自作小説 Feed

2011年6月 3日 (金)

第五章「御仮屋書店にて」⑮

 今度の日曜は、お天気に恵まれるでしょうか・・・・。

1106031s

 勤め先のコンビニで、店長サマがポツリと。
「なんか最近、結婚しようっていう気がしないんですよね・・・。
休みの日もゲームして・・・そうそう、スカパー(衛星放送)も
見れるようになったし・・・。こういう生き方もありかな~って」

 オマエが、そんなこと言うな~っ!!

 まあもちろん、年上の私を気遣ってのご発言だとは思うのですが、
私なんざより、はるかに仕事熱心な店長サマまでね・・・・。

 私が率先して「婚カツ!婚カツっ!!」て騒いでみせなければ
ならんのか・・。
 って、現状もし女性とご縁が出来て、
「鈴木さん、趣味はなんですか?」
「うう~~ん、今は小説を書くことでしょうか・・」
「わ~~、私にも読ませて~」
「うう~ん」
「・・・・・鈴木さんって、若くて胸が大きい女の子が好きなんですね
・・・・」
 で、ジ・エンドですね・・・。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑮
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 「わが弟よ」
 睦は、ふざけて厳粛な声を出してみせた。
「な、なんだよ~」
「もうしばらく、女と男の友情を邪魔しないで。スーパー『やまと』まで、夕飯
の材料を買出しに行ってちょうだい」
「なんだよ~、友達の前でそんなカッコ悪いこと頼まないでくれよ~」
「あら、家の手伝いをすることが、そんなカッコ悪い?」
「瞬、買物を頼まれるなんて、オレ、うらやましいぞ。ほら、オレん家の近く
って、スーパーなんてないから、親も買物に行く時はいつもクルマだ。“おつか
いに行く”なんて、滅多にないぞ・・・。あっ、なんだったら、自分が買物に
行きましょうか?、む、睦さん」
「いいよ、いいよ、ワカッタ、俺が買物に行くから、その男と女の友情とやら
を育んでいればいいさ・・・」
 なんのかの言いつつも、姉の言うことをきいてくれる、よき弟だ。

 「よし。じゃあ、今夜は“ぶたすき”にしよう。下の弟・時(とき)も
入れて、みんなでわいわいしながら、鍋を囲もうよ。聡君、おなか空いてる
でしょ?」
 「はい!、ペコペコです」
 「ほ~~ら、姉さん、結局料理なんてしないつもりなんだから・・。すき焼き
なんて、せいぜい材料を刻んで盛るくらいじゃないか・・・」
 「え~い、細かいツッコミはなし!。瞬、今リスト書くからね。聡君もいるから、
肉は多めにね。そうだ、明日の朝の牛乳と、そうか、お米も買ってきてもらおうか
しら。もちろん、10キロね」
 「げっ、友達の前で、“弟いじめ”しないでくれよ~」
 「いいから。運動よ。行きは駆け足をして行ったら、少しは聡君のお腹具合に
近づけるんじゃないかしら・・・」
 「・・・・わかったよ~」

 弟・瞬を買物に送り出して、店内はまた睦と坂道の二人だけになった。
 「さ、リミットは、瞬が帰ってくるまで。がんばって」
 睦は、坂道に微笑んだ。もちろん睦は、スーパーボールを店内一周させること
を坂道が出来なくても、英語を教えてあげるつもりだ。しかし、坂道ならボール
を上手く操って、成功させるかもしれない、と思う。
                         (つづく)

2011年6月 1日 (水)

第五章「御仮屋書店にて」⑭

 出勤途上、広瀬橋で欄干にくくりつけられたノボリを見て、
気がつきました。
 今度の日曜は、鮎解禁日だ!

1106011s
 自分はねぐらで晩酌をしながら、早朝の花火の音を聞くのでしょうね。

 さ、今日は効率よく「寝て・起きて」が出来マシタ・・・。

  で
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       第五章「御仮屋書店にて」⑭
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 「そう。私のお友達、聡君」
 睦は、“お友達”の部分をことさら強調して言った。坂道も、満足げだ。
 「なんだ、なんだ~。聡、うちの姉ちゃん、確かにチビなくせに胸がでかく
て、顔も・・・まあまあとしよう。だから、男心を刺激する外見、だとする。
けれど、弟として一緒に暮す身として見れば、性格なんて、ホント、どうし
ようもないからな・・・。聡、“お友達”なんて呼ばれて、鼻の下伸ばすの
はやめとけ。大体、男と女の間に“友情”なんて成り立たないって、この間
話したばかりじゃないか・・・・」
 「あらあら・・・。じゃあ、私と聡君とで、その“友情”が成り立つって、
証明しよう。ね、聡君?」
 睦はじっと坂道を見ながら、訊いた。
 「はいっ!」
 坂道は、力をこめて答えてくれた。

 「ああ~~、聡。お前の目、ハートマークになってるぞ・・・。学校じゃあ
“硬派”で通っているオマエがな・・・・。姉ちゃんと会う段取りをした俺の
痛恨の失策か・・・・」
 弟・瞬は、ブツブツ言っている。睦は、そんな弟にはお構いなしに、
 「そうだ!。聡君、今日は家で夕飯、食べていかない?うちの両親、今夜は
出かけていていないのよ。瞬とも話すことは、たくさんあるでしょ?男同士
の友情も、ちゃ~んと尊重してあげる」
 「ほ、ホントですかっ?・・・・で、もしかして、夕飯作るのは・・・?」
 「そう、私」
 「押忍!頂きます!」
 確かに、坂道聡の頭上にはハートマークが飛び交っている。
                            (つづく)

2011年5月31日 (火)

第五章「御仮屋書店にて」⑬

 台風が通り過ぎた日(まあ、出水には接近しませんでしたが)。
 日曜の日没時。

1105311s
 ふ~~、で、時間はあっさりと流れて・・・ただ今、火曜午後。

 ・・・・・・「仕事行きたくな~~い」・・・・・。

   と、しみじみ思う自分がおり。

 って!、グチはこのくらいにして。
 せめて、愛しのヒロイン・むっちゃんには、明るく活躍して
もらいましょう。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑬
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 「いけっ」
 坂道は、ボールを放った。さすが「挑戦します」と言っただけのことはある。
ボールは上手い具合に、店の奥へと進んでいく。微妙に斜めに進んでいくのは、
角で方向転換をさせることを計算したのだろう。
(第一関門は、上手く突破するかしら・・・)
 と思ったが、残念。ボールは奥の角で何度も壁と棚にぶつかって、停まって
しまった。
 「ちっ!」
 坂道が舌打ちする。
 「あ、あの~、何回でも挑戦していいんですよね?」
 「どうぞ、どうぞ。どうせ、お客さんも少ないから。坂道君が、気の済むま
でいいよ」
 「よ~~し、オレ、あきらめませんからね。本当に成功したら、む、む、睦
さん・・・・って、呼んでいいでしょうか・・・?」
 「どうぞ」
 「睦さん、自分に英語教えてくれるんですね?」
 「もちろん。英検準一級は難しいとしても、ちゃ~んと二級くらいは合格で
きるよう教えてあげる」
 「押忍っ!」

 再び、坂道は
 「ボールよ。今度はせめて第一コーナーは曲がれ、頼む!」
 ボールに念じる。再度の挑戦。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 坂道は、確かにあきらめない。それが「睦さんに英語を教えてもらう」という
目標があるから、と思うと睦は、やっぱり照れ臭い。だが、坂道は睦と同じように
“負けず嫌い”でもあるのだ。そんな“年下の男の子”坂道聡が、睦には微笑まし
い。
 ふと、二階から階段を下りてくる足音がした。
 「あっ、瞬」
 ボール転がしに夢中になっている坂道が、気づいて声を出す。何気なく下りてき
たふりをしているが、姉・睦と友人・坂道聡の展開が気になって仕方がなかったの
だろう。睦の弟・御仮屋瞬(おかりや・しゅん)だ。
 「おう、聡」
 弟は、これまでの展開を読み取ろうとするように、しばらく黙っていたが、
 「な~んだ、すっかり姉ちゃんに気に入られちゃったじゃん」
 と結論づけた。
                             (つづく)

2011年5月29日 (日)

第五章「御仮屋書店にて」⑫

 ねぐらに帰ってきてみれば、雨漏り。

1105291s
 でも、起きて午後になってみれば、雨はやんでおりました。
 東日本の被災地で、大きな被害となりませんように。

 さて、スコシデモすこしでも・・・。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑫
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 「ちょっと“偵察”させてください」
 張り切った坂道は、自ら店内を一周してみている。自分の足で、店内の距離感
を把握するつもりなのだろう。
 「う~~~ん。本にぶつけない、というのは難しそうだから、自分、転がして
挑戦します」
 坂道は宣言した。
 「ふふ。がんばって。でも、私小さい頃、それこそ何回も『商品にぶつけるな!』
って、親に怒られてたな・・・」
 ふと睦は思いついた。
 「そうだ、坂道君。あなたが出来たら、私があなたに英語教えてあげようか?」
 「ほ、ホントですかッ!」
 俄然、坂道のやる気が盛り上がったようだ。睦は、ちょっと照れてしまう。

 とはいえ、このまま地元でOLをしている限り、せっかくの英語を活かす機会は
ないだろう。それは、とても無念だ。ふと思いついたことだが、たとえ“まぐれ”で
あっても、坂道には成功して欲しい、という想いも籠められている。

 「じゃあ、いきます!おい、ボール。ちゃ~~んと、帰ってくるんだぞ~~」
 坂道は、ボールに念じることまで、睦の真似をしてみせた。
                            (つづく)
 

2011年5月27日 (金)

第五章「御仮屋書店にて」⑪

 ワンパターンですが、雲が低い夜の帰り道。

1105271s
 さて、昨日のわが失敗。
 夕方、ある若い女性のお客さまが来店。
なにやら自分の方へ親しげにニッコリしてくださったのですが。

 自分の方はと言うと、
 (はて?誰だっけ??・・・)

 ・・・・・・・・・・・
 必死に考えた結果、
 高校生の当時は、拙ブログにも何度か登場して頂きました、
          “お師匠さま”のお友達だ~~!!

 ・・・・・・とはいえ、
 う~~~~~~む、不惑を超えたオジサンとしては、
 そのファッション、「似合ってますね」というコメントは出来ない・・・・。

 結果、あまり嬉しい顔で歓迎の意を表せなくて。

                ホント、ごめんなさい。

 はぁ、自分のファッションに興味がないと、女性のファッションを見る目
も、どうしても“保守的”になってしまうようで・・・・。

 そうだ!愛しのヒロイン・むっちゃんは、戦国時代のお姫様そのまんま、
実は腰まである黒髪の持ち主で、普段は“ポニーテール”にしている・・・、
なんてどうでしょう?
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       第五章「御仮屋書店にて」⑪
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 「オレも・・・、いや、自分も挑戦してみていいですか?」
 さすがは睦が“気に入った”坂道だ。やってみたい、という反応が返ってきた。
 「ふ、ふ~~ん、そう簡単に出来ると思う?」
 「い、いえ・・・。でも、自分だって、バスケのボールを操るのは、部の中
では一番です」
 「そうなんだ。じゃあ、ちょっと初心者向けの技を~と」
 再び、睦は手にしたスーパーボールを顔の前に持ってきた。
 「今度も、しっかり帰ってくるんだよ。お手本なんだから」
と言い聞かせて、
 「いってらっしゃ~い」
と放った。今度は勢いよく床を転がした。
 「ぶつかって方向を変える角度を計算しやすい代わりに、今度は転がした時
の勢いが肝心になるわよね」
 解説を付け加える。
 「あ~、そうですね。床を転がる分だけ、その摩擦でボールの運動エネルギ
ーがどんどん失われていっていますよね」
 「そう。これは『物理』の問題ね」
 もちろん、姉のことを「頭カラッポ」と評した、弟・瞬への反撃だ。

 そうしているうち、ボールはゆっくりと店内を一周して、やがて最後のエネル
ギーを使い果たして、睦の足下で止まった。
 「しっかり、帰ってきたわね。お帰りなさい。」
 睦は、スーパーボールを拾い上げる。
 「さて、坂道君。挑戦してみる?」

 「は、はい!」  
 好奇心旺盛なその坂道の表情が、睦にはとても嬉しい。
                           (つづく)

 

2011年5月26日 (木)

第五章「御仮屋書店にて」⑩

 なんのかの。やっぱり“堅い本”を読む気になれないのは、気力が衰えて
いるからなんでしょうね・・・・。ふ~~。
 せめてもの抵抗で読了した小説。
 有川浩(ありかわ・ひろ。女性です)著『レインツリーの国』。
           新潮文庫・定価400円(税別)

1105261s
 内容は、難聴者と健聴者の恋。とはいえ、普通に男女が付き合っていく上
でも、すれちがい・いらだちって多々あるのだろうし、“難聴者と健聴者の
恋”といっても、それは特別なものではない、と思わせてくれる(少なくと
も自分はそう思いました)作品でした。
 とはいえ、やっぱり地方在住者のヒガミなのでしょうか・・・。それでも、
もし作品中の(難聴者)ヒロインが地方在住であったら、もっと人知れずひっ
そりと暮す生活を余儀なくされてしまうんじゃないだろうか・・・・、
 そんなことも思わざる得ませんでした。

 さ、プロの作家の方には遠く及びませんが、わがヒロイン・むっちゃんに
大活躍していただきましょう・・・。

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       第五章「御仮屋書店にて」⑩
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 「もっと、私のスーパーテクニックも見せてあげようか・・・」
 睦は、思わせぶりに坂道に言った。
 「は、はい」

 店内は、意外に奥行きがある。約十五メートルぐらいだろうか。間口は約
五メートル。壁沿いに設けられた書棚以外に、二列棚が設けられ、フロアを
三列に仕切っている。店内を壁沿いに一周してくると、四十メートルくらい
だろうか。
 睦は、改めて
 「しっかり帰ってくるのよ」
 と、スーパーボールに話しかけた。そして、
 「よっ」
 横の壁めがけて、ボールを放った。壁に当たったボールは向きを変えて、
店の奥目指して、フロアを跳ねていく。
 「私だって、本屋の娘よ。商品である本には、一切当たっていないのも、
ポイント。よく見ててね」
 坂道に、解説を加えた。奥の壁に到達したボールは、そこでまた向きを変え、
今は奥の通路を跳ね進んでいる。
 「まさか、今度もここに戻ってくるとか・・・・」
 「さあ、どうでしょう・・・」
 睦は、にっこり微笑んでみせる。
 そして、確かにボールはまた向きを変え、こちらに戻るべき進路を取り始めた。
 「ああ・・・、さすがにここまではちょっと無理だったわ・・・」
 少し身体を動かして、ボールが進む通路の位置に立った。
 「さあ、しっかり帰ってらっしゃい~」
 ボールに手招きをする。
 勢いを失って、膝丈くらいの高さまでしか跳ね上がらなくなったボールを、
 「よし、よし、いい子~」
 とすくい上げて、キャッチ。

 「どう?」
 睦は、再び坂道に微笑んでみせた。
                          (つづく)

2011年5月22日 (日)

第五章「御仮屋書店にて」⑨

 昨日と同じく・・・・。

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 でも、本格的な夕立となり、

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 雨上がる。

 少しでも前進。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑨
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 しばし続く、キャッチボール。
(ふ~~ん、察しがいいね)
 実はさりげなく、睦は左右の腕を交互に使って、坂道に向ってボールを投げて
いる。坂道もそれを素早く察して、左右交互に投げ返してくる。しかも、睦の
胸元へ、ほとんど逸れずに返ってくる。
 「なかなかやるね」
 「はい、やっぱりバスケも、両手でドリブルが出来るよう練習しました」
 「そうか、それなら“見せがい”があるってもんね」
 睦はキャッチボールをいったん止めた。陽気は、もう初夏だ。ほんのり汗ばん
できた身体が心地よい。

 「さて、お立会い。
 ここにあります、なんのへんてつもない、スーパーボール。
 ところが、愛情をこめて『しっかり帰ってきてね』と呼びかけて~と」
 睦は胸の前で、スーパーボールをしっかり握って、祈る動作をしてみせた。
 「聡君、ちょっとこっち来てね」
 と、坂道を自分の横に来させた。そして、おもむろに
 「行ってらっしゃ~い」
 と、ボールをやや強く店内の床に投げた。ボールは勢いよく床で跳ねて、天井
に届かんばかりに跳ね上がる。床で四回バウンドした後、店内奥の壁に当たった。
そして、勢いはやや衰えながらも、また五回バウンドして、きっちり睦の手元に
戻ってきた。
 「えっ!」
 坂道が、思わず声を上げる。
 「ね。まぐれだと思う?」
 睦は、坂道を見やった。
                        (つづく)

2011年5月21日 (土)

第五章「御仮屋書店にて」⑧

 一雨来るな~、と思った雲行き。

1105211s
 でも、あれれれ・・・・。
 一滴も降らなかったような。

 少しでも。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑧
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 そりゃあ、国立理系コースでもトップの成績を誇る弟・瞬からすれば、短大
英語科に進学した姉・睦のことを、せめて「頭カラッポ」と負け惜しみを言う
しかないのだろう。

 「聡君」
 睦は、「坂道君」から「聡君」に呼び方を変えた。
 「今、時間ある?ちょっと、私と遊んでいかない?」
 その一言だけで、坂道は明らかに動揺している。
(あれれれ・・・、ゴメン、ごめん。「遊んでいかない」が、ヘンに誤解さ
れちゃったね・・・)

 「バックをおろして」
 坂道に指示してから、睦はレジカウンタ代わりにしている事務机へと向った。
引き出しを開けて、ある物を取り出した。
 「いくよ」
 坂道に一声かけて、ポイと投げた。
 さすが、運動部所属。坂道は、さっと受け取った。
 「ほい」
 今度は坂道に投げ返すよう、促した。これも、坂道は、すっと睦が構えた手の
ところに、投げ返してきた。
 「スーパーボールですね」
 「そう、スーパーボール」
 睦はそう言って、また坂道に投げた。

 幸か不幸か。土曜午後、商店街の本屋に足を踏み入れる者は、極めて少ない。
                             (つづく)

2011年5月19日 (木)

第五章「御仮屋書店にて」⑦

 あんまり拙ブログでは、勤め先の宣伝は書きたくないのですが・・。
 本日は。
  5月24日(火)発売、鹿児島・宮崎限定2万食。
  「いずんの鶏弁当」。

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  一度くらいは、ぜひ話のネタに。

 さて、今日くらいは“お疲れモード”Maxにつき・・・で、自作小説
は休載とさせて頂こうと思ったのですが、愛しのヒロイン・むっちゃん
に「だめ!」と怒られましたので・・・。

 って、いかにも幻想小説?SF?。
 作家が丹精をこめて書いた作中の主人公が、徐々にその作家の目に
見えるようになって・・・・という筋。古今東西、たくさんあるので
しょうね。
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       第五章「御仮屋書店にて」⑦
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 それでも、
「Thank you(ありがとう).」
 頑張って考えてくれたであろう、その答えに御礼を言ってあげた。
「ふむ。英語が好き、っていうのは、本当のようね。」
「はい。英語が好き、なのはホントです。」
 男の子は、いかにもホッとしたような表情をした。
(自分とそんなに歳は離れていないのに、カワイイんだから・・)

「そうだ。きみの名前を教えて。私、瞬の姉の御仮屋睦(おかりや・むつみ)。
瞬のお友達なら、私の友達でもあるわね。さ、きみの名前は?」
「あっ、あ・・・、ぼく、坂道聡(さかみち・さとし)。瞬と同じ紫尾高校
二年、部活はバスケ部です。」
「そう、坂道君か。よろしく、ね。」
 睦は坂道に向って、手を差し出した。
「ええっ・・・、いいんですか・・・」
 坂道はためらう。
「遠慮しないで。しっかり握手しよう」
 睦は、遠慮がちに差し出された坂道の右手を、しっかり握ってあげた。
 坂道は、これまで以上に顔は真っ赤か状態。

「さ~て。うちの瞬は、坂道君には、私のこと、どんな風に言ってるのかしら、
教えてくれない?」
「えっ、えっ・・・・・それは・・・・・」
 再び、坂道は言いよどむ。
「私の友達でしょ。しっかり、教えてよ」
「あっ・・・、あの・・・」
「隠さないで」
「えっ、その~~、ルックスはまあまあ・・・。身体はチビなくせに、ムチムチ
ナイスバディで、弟にとっては目の毒・・・。ただし・・・・・・」
「ただし?」
「あの~~、あくまで、瞬が言ったことです。・・・ただし、頭はカラッポ・・・」

 (あん野郎めっ!)
                          (つづく)
  

2011年5月18日 (水)

第五章「御仮屋書店にて」⑥

 家路を急ぐ道すがら。

1105181s
 昨夜は、同僚の美人店員さんの「上京壮行会」。
 ところが、そこは24時間営業のコンビニのツライところ。私は、
さっとジョッキ一杯空けて、再び「いらっしゃいませ、こんばんは~」。
 一杯だけ飲んでも、ほろ酔いにすらならず・・・。気持は「はやく
帰って、追加を飲みてぇ~!!」。

 でも、晴れた夜は、やっぱりビールをぐいぐい飲むには肌寒かった
りします・・・・。

 さ、つづき、つづき。

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      第五章「御仮屋書店にて」⑥
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 ちょっと、とっちめてやろう。
「ふふ~~~ん」
 睦は、自分とは顔を合わせないようにしている男の子の視線の先に、顔の位置
を動かした。そして、組んでいた腕は、胸を隠す位置から、胸の隆起を強調する
位置へと下げた。
「・・・・・な・・・なんでしょう・・・」
 男の子は、もう顔真っ赤かだ。
「わかった。きみ、どうせ、“瞬のところの巨乳ねえちゃんに会ってこい”って、
けしかけられたんでしょ?」
「ちがいますっ!」
 男の子の声が、大きくなった。
「え、え、英検を受けてみたいと思っているのは、本当です。それに・・・、
思い切って今日、ここに来て、・・・・お会いして、とっても嬉しいです。」
 そこまで言うと男の子は、さっと向きを変えて、出ていこうとした。
 ところが、そこは新納流試心館の館主・御仮屋睦だ。
 さっと脚立から飛び降りると、
「待ちなさい!」
 素早く、男の子のバックをつかんだ。
 見上げる睦と、止められて振り向いた男の子が見つめ合う。
 
 男の子の力が抜けた頃を見計らって、睦はバックから手を離した。そして
おもむろに、
 「Well.The boys,how can you be so interested in breasts?
  (さて、男の子って、なんでそんなにおっぱいに興味があるのかしらね?)」
 と、訊いてあげた。
 「あっ・・・・、え・・・・・」
 男の子は、一所懸命答えを考えているようだ。

 「・・・Because,they are beautiful.And you are most beautiful lady.
    (とてもきれいだからです。そして、あなたはとてもきれいな女性です。)」
  精一杯考えたのだろう。
 (あらあら・・・・、お世辞がお上手なことで)
                          (つづく)

  

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