第五章「御仮屋書店にて」⑬
台風が通り過ぎた日(まあ、出水には接近しませんでしたが)。
日曜の日没時。
・・・・・・「仕事行きたくな~~い」・・・・・。
と、しみじみ思う自分がおり。
って!、グチはこのくらいにして。
せめて、愛しのヒロイン・むっちゃんには、明るく活躍して
もらいましょう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
第五章「御仮屋書店にて」⑬
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)
「いけっ」
坂道は、ボールを放った。さすが「挑戦します」と言っただけのことはある。
ボールは上手い具合に、店の奥へと進んでいく。微妙に斜めに進んでいくのは、
角で方向転換をさせることを計算したのだろう。
(第一関門は、上手く突破するかしら・・・)
と思ったが、残念。ボールは奥の角で何度も壁と棚にぶつかって、停まって
しまった。
「ちっ!」
坂道が舌打ちする。
「あ、あの~、何回でも挑戦していいんですよね?」
「どうぞ、どうぞ。どうせ、お客さんも少ないから。坂道君が、気の済むま
でいいよ」
「よ~~し、オレ、あきらめませんからね。本当に成功したら、む、む、睦
さん・・・・って、呼んでいいでしょうか・・・?」
「どうぞ」
「睦さん、自分に英語教えてくれるんですね?」
「もちろん。英検準一級は難しいとしても、ちゃ~んと二級くらいは合格で
きるよう教えてあげる」
「押忍っ!」
再び、坂道は
「ボールよ。今度はせめて第一コーナーは曲がれ、頼む!」
ボールに念じる。再度の挑戦。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
坂道は、確かにあきらめない。それが「睦さんに英語を教えてもらう」という
目標があるから、と思うと睦は、やっぱり照れ臭い。だが、坂道は睦と同じように
“負けず嫌い”でもあるのだ。そんな“年下の男の子”坂道聡が、睦には微笑まし
い。
ふと、二階から階段を下りてくる足音がした。
「あっ、瞬」
ボール転がしに夢中になっている坂道が、気づいて声を出す。何気なく下りてき
たふりをしているが、姉・睦と友人・坂道聡の展開が気になって仕方がなかったの
だろう。睦の弟・御仮屋瞬(おかりや・しゅん)だ。
「おう、聡」
弟は、これまでの展開を読み取ろうとするように、しばらく黙っていたが、
「な~んだ、すっかり姉ちゃんに気に入られちゃったじゃん」
と結論づけた。
(つづく)
最近のコメント