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2011年2月19日 (土)

第二章「新館主の朝」③

1102191s

 ふと思い出しました、今頃は行くべきところに行けば、梅の花がきれい
なのでしょうね・・・・。
 すっかり出不精になってしまった自分・・・・・〇| ̄|_。

 さ、少しでも。
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  第二章「新館主の朝」③

 「いいぞ~っ、むっちゃん。お尻と胸の躍動感、素敵じゃぞ。この
眺め、わし一人独り占めは、もったいない。そうだ!、むっちゃん、早く
弟子を見つけてきなされ。」
 「そうね、素敵な男性を十人ばっかし、つかまえてこようかしら・・。」
 「そうじゃ、そうじゃ。近々、蔵にしまってある武具の日干しもしても
らおうかの~。むっちゃん、ひとりじゃ、大変じゃぞ。」
 「げっ。弟子募集中にしなきゃ・・・・」
 軽口を叩きながら、掃除は終了。身体からすでに汗が噴出しはじめている。

 そして、最後はタダモトの散歩だ。察したタダモトは、尾をちぎれんばかり
に振って、喜びを表している。
 「さ、タダモト、お待たせ~。行こうか。」
 「うむ、気をつけての。」
 義彰が見送ってくれる。
                       (つづく)

   げっ、今日はコレダケ・・・・です。
 

2011年2月18日 (金)

第二章「新館主の朝」②

 ただいまファマリーマートで発売中、“料理の鉄人”坂井宏行氏監修
「あんぱん」と「スイートポテトパイ」。ちなみに、坂井氏はご当地・
出水市の出身。

1102181s
 って、ひとつジェネレーション・ギャップを感じたこと。同僚の店員
と話していたら、
 「この人って、そんなに有名ですか~?」
 と。
 う~~~む、そう言われて思い返すと、当時20代半ばの自分、今と比べ
ると格段にテレビを見ており、フジテレビ『料理の鉄人』はほぼ毎週見て
いたっけな・・・・。その印象。

 さて、今日は少しでも前進。
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  第二章「新館主の朝」②

 タダモト。代々新納家で飼われてきた犬が名を引き継いでいる。睦に
とっては三代目タダモトだ。これが典型的な和犬であれば、この武家屋
敷にぴったりなのだろうが、この犬はシェパードの血が濃い大型犬だ。
もっとも外見にこだわらないのが、『新納流』だ。そして、タダモトの
名は新納家の先祖という、戦国時代島津家の知勇兼備の家臣と伝わる・
新納忠元(にいろ・ただもと)から拝借している。「そんなご先祖様の
名を犬になんて~」とも思うが、これはこれなりのご先祖様への敬意の
表し方なのだろう。
 
 「よし、よし、タダモト。お座りしなさい。」
 今朝のタダモトは、おおはしゃぎだ。後ろ足で立ち上がり、前足を
睦の胸にパタッと置いてくる。
 「もう~~っ」
 犬相手には、怒れない。
 「だから~、おすわりっ!。今朝は、ドックフードで我慢してね。
夕ご飯は、ちゃ~んと私が手作りしてあげるから、ね!。だから、今
はこれ食べて、私が掃除し終わるまで、待ってなさい。」
 さて、掃除だ。自分一人でしなきゃならん、と覚悟していたつもり
だが、家主・義彰もほうきを手にした。ただし、
 「ほほほほっ。朝一番、若い娘から発散されるホルモンを存分に
吸い込む。これぞ究極の健康法じゃな。」
 という余計な解説つき。
 まず、庭を丁寧に掃いて、地面に掃き目をつける。次は、屋敷内だ。
掃いた後は、板の間は雑巾掛けだ。ぞうきんを固く絞って、エイヤッ
とばかりに拭き進んでいく。
                   (つづく)

  で、今どきは学校の掃除も、モップなのでしょうか・・・・。
 

2011年2月16日 (水)

第二章「新館主の朝」①

 2月15日。2ヶ月に一度の年金支給日。
 ・・・・というわけで(って、なんのこっちゃ?でしょうが)
 久しぶりに真昼間の出水の街を、アッチャコッチャ、トコトコと。

1102161s
 ふ~~、以前は当たり前のように歩いていた距離も、
                     ツカレマシタ・・・。
 まあでも、「青空の下」は、やっぱりいいですね。

 さて、懲りずに。
 で、つまらない念押しですが。
 当自作小説はあくまでフィクション(創作)であって、登場する人物・
企業等は架空の存在です。

(と、わざわざ書かなきゃならんのは、やっぱり“モデル”が存在するから
・・・・の裏返しでもあるのですが)
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  第二章「新館主の朝」①

 御仮屋睦(おかりや・むつみ)は、商店街の一角「御仮屋書店」の
長女だ。本屋の朝は午前六時前、雑誌を配送するトラックが倉庫の前に
急停止して、ドサッドサッと束になった雑誌・単行本が荷下ろしされる
音で始まる。以前ならば、人気週刊マンガ雑誌の発売日ともなれば、それ
を楽しみにしている子ども達が、登校前に買いに来ていた。御仮屋家も、
荷が着いたと同時にその束をばらして、あわただしく店頭に並べる・・・、
が一日の始まりだった。
 そんな本屋に生まれ育った睦だから、他人は「朝は苦手」なぞと言うが、
早起きは得意だ。午前五時、今朝は余裕を持って目覚まし時計をセットして
いた。パチッと目が覚めた。
 (とはいってもねえ~。これが冬場じゃないから、いいのよね・・・)
 さっと布団から出て、洗面台へ向う。
 歯磨きをしながら、鏡の中の自分と向き合う。
 (大丈夫。私は、ノーメイクでも人前に出れるわ・・・)
 それでも、口紅は薄く塗った。
 ジャージ姿に着替えて、スニーカーに足を通して、「新納流試心館(に
いろりゅうししんかん)」へ向う。

 睦が門をくぐる前から、家主・新納義彰(にいろ・よしあき)の飼犬・
タダモトが、こちらに向って吠えている。滅多に吠えることなぞないタダモ
トだから、これは睦に対する歓迎の意なのだろう。門をくぐって、
 「おはよう、タダモト。ほ~ら、ちゃんと私来たんだから、静かにして。
まわりは、まだ寝ている人だっているんだから。」
 とにかく、タダモトを静かにさせる。
 義彰はと見れば、表の間の縁側で新聞を手にしている。睦が来るのを待って
いたのだろう。
 「おはよう、むっちゃん。来たのう。タダモトも、大歓迎のようじゃの。」
 「おはよう、じいさん。まずは、庭掃除からでいいのよね。
  あっ、その前に、タダモトの朝ごはんか。」
                       (つづく)

  女の子の朝支度・・・って、いうのが、実はよくオジサン、
                     想像できません・・・・・。
  

2011年2月14日 (月)

第1章「新納流試心館」⑧

1102141s

 ふ~~、まあでもここ2,3日はよく眠れております。
 まだまだ「電気アンカ」を使用しておりますが、布団の中が
居心地のよい気温になりつつあるのかどうか・・・・?

 さてと。
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   第1章「新納流試心館」⑧
 「私じゃ、だめ?」
 睦は、義彰の方に顔を向けた。
 「なにがじゃ?」
 (じいさん、わかっているくせに~)
 「・・・・その~~、・・・・後継者よ。」
 「なんのじゃ?」
 (もうっ!)
 「だからっ、新納流の後継者っ!」
 (あっ、言っちゃった・・・・)

  ・・・・・・・・・・・・
           (なに?)
 「ハァッハァッハァッ~~」
 義彰が爆笑し始めた。
 「もう、何よ~~」
 「ハッハッハッ・・。いや~、すまん、スマン。時に、そのむっちゃん
のナイスバディ、スリーサイズはいくつじゃ?、フフフ・・・・」
 「ヤダ~~っ。私は、真剣に言ったつもりよ。」
 「あいや、またスマン。それだけ魅力的な身体には、脂肪がつくべきと
ころにしっかりついておるということじゃろ。子供の頃のようには、身体は
動かんじゃろ。・・・・いいさ。これからのむっちゃんは、持って生まれた
頭とそのナイスバディで、素敵な殿方をゲットして、素敵な嫁さんになるこ
とを目指しなされい。」
 「なに、そんな、じいさんらしくもないこと言っちゃって。『強い者が
強いのは当然。物が上から下に落ちるがごとき理は、不要』じゃなかったっけ。
それなら、私のこの!身体でも、相応に強くなれるはずじゃない。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・  
              「本当にそう思うか?」
 義彰は笑顔をしまい、一呼吸おいて、睦に訊いてきた。
 「うん。」
 睦はうなずいた。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 またまた、義彰の表情は一変。
 「そうか、そうか。フフフフッ・・・。それなら、ただ今これより、『
新納流試心館(にいろりゅうししんかん)』の新館主は、むっちゃんじゃ。
そうじゃの~、それなら館主さまはさっそく明日の朝から、館主としての
仕事をお願いしよう。
 この道場と表の間と庭の掃除。観光客に見てもらっておるんじゃ、毎日
しっかりきれいにしておかなきゃならんのじゃ。
 そして、タダモトの食事。朝夕二回じゃ。ドックフードでは、悲しむぞ。
 もちろん、タダモトの散歩。これも朝夕二回じゃ。タダモトは、散歩を
何よりも楽しみにしておるんじゃ。それにこんなジイサンのお供よりも、
むっちゃんのようなお嬢様のお供の方が、タダモトも嬉しいじゃろ。
 よろしくのう。」

  (!)

 (しもうた~っ!、私はじいさんの口車に乗せられてしまったんかい!?)

 ふいにタダモトが立ち上がって、尻尾を振りながら、睦の足に頭をすりよせ
てきた。「嬉しい」の意志表示だ。
 睦は、仕方なしにタダモトの頭をなでて、応えた。
                         (つづく)
   とりあえず第1章はおわり。次章へ、デス。

2011年2月13日 (日)

第1章「新納流試心館」⑦

 「あれっ、雨が降っているんですか~?」
 なんて言った、連休中日の店番。
 でも、帰り道にはお月様。

1102131s
 さ~~て、集中集中・・・・。
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  第1章「新納流試心館」⑦
 あるいは義彰なら「人の心を読む」ことぐらいできるのではないか、
と睦は思う。が、
 「それはウソでしょ。・・・・う~~ん、さては夕方のニュースに
私が映っていたとか・・・?」
 と否定してみせる。
 「ふふ~~ん、どうだったかの~~。じゃが、ひとつ本当のことを
教えてやろう。むっちゃん、女の色香、まさにあふれんばかりじゃ。わ
しの嗅覚なら、その香り、一里(約4キロ)先からでもかぎわけること
ができるぞ。」
 「またまた・・・。“一里先”から、なんて言ったら、結局ほとん
ど毎日、じいさんに私は居所を突き止められているって、ことじゃな
い、もう~~。それに、私なんてまだペーペーの社会人一年生よ。まだ
まだ小娘。」
 「そうじゃな。つぼみはゆっくり花開くように、むっちゃんは、ます
ますきれいになっていく・・・わしなぞ、その香りにむせ返る・・・・、
わしはそれまで生きておるかの~。」
 「じいさん、そんなこと言わないのっ!」
 「老いたる者は静かに消えるのみ。『新納流(にいろりゅう)』は、
むっちゃんの心と身体に宿り続け、名は消える。それでいいんじゃ。」
 「そんなじいさんの代で、おしまいなんて・・・・」
 「いまさら、何を言う。わしには子供がおらんこと、いまさら言うこと
じゃなかろう。それにほら、弟子なんぞ、むっちゃんが最後だわい。」
 確かに、今さら耳にしたい話ではない。
 おおざっぱに言ってしまえば、時代の変化に取り残された古武道の一小
流派が、消えようとしている。御仮屋睦は、たまたま“最後の弟子”とし
て、その消失の時に立ち会おうとしているのか。

 「私が、最後の弟子か・・・・」
 東の空に、春の朧月(おぼろづき)が出たのだろう。縁側から見上げる
夜空は、ほのかに明るい。
 睦は、その夜空を見上げながら、つぶやいた。
                         (つづく)
  なかか艶っぽい会話になりません・・・・。

2011年2月12日 (土)

第1章「新納流試心館」⑥

 雪が降り始める、という予報の11日夕方。
 12日昼、少し雪が舞いました。

1102121s
 書く気があるうちに・・・。
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 第1章「新納流試心館」⑥

 寒さを感じることもなくなった春のたそがれ時だ。空には、まだ茜色
の色調が残っているものの、武家屋敷街は闇に包まれようとしている。
 御仮屋睦(おかりや・むつみ)と新納義彰(にいろ・よしあき)は、
縁側に二人並んで座っている。灯りはろうそくが一本。睦は縁側から
脚を放り出して、ぶらぶらさせる。いつの間にやら、その足下には、
この家の飼犬・タダモトが座り込んでいる。

 「むっちゃん(睦)も、とうとうOLさんかい。早いものじゃ。
どうじゃ、新人OLの気分は?」
 「うん。今は、毎日覚えることと勉強することがいっぱいで、頭の
中真っ白、って状態かな・・・・。でも今日ね、支店で防犯訓練が
あって、私が“人質役”なるシナリオだったらしいの。でもね、いざ
犯人につかまる時、身体がつい自然に動いてしまったの・・・・。
 不思議なものよね、身体が“覚えている”っていう感覚。」
 「ふ~~ん、それで、今日はこちらにいらっしゃったわけか。」
 「そう。でも、じいさん。じいさんも、なぜ、私が来るって解って
いたのよ?」
 「はははっ。わしなら、むっちゃんの考えることなぞ、すべて見通
すことができるぞ。」
                    (つづく)
 なかなか「会話」というのも、ムズカシイ・・・・・。 

2011年2月10日 (木)

第1章「新納流試心館」⑤

 もはや夕方ではない!   の、午後4時30分。

1102101s
 勢いに乗って、(つづき)を。
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 第1章「新納流試心館」⑤

 「Don't touch me!(触るな)」
 睦は、まず反撃として、相手の足の甲めがけて、踵(かかと)を踏み
落とす。
 「NO effect(効かないな~)」
(チクショ~、土足のまま来ればよかった・・)
 次は、自分の後頭部を相手の顎(あご)めがけて、打ち付ける。
 「Good smell(いい香りじゃ)」
 相手は、ひょいひょいと顎を動かして、睦の反撃をかわしてしまう。
(ならば・・・)
 睦は、じたばた暴れるふりをしながら、縁側へ相手も引きずりながら、
出た。

 「これなら、どう!?」
 睦は相手の腕をつかんで、エイッとばかりに庭の地面めがけて跳ねた。
(さすがに、私と一緒に地面に叩きつけられるわけには、いかないわよね)
 地面まで、もちろん一秒の間もない。
 読み通り、その空中に浮かんでいるわずかな瞬間、相手はさっと睦の
身体から離れた。自分も、少しでも態勢を立て直して、着地に備えよう
としたが、
 (イタッ~!!)
 胸から地面に落ちてしまった。それでも構わず、素早く起き上がって、
構えをとる。

 「カッカッカッカッ~。むっちゃん。おっぱいがバウンドするところ、
しっかり目に焼き付かせてもらったわい。」
 女性としても小柄な方に入る睦と、背丈はさして変わらない。年齢不詳。
この老人こそ、新納流試心館(にいろりゅうししんかん)館主・新納義彰
(にいろよしあき)だ。
 義彰の“セクハラ発言”に一々目くじらを立てていたら、一日は終わっ
てしまう。
 「じいさん、天井に張り付いていたとは、私の不覚。まだ、そんな腕力
があったんだね。」
 「カカカッ~。わしは、すでに数百年を生きた仙人じゃからの・・・。
 ああ、タイトスカート姿のお嬢様に、かようなことをさせて、すまん
かったのう。その胸のあたりについた土は、ワシがはたき落としてやろう。」
 「いい、自分でする。」
 二人は、構えを解いた。なぜとはなしに、睦も顔がほころぶ。

 「どうじゃ、むっちゃん。ちょっとワシの“だいやめ(薩摩地方の方言:
晩酌の意)”に付き合ってくれんかのう。あんたの父さんには、ワシから
電話しておく。むっちゃんには、梅酒を馳走しよう。」
 鶴亀信用金庫新米職員・御仮屋睦としては、一瞬資格試験のためのテキスト
が頭をよぎったが、今夜ぐらいは、まあいいか。
 「わ~~い、梅酒か。久しぶりにいっただきま~す。」
 義彰手製の梅酒だ。実のところ睦、未成年の頃からの好物なのだ。
                         (つづく)
  とりあえず、今日はここまで、デス。
  芥川賞受賞作品が掲載されている『文藝春秋』、手にしてみなければ。

 

2011年2月 9日 (水)

第1章「新納流試心館」④

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 第1章「新納流試心館」④

 重心は後ろ足に残しながら、歩を進める。
 「かくれんぼ」には、「罠」もありだ。何気なく板に蝋(ろう)が塗られていて、
いきなりツルッと滑らされるかもしれない。逆に、ノリがベタッと足を捉えるかも
しれない。はてまた不意打ちに、後ろから吹き矢が飛んでくるかもしれない。
 慎重に。
 まずは「隠居の間」を調べよう。「隠居の間」とは、家督を子供に譲った立場の
者が寝起きしていた一室だ。今の家主は、ここだけは現代風に改装して居間として
使っている。
 開き戸を、わざと乱暴に開け放つ。

 ガッチャ~~ン、ガラン、ガラン、ガラ、ガラ、ガ・・、コ~ン

(これは予想したとおりよ)
 金たらいが上から落ちてきた。一瞬破れた静寂のスキをついて、相手が動くか
もしれない。屋内の空気のゆらめきを、読み取ろうとしてみる。
(動きはナシ、かしら)
 居間の中をとりあえず調べる。
 机の上のパソコンは、水着姿の女性が魅惑的なポーズをしている姿を映している。
(じいさん、これも、立派なセクハラになるんじゃないかな・・)

 居間を出て、再び道場に出る。「隠居の間」とは反対側の引き戸に、今度は手を
かける。引き戸の向こうは、ほぼ昔ながらの武家屋敷のつくりを保っている空間だ。
まずは、廊下。雨の日でも弓矢の練習ができるように作られた、と説明されている。
そしてご丁寧に「鴬張り(うぐいすばり)」だ。
 睦が一歩踏み込むと、几帳面に床がキュッと鳴く。
(相手には、この手は通用しないんだろうけど)
 廊下で、わざと三歩進んで二歩下がるという動きをして、わざと床を鳴かして
みる。どこかで息を潜めている相手を幻惑させるつもりだ。
 まずは、表の「応接の間」への障子に手をかける。開けたすき間から、部屋の中を
伺う。庭に面する「応接の間」は、障子が開け放たれ、薄暗さに慣れた目には、明る
く映る。
 ところがだ。睦は、かすかに人の気配を感じるように思える。
(ここかしら)

 障子を、さらに開ける。見える範囲には、人の気配はない。
 今度は素早く動く。一気に部屋の中央まで進む。

(あっ、やっぱり!)
 黒い影が上からさっと降りてきて、睦の後ろをとる。睦は動く間すらなく、
後ろから抱きすくめられてしまった。

 「ユー・ギブ・アップ?(降参する?)」
 ニヤリと黒い影が、睦に訊いてくる。
                          (つづく)
     今日は、ここまで・・・・デス。

 

2011年2月 2日 (水)

第1章「新納流試心館」③

 実のところ、頭の中での構想が壮大になり過ぎて、
  構想倒れ確実なのですが・・・・・・。

 またまた私が産み出した“愛しのヒロイン”御仮屋睦チャンに、
少しでも活きてもらわねば・・・・。
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  第1章「新納流試心館」③

 有事の際には、ひとつの城塞として活用することを目的として造成
された武家屋敷街であるが、玉石垣で囲まれたひとつひとつの武家屋敷
もまた、ひとつの砦だ。「かくれんぼ」とは、そんな造りを利用した、
文字通りの「かくれんぼ」だ。隠れているのは、この屋敷の主。鬼役
に誘われているのは、もちろん御仮屋睦(おかりや・むつみ)だ。
 どう読まれたのか?。今の睦の脳内を読み取った家主が、睦を誘って
いる。

 「御仮屋睦、参る」
 睦は、奥に向って呼ばわった。返事代わりに、確かに屋内の空気が
揺れたように思う。
(とはいってもね・・・)
 今日は、通勤用にと新調したスーツ姿。下は、タイトなスカートだ。
もっとも、それも家主からすれば「油断」なのだろう。
 仕方がない。とりあえず上着は脱いで、ブラウスの袖をまくり上げる。
 パンプスから足を抜きながら、そっと板の間に上がる。脱いだパンプス
を、かがみながら揃える。なるべく静かに動いたつもりなのだが、足裏
の板が、かすかにたわんだ。この屋敷のどこかに潜む家主には、その一枚
の板のたわみが、伝わっているはずだ。
 玄関を上がってすぐが、昔の作業場を改造した十二畳ばかりの板の間、
つまり道場だ。屋内は、すでに薄暗い。しばらく、薄暗さに目を慣らす。

 意を決して動く。
                   (つづく)
 
   わっ、ここで時間切れです・・。 
 
 

2011年1月17日 (月)

第1章「新納流試心館」②

 昨日、今日と連休を頂いております。
 しかし、シカシ・・・・・。

11011611s
  寒い・・・!
 こういう時、古ぼけた空き店舗ってのは、ひたすらに・・・。

 気を取り直して。
 わがFX挑戦。
【店頭FX】
 米ドル/円 83円12銭
      83円34銭 「売り」ポジション。
【大証FX】
 豪ドル/円 81円87銭 「買い」ポジション。

 計3万通貨保有中。

 「売り」は、じっと保有していると、それだけスワップ金利を“取られる”
わけで・・・・。今週中に、また“利益確定”のチャンスが来てくれますよ
うに・・・・・。

 さて。
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    第1章「新納流試心館」②
 21世紀の今となっても、金融機関の店舗は「午後3時閉店」が大部分だ。
 「銀行って、いいですね~。3時に仕事が終わって・・・」
 なぞというイヤミともとれる、冗談を聞かされることもあるが、3時を過ぎて
からが『勘定の締め上げ』という、一日の集計作業だ。1円の帳尻が合わないた
めに深夜まで残業・・・という話は、新米預金係の御仮屋睦も、すでに何度も聞
かされている。
 
 今日は、午後3時過ぎから防犯訓練があったため、その『勘定の締め上げ』作業
は忙しさを増したが、新米である睦は、午後6時前には帰宅を許された。

(といっても、
 「しっかり検定試験の勉強をするのが、睦ちゃんの仕事だからね」
 と釘を刺されているわけだが)

 マイカー全盛の地方都市であるが、今のところ睦は徒歩通勤をするつもりだ。
 道すがら、ふいと睦は考えてしまう。
 「もし本当に、相手が拳銃を持っていたら・・・」
 「犯人が複数だったら・・・・」
 まったく女の子らしからぬ考えが、頭をよぎる。

 ふいと、家に帰る前に、寄り道をすることにした。
 行き先は「新納流試心館(にいろりゅう・ししんかん)」。

 戦国時代、薩摩大隅地方を支配した島津氏が領国支配の要として設けたのが
「外城制度(とじょうせいど)」といわれる。領国内各地に、普段は武士団が
居住し、有事の際には城砦に一変する武家屋敷街を整備した。
 睦が住む紫尾市にも、「麓(ふもと)」と呼ばれる武家屋敷街が、今も現存
する。地元の人間に言わせれば「(観光地として名高い)知覧の武家屋敷街より
も、立派だ。だけれでも、観光資源として活かしきれていない」そうだ。

 そんな武家屋敷街であるが、観光地にもなりきれず、新建材で建てられた一戸
建て住宅、アパートが混在する、現在は閑静な住宅街だ。
 「新納流試心館」は、その中の一角、昔ながらの武家造りを今に伝える一軒に、
古びた看板を掲げている。
 睦は門をくぐって、玄関の前に立つ。普段なら睦の姿を見れば、大喜びでじゃ
れついてくる、この家の飼い犬・タダモトは、どうしたのだろう・・・、今日は
神妙な面持ちで、玄関の方に目配せをしてみせている。
 なに?と、玄関の中を見てみれば、一本のろうそくが点されている。

 『かくれんぼ』の合図だ。        (つづく)

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