、のが
原則だ。睦が関わった親子は、入室を拒否するほどではないにしろ、なにかし
ら“訳あり”なのだろう。
 ちょっと気にはなるものの、睦も忘れようとしていた。

 ところが、その翌日。鶴亀信用金庫紫尾支店から帰ってきて、いつものよう
に「ただいま~っ!」と大きな声で挨拶をしながら、表通りに面した御仮屋書
店から中に入った。ところが、いつもならば「あら、お帰り」と返事を返して
くれる母が、
 「睦。ちょっと・・・・」
 と、呼び止めてきた。奥の方を気にするように、睦にささやく。
 「あなたに、お客さん・・・」
 「ん。誰?」
 奥の方の応接セット代わりに置かれた食卓に目をやってみれば、あの米櫃
祝子(こめびつ・いわいこ)が、姿勢正しく立っている。そして、睦の視線
に合わせて、深くお辞儀をしてきた。
 「あっ、あの・・・・。御仮屋書店さんが、うちの大家さんだということ、
昨日はじめて知りました。・・・・ということは、うちのこともご存知だと
思います。今日は、けっして『勧誘』とかじゃなくて、昨日のお礼を改めて
言いたくて、お邪魔しました。・・・・あの、母には内緒できました」
 なかなか“今どきの女子高生”とは思えない、物言いだ。
 「母には内緒?」
 その一言が、気になる。
 「母さん、たぶん大丈夫」
 睦は、ちいさく母にささやくと、祝子の方へ歩を進めた。
 「祝子ちゃん、って、呼んでいい?昨日は、怖かったでしょ・・・」
 「はい、どうしていいか、わからなくて・・・。でも、御仮屋さん、とっても
カッコよかったです」
 「あっ、私のことは、睦さんでも、睦ちゃんでも、いいから。祝子ちゃん、
今日はこれから暇?」
 何ごとかを話したくて、祝子は睦の帰りを待っていた、と察する。
 「はい。今日は、バイトも休みなんです」
 「そう。それなら、女の子同士だね。私の部屋へ、ご招待してあげる」
                          (つづく)

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