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2011年5月17日 (火)

第五章「御仮屋書店にて」⑤

 五月晴れ。
 でも、夜は深々と冷え込み。

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 さ、また一週間頑張らねば!。
 ということで。
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      第五章「御仮屋書店にて」⑤
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 「ふ~~ん、感心。」
 睦は、男の子の緊張を和らげてあげるために、くだけた口調に変えた。
 「きみ、紫尾高でしょ。朝補習から、放課後補習まで。おまけに、宿題もど
っさり出るんじゃない。それだけこなすのも大変なんじゃない?」 
 「あっ・・・はい。でも、おねえさん・・・ッテ、瞬のおねえさんは、高校
の時に、準一級を取ったとか・・・・」
 (そりゃあ、私のことだ)
 「そうか。きみ、瞬のお友達ね?」
 「はい、・・なかよしです。」
 睦の弟、瞬(しゅん)はただ今、県立紫尾高校の二年生だ。ただし、部活動
には所属していない、いわゆる“帰宅部”。その代わりに、確かに学業の成績
は優秀であるようで、今も自室に篭って、勉強?いや、パソコンに向ってプロ
グラミング中?。もうしばらくしたら、自室から引っ張り出して、近所のスー
パーへ買物に行かせて、睦がタダモトの散歩に行っている間は、店番をさせる
つもりだ。そんな瞬に、この男の子のような、いかにも「運動部に所属してい
ます!」という雰囲気の子が友達とは、ちょっと意外だ。
 「へ~~、意外。瞬に、きみみたいな友達がいるなんて。」
 睦は、ストレートに疑問を口にした。
 「あっ、そんなことないっですっ。」
 男の子も、睦の疑問の意味がすぐ解ったのだろう。
 「瞬は、クラスの中でも信頼されているし・・・、気が利くし・・。今日
だって・・・あっ」
 なにやら言ってはいけないことを、口走りそうになったのだろう。あわてて、
手で口を覆った。だが、睦は解った。
(はは~ん。さては、今私が店番をしていること、瞬がこの男の子に教えた
な~)
                         (つづく)

2011年5月15日 (日)

第五章「御仮屋書店にて」④

 白い雲と空のコントラスト。

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 でも、快晴の夜って、ブルッ!としてしまうくらいに、冷え込みます。

 さて、ゲッソリ・・・なのですが、あんまりサボると、愛しのヒロイン・
むっちゃんに、袋叩きにされてしまうので。
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      第五章「御仮屋書店にて」④
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 ところがだ。その男の子は、睦が向きを変えた途端、顔が真っ赤になり、う
つむいてモジモジし始めてしまった。
 「あっ・・・・、あの・・・・・」

 (なによ~~っ)
 と思ったが、睦は原因がすぐわかった。脚立の高さのおかげで、ブラウスの
ボタンを弾き飛ばさんばかりの立派な胸が、男の子の眼前に現われたのだ。
 (あっ、ごめん、ごめん)
 さりげなく胸を両腕で隠してあげたが、小柄な睦にとって、この男の子を見下
ろす視線は、ちょっと快感だ。もちろん年上の来店者であったら、即座に脚立か
ら飛び降りたのだが、相手は高校生だ。この見下ろす位置を、しばし楽しませて
もらおう。

 「なにか、お探しでしょうか?」
 睦は素知らぬふりをして、もう一度訊いた。高校生なら、教科書の購入かな、
とも思うが、授業が本格的に始まったであろう今では、少し遅い。
 男の子は、睦の方を見ないようあらぬ方向に目をやりながら、それでも勇を
ふるって声を出した。
 「あ・・・、あの・・・・、英検の問題集が欲しいんですが・・・」
                            (つづく)

  

 

2011年5月10日 (火)

第五章「御仮屋書店にて」③

 雲が低い夜。

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 さ~て、また長い一週間が始まります・・・。
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    第五章「御仮屋書店にて」③
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 “本屋の店員”らしく、ジーパンに着古したブラウス姿の睦は、袖をまくり
あげた。そして、ハタキを片手に、雑巾を腰のポケットに入れて、脚立に上っ
た。睦が小柄なように、御仮屋家の面々は総じて小柄だ。最上段の在庫にまで、
なかなか手が届かない。睦は「えいっ!」と気合を入れて背を伸ばして、本を
抜き出し、まずハタキと雑巾でホコリを払っていった。
 ふと手にした本の題名は『原発はあぶない』『やっぱり原発はあぶない』。
睦が中学生の頃、原発の安全管理体制に警告をならす、として発売され、かなり
売れた本だ。もっともデータの使い方が恣意的すぎる等厳しい反論もなされた。
そして、数年前には古本屋の店頭で一冊百円で並んでいたのを、睦は目にした
記憶がある。ところが、日本は東日本大震災を経験してしまった。
 (ふ~~ん、平積みにして並べてみれば、売れるかしら・・・。そうだ、
他の原発、防災関連の本を集めて、コーナーを作ってみたらどう?・・・)
 そんなこんなで、作業自体はあまり進んでいない。

 開け放たれた入り口から店内に入ってくる光が、ふいにさえぎられた。
 睦はさっと入り口の方に振り向いて、
 「いらっしゃいませ」
 と声をかけた。
  身長は百八十センチは優に超えているだろう。
 (その出で立ちは、バスケ部の部活帰りかな?)
 睦に声をかけられたその男子高校生は、とっさに会釈を返したものの、
しばらくためらうように入り口で立ち止まっていた。やがて意を決した
ように、睦のそばへツカツカと歩いてきた。
 「あの~・・・」
 「はい、なんでしょう?」
 脚立の上の睦は、男の子の方に向きを変えた。
                        (つづく)

2011年5月 8日 (日)

第五章「御仮屋書店にて」②

 一雨来そうな、雲行き。
 一夜明けて朝はかなり本格的に降っていたのですが、ただ今現在、
雨は上がって、蒸し暑くなっております。

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 先ほど「やれやれ・・・、これから出勤か~~」と思っている時に、
突如有線放送のスピーカーから「臨時放送を行います」。
 「行方不明者の捜索について、お知らせします」。
 81歳のおじいちゃんが行方不明になったとのこと。
 高齢者の行方不明、そして、協力依頼の放送、多いデス。
(いや、都市部は「高齢者の行方不明事件」って、隠れて多い、って
ことだけなのでしょうが・・・)

 自作小説でも、この「隠れた高齢者問題」を題材にしたいな~~、
と思っております。デス

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    第五章「御仮屋書店にて」②
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 本屋を含め商店というもの、店を開けている以上、たとえ一人も来店者がいな
くても、誰かが店番をしていなければならない。パートのおばちゃんを雇ってい
た時ははるか昔。睦の父・母二人で、店番・配達・諸々の作業をこなさなければ
ならない現在、それもまたキツイだろう・・・、本屋の娘・睦はよく解る。

 さて、その“にわか店員”である、睦。
 (こりゃあ、せっせか検定試験の勉強をしてやるわ~!)
 と思ったものの、さすがに飽きが来た。
 そうだ自分の視点で、店内の書棚に並ぶ本のチェックをしてみよう、と思い
たち、踏み台代わりの脚立を持ち出した。

                        (つづく)

  すみません、今日はこれだけデス。

2011年5月 7日 (土)

第五章「御仮屋書店にて」①

 あっ、昨日は写真撮らなかったぞ・・・
 で、税所邸での一枚を。
 表玄関に立った位置から。奥のほうが「居間」の部分。

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 さてさて、気抜けしないうちに、次章の冒頭を。
 愛しのヒロイン・御仮屋睦ちゃんには、まだまだ活躍して
頂かねば。
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    第五章「御仮屋書店にて」①
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 土曜日、午後三時過ぎ。
 鶴亀信用金庫の新米職員であり、新納流試心館(にいろりゅうししんかん)の
新米館主である御仮屋睦(おかりや・むつみ)は、ただ今は鹿児島県紫尾市の商
店街の中ほどにある御仮屋書店の“にわか店員”だ。そう、睦の家であり、睦は
この御仮屋家の長女なのだ。
 「まったくね~。ここらのOLらしく、休みの日はドライブがてらに温泉?
ショッピング?っていう生活とは、縁なさそう・・・」
 とぼやいてみた。睦が短大を卒業して家に戻ってくると決まった時点で、両
親は睦に書店の仕事を手伝ってもらうという算段をしたらしい。午後から両親二
人で、熊本県内の黒川温泉へ一泊旅行に出かけたのだ。日曜は定休日だから、土
曜夜八時まで、とりあえず店を開けておけばいい。ついでに、睦の二人の弟、瞬
(しゅん)と時(とき)の食事の用意も仰せつかっている。

 もっともこの時期に、温泉旅行に出かけた両親の気持もよく解る。
 御仮屋書店が今も店を開けていられるのは、ひとえに「教科書取扱店」である
おかげだ。届けられた教科書の山を、各学校ごとの必要冊数に小分けする。高校
生の教科書は、直接生徒に販売するので、各学年ごと、さらには選択コースに応
じて、一人分に小分けする。そんな作業に、ここ二ヶ月ばかり忙殺された後、新
学年が始まって、各学校への納品、生徒への販売が一段落して、ほっと出来る時
期なのだ。

                             (つづく)

2011年5月 5日 (木)

第四章「新米館主、初仕事」⑳

 いつもいつも、ついついこの光景に遭遇してしまうと、
何枚も写真を撮ってしまいます。

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 さ~~て、第四章をとりあえず完結させねば。
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    第四章「新米館主、初仕事」⑳
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 「あの~」
 小雪が、少し遠慮がちに再び口を開いた。
 「御仮屋さん、弓はしないの?」
 「あ、はい。お遊び程度には・・・」
 睦も遠慮がちに答えたが、義彰が答えを引き継いだ。
 「もちろん、もちろん。新納流には、弓の扱いもありますぞ。そして、むっち
ゃんの得意技じゃ。」
 (得意技だなんて・・・)
 「あの~~、自慢しているように聞こえたら、ごめんなさい。実は私、弓道は
三段をもらっていますの。」
 「えっ・・」
 イタリア製の車をマイカーとする小雪のイメージからすると意外だが、改めて
その姿を目にすると、そのすらっとした長身は、弓を弾く姿がとても似合いそう
だ。
 (そして、三段か・・・)
 段位制度なぞない新納流だが、三段というのがかなりの熟練者であろうことは、
睦にも推察できる。
 「おっ、そりゃあいい。水溜さんの弓道着姿は、きっとばっちり様になるんじ
ゃろうの。こんど、この庭で弓を弾いてみてくれんしゃい。大山くん、桐嶋くんも
来てくれるの。」
 義彰が、睦の思っていることを、しっかり代弁してくれた。
                          (第四章 完)
                          (つづく) 

2011年5月 3日 (火)

第四章「新米館主、初仕事」⑲

 自分にとっての「休み」は、あっさりと終わり・・・。
 世間様ではGW中盤。皆さま、有意義に過ごされていらっしゃい
ますか?

 さて、久しぶりに商店街の諏訪書店さんで、買物をさせていただき
ました。・・・・誠に勝手ながら「御仮屋書店」のモデルですから、
密かにでももっと利用しなければなりません・・・・。

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 で、購入したのは有川浩著「図書館戦争」「図書館内乱」(角川文庫)。
買ってから、ギョギョ!!、全6冊シリーズですかい~~!
 夜のうちに「図書館戦争」は読了。う~~ん、自分には作品中の世界
設定が“突飛過ぎて”、馴染めないかな・・・。ヒロインとヒーローの
恋の行方は、とっても気になりますが。

 本当は、諏訪書店さんの店頭にあれば、同じ有川氏の最新作「県庁
おもてなし課」を買おうと思っていたのですが、残念(少なくとも、
こちらはパラレル・ワールドが舞台ではないはず)。
 改めて、Amazonなりで、購入したくなってなっております。

 さて、有川氏には負けんぞ!!
        と気勢を上げてから
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    第四章「新米館主、初仕事」⑲
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 大山の肩口に両手を置いて、勢いよく身体を前方へ回転させる。背中の上で
前転する心づもりだ。
 (小さく、小さく)
 自分の身体が、出来るだけ小さい球となるように。

  ポンッ
 睦のお尻が、狙い通り大山の腰を、きれいに弾いた。
  (成功っ)
 身体を伸ばして、着地。さっと向きを変えて、大山と向き合う。
 しばし向き合った後、言い交わしたわけでもなく、二人とも構えを解いて、
お互いに礼。

  ワンッ!
 タダモトが一声吠えて、「どうですか?」と言わんばかりに、小雪を見上げた。
 小雪が、拍手をくれる。
 「二人とも、ぴったり息が合っているじゃない。別に、事前に練習したわけでも
ないでしょ?」
 (あは・・・、見る人には解りますよね)
 「You are a very nice knight.(騎士じゃのう。)大山くん、ありがとう。
わが新米館主の初仕事に、大山くんのような人が相手をしてくれて、むっちゃん
も幸せじゃ・・・・。さて、桐嶋くん、ばっちり撮ってくれたかのう?」
 「おまかせくださいっ!。ビシッ!と撮らせて頂きました。・・・・そうだ、
御仮屋さん、僕ら商工会議所の若いヤツらで『さわやか市』というのを開いて
いるのは、知ってますよね。自分なんか、そこで大道芸でもあったら、と思って
いたんですが、どうですか、新納流のPRも兼ねて、そこで演武をしてみません
か~~?」
 桐嶋が、一気に提案してきた。
 (えっ、私、客寄せの大道芸もしなきゃならなくなるの・・・)
                              (つづく)
 

2011年5月 1日 (日)

第四章「新米館主、初仕事」⑱

 どんよりと曇った空。夜には、本格的な雨降りに。

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 そういえば、ここ出水の市街地に、オオルリ?でしょうか。
きれいな声で鳴く“山の小鳥”が。夏鳥の渡りの季節なのでしょうね。

 疲れておりますが、少しでも先に進むべく。
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    第四章「新米館主、初仕事」⑱
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 睦と大山は、今までよりも半歩ずつ間合いを広げた。そして、ゆっくりと円
を描きながら、間合いを保つ。
 どうしたものか?。もちろん、大山が諸手刈りに来た瞬間に、後ろに飛びず
さる、あるいは横っ飛びで避ける方法が、最も確実だが、それでは新納流らし
くない。出会い頭に顔面へひざ蹴りというのは実戦的だが、“優しい”相手・
大山の顔面を蹴ることなぞ出来ない。
 子供の頃の睦なら、ここはひらっと上に跳んでかわすことが出来たろう。
 そうか。
 当時の跳躍力は、胸と腰のおかげで失われてしまっているが、身長そのもの
は、今も十分小柄だ。身体の柔軟性も、失われていない。そして、一瞬の判断
力は、二十を過ぎた今の自分の方が、磨かれているのではないか。
 よし。
 睦は、決めた。改めて、向かい合う大山の目を見た。

 大山が、小さくうなずいてくれた。
 「おっ」
 身体を低くしながら、猛然と突進してきた。
 「はっ」
 睦も半歩踏み込んでから、両脚を踏み切った。
                       (つづく)

2011年4月27日 (水)

第四章「新米館主、初仕事」⑰

 今度は、一気に初夏になったような。
 爽やかな雨。

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  ・・・と思ったら、噴火活動が続く霧島連山の麓では、
「土石流の危険により、避難勧告」が出されたとのこと。
 降れば、降ったで、自然災害を心配しなければならず。

 さて、大の中年オジサンが、部屋の中で構えを取って、
(相手がこうきたら、こう動けるものだろうか・・・)
 と、あれやこれや研究中。
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    第四章「新米館主、初仕事」⑰
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 「いきます」
 大山が動いた。これまでよりも、早い動作だ。左手が右腕を狙ってきたのは
ひょいとかわしたら、右手は今度はぐっと突き進んで、道着の襟を狙ってきた。
 (おっと)
 相手の右手を軽く左手で払いながら、睦の足が動いた。ただ後ろに下がって
かわすのでは面白くない。左足を軸に半回転しながら、大山の身体の右側を沿
うように移動して、後ろに出た。
 「出ましたね、新納流。相手の身体の弱点となる側を移動する術。」
 「あらあら、大山さん、よく新納流を研究されていらっしゃるようで。私、
すぐ捕まってしまうのかしら・・・。」
 人体は、一見左右対称のように見えるが、もちろん「右利き」「左利き」が
あるように、それは非対称だ。右利きの人間は、左方向への動きより、右方向
への動きはワンテンポ遅れがちだ。確かに新納流は、相手の身体のクセを素早
く把握して、それを利とすることが、動きの基本だ。
 
 「さ、今度は諸手(もろて)刈りで、いきます」
 大山が、宣した。「諸手刈り」とは、つまりタックルだ。早い動きが、襲っ
てきそうだ。
 「さて、私は、どうしましょう・・」
 睦も、応じた。
                         (つづき)
  スミマセン、アクション・シーンは少し端折ります。
 

2011年4月26日 (火)

第四章「新米館主、初仕事」⑯

 深夜の架線工事。

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 実は一日半の休日を頂いたのですが、休日なんて
あっという間に・・・・。

 さ、出勤前の気分転換に。
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    第四章「新米館主、初仕事」⑯
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 大山と一間(約1.8m)ほどの距離で向かい合う。睦は軽く両脚を開いた状態
で立つ。特に力は入れない。対する大山は、左足を半歩前に踏み出した構えだ。

 「いきます」
 大山が一声掛けて、左足を進めてきた。左手で、睦の右肩を狙ってきた。
 (これは、余裕)
 足を動かさず、上体をそらしてかわす。
 「今度は、右手で」
 右足を踏み込んで、左肩を狙う。
 (まだ、まだ)
 上体をかがめて、大山の右手に空を切らせる。
 「左右、交互で」
 先の左手は、肩を少しずらして避け、後の右手は、上体を大きくひねって
よけた。
 「古武道だと思うと、ボクシングのような動きですね。」
 「いえいえ、これは大山さんがやさしいから、出来る動きです。」
 「そうじゃ、そうじゃ。わしが仕込んだ、むっちゃんじゃ。大山くん、遠慮は
いらん。胸をぎゅーっと鷲掴みして構わん。」
 「ちょっと、じいさん。さすがに、ここでそういう冗談はよして。」
 「そうですよ~、新納さん。録音中なんですから~」
 桐嶋は、相変わらずカメラのファインダーから目を離さない。

 義彰のいつもの軽口に、大山は明らかに動揺したようだ。ちょっと咳払いを
してから、
 「それじゃあ、今度は、御仮屋さんの足を動かしてみせます。」
 と、再び構えをとった。
 「どうぞ、緊張します。」
 睦も、応じた。
                         (つづく)
  身体の動きを文章で表現するのも、なかなか難しい・・・・。

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