第三章「新規顧客=新弟子?」④
西の空に見つけた、三日月。
ふ~~。休みの日は、せめて、近所のスーパー「だいわ」へ買物
ぐらいは行くようにしよう・・・と思っております。
久しぶりにツタヤ出水本町店のCD・DVD売場をのぞいたので
すが、売場スカスカ・・・・。
う~~~ん、DVDはともかく、音楽CDも、そんなに売れなくな
ったんでしょうか・・・?
さ、世間様は、3/12九州新幹線全線開通に向けて、
盛り上がって参りました!
なのかもしれませんが、自分は淡々と・・・・。
いえ、これくらいは、ちょっと気合を入れて。
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第三章「新規顧客=新弟子?」④
休憩室のドアが控えめにノックされて、ドアが開いた。
「楽しそうなところ、失礼いたします。預金係の御仮屋睦(おかりや・
むつみ)さん、ご指名のお客さまがいらっしゃっております。ご休憩中
恐れ入りますが、よろしくお願いします。」
先輩預金係の田所茜(たどころ・あかね)が、ちょっとふざけた口調
で言った。
(誰だろう?)
紫尾支店に勤め始めてまだ一カ月も経っていない睦に、そんな顔見知り
の客なぞ、まだいない。怪訝な気持で窓口に出てみると、ロビーの椅子か
ら、一人の男性が立ち上がった。
「あっ、強盗・・・・」
ついつい、睦は口ばしってしまった。いやいや、本物の“強盗”ではな
い。昨日の防犯訓練の際“強盗”役を演じた、警察官だ。訓練終了後に、
変装を外しての“顔見せ”があったので、顔を覚えていた。
「昨日は訓練とはいえ、大変失礼なことをしました。」
深々と頭をさげてきた。睦は、あわててロビーに出る。
「いえいえ、そんな~~。どうぞ、頭を上げてください。」
頭を上げかけた相手の視界に、睦の身体が入った途端、どうも相手の
顔の赤みが増したようだ。
「あっ、いえいえ・・・・。自分、こういう者です。」
差し出された名刺を受け取り、目を通す。
『紫尾警察署 地域課
巡査 大山 隆志』
「おおやま・たかしさん、ですか・・・」
「はい、おおやまです。・・・・、昨日は、かわいい新人職員さんが
いるから、ちょっと驚かしてやろうってことになって・・・・。ほんと、
失礼なことをしましたッ!」
相手は、また深く頭を下げた。
テレビのニュース番組では、強盗役の大山に羽交い絞めされた睦の
姿が映され、「迫力満点の強盗役を前に、緊迫した雰囲気の中で訓練
が行われた・・・」という内容が流された。ひらりと大山をかわす睦
の動きは、当然カットだ。
(おかげで今じゃ、『新納試心館(にいろししんかん)』の新米館主
なんだけれど・・・)
大山は頭を上げると、照れ臭そうに言った。
「あ、あの~~。新しく口座を作りたいんですけれど、大丈夫ですか?」
いきなり、仕事だ。
「あっ、はい、もちろん、大丈夫ですよ」
睦は、あわててカウンタ内に戻る。
茜が、さりげなく『預金係窓口業務マニュアル』と書かれた分厚いファイ
ルを、よこしてきた。(自分で!)という意味だ。
とりあえず「普通預金口座開設申込書」の用紙を手に、大山を記帳台に
案内する。
「大山さん、今日は印鑑と身分証明書となるもの、お持ちでしょうか?」
もちろん、相手は持っている。運転免許証は、コピーをさせてもらうため
に借りる。申込書に記入してもらっている間、大慌てでマニュアルに目を通す。
(つづく)
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