第四章「新米館主、初仕事」④
気がつけば、公園の桜が咲き始めておりました。
って、ことで。
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第四章「新米館主、初仕事」④
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ふいと、門の前に一台の車が停まった。
(あのクルマは!・・・・)
一見軽自動車のようだが、実はイタリアのメーカー・FIAT(フィアット)社
製。赤色に彩られたその車の中から、一人の女性が手を振った。
「水溜(みずたまり)先輩ッ!」
御仮屋睦(おかりや・むつみ)は、大きく頭を下げた。
「ちょっと待っててね。車、停めてくるから。」
この武家屋敷街は観光地として、整備が進められている。「新納(にいろ)家
屋敷」も、重要な観光スポットのひとつなのだ。幸いなことに、道をへだてた反
対側には駐車場が広がっている。
「ほう・・・・。むっちゃんには、あんなきれいな先輩がおるんか・・・。」
当家の主人・新納義彰(にいろ・よしあき)が感想を洩らす。
「おはよう。御仮屋さん。皆さん、おはようございます。」
薄緑色のカーディガンを羽織り、白のひざ下丈パンツ。すらっとしたふくらはぎ
の白さが眩しい。水溜小雪(みずたまり・こゆき)は、ニッコリと男三人に微笑ん
だ。男たちがぎごちなく挨拶を返す。
「あっ、こっちのワンちゃんの、名前はなんていうの?」
「はい、タダモトって、いいます。」
「そう、お利巧そうなワンちゃん・・・」
小雪はしゃがみこんで、タダモトの頭をなでる。
(もう、タダモトったら・・・)
睦が相手であれば、挨拶代わりにまずじゃれてくるタダモトのくせに、小雪
の前では、きちんと“お座り”をして、その代わりに尾を激しく振って、歓迎の
意を表している。頭をなでられて、大満足なのだろう。
「あの・・・、水溜先輩、昨日のうちに“(鹿児島)市内”に戻られたん
じゃ?・・・・。」
紫尾市から県庁所在地・鹿児島市まで、峠を二つ越えて、車で約二時間弱。平日は、
紫尾市内にアパートを借りて寝起きし、金曜、仕事を終えたら、さっと車を走らせて
“市内”に戻る。小雪の一週間の生活パターンだ。だから、小雪が「私も、新納流
とやらを見てみたい」と言ったのは、あくまで“話のあや”だと解釈していた。
「ううん。一応支店長・係長から、御仮屋さんの“お目付け役”を仰せつかって
いるの。それにね、私は、あなたにちょっと興味があるな・・・、ふふ。」
「そんな~、先輩、休みの日まで・・・、恐縮です。」
睦は、再び大きく小雪に頭を下げた。
(つづく)
だっから~、クルマのことは、私全然知りません・・・。
出水市内から鹿児島市内まで、約1時間半?
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