第十章「新米館主、後輩を得る」⑤
28日付南日本新聞一面記事。
「観光重視の総合戦略を」
について、いずれ書いてみたいな~~。
で、今日はやっぱり、自作小説。
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第十章「新米館主、後輩を得る」⑤
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
を是非に。m(__)m
『ハイツM』の大家である両親には、念のため報告した。ところが、両親か
らも「あの親子には、あまり関わらないほうがいい」と言われた。築二十年が
経過して、今では比較的手軽な家賃で入居できるアパートとなっている。空室
を作りたくない大家としては、ことさらに問題のある人物以外には貸す、のが
原則だ。睦が関わった親子は、入室を拒否するほどではないにしろ、なにかし
ら“訳あり”なのだろう。
ちょっと気にはなるものの、睦も忘れようとしていた。
ところが、その翌日。鶴亀信用金庫紫尾支店から帰ってきて、いつものよう
に「ただいま~っ!」と大きな声で挨拶をしながら、表通りに面した御仮屋書
店から中に入った。ところが、いつもならば「あら、お帰り」と返事を返して
くれる母が、
「睦。ちょっと・・・・」
と、呼び止めてきた。奥の方を気にするように、睦にささやく。
「あなたに、お客さん・・・」
「ん。誰?」
奥の方の応接セット代わりに置かれた食卓に目をやってみれば、あの米櫃
祝子(こめびつ・いわいこ)が、姿勢正しく立っている。そして、睦の視線
に合わせて、深くお辞儀をしてきた。
「あっ、あの・・・・。御仮屋書店さんが、うちの大家さんだということ、
昨日はじめて知りました。・・・・ということは、うちのこともご存知だと
思います。今日は、けっして『勧誘』とかじゃなくて、昨日のお礼を改めて
言いたくて、お邪魔しました。・・・・あの、母には内緒できました」
なかなか“今どきの女子高生”とは思えない、物言いだ。
「母には内緒?」
その一言が、気になる。
「母さん、たぶん大丈夫」
睦は、ちいさく母にささやくと、祝子の方へ歩を進めた。
「祝子ちゃん、って、呼んでいい?昨日は、怖かったでしょ・・・」
「はい、どうしていいか、わからなくて・・・。でも、御仮屋さん、とっても
カッコよかったです」
「あっ、私のことは、睦さんでも、睦ちゃんでも、いいから。祝子ちゃん、
今日はこれから暇?」
何ごとかを話したくて、祝子は睦の帰りを待っていた、と察する。
「はい。今日は、バイトも休みなんです」
「そう。それなら、女の子同士だね。私の部屋へ、ご招待してあげる」
(つづく)
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