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2011年8月26日 (金)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑱

 (おっ、きれいな夕焼け!)
 と思っているときにかぎって、お客さんは多く・・・。

 刻々と変わる空の色合いを横目に。
 ようやく、ひとっ走り、外へ出ることが出来ました。

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 日中、嫌な夢を見てしまい・・・。

 さ、嫌な夢を見てしまった不快感を、吹き飛ばすためにも。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑱
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 慎三郎は、鹿児島に伝わる「示現流」ではなく、あくまで我流というつもり
なのだろう。木刀を振り下ろすだけでなく、横に薙ぎ払う、あるいは振り下ろ
した木刀を、ブン!と下から振り上げる動作を披露してくれる。
 そのたびに、木刀が空を斬る音が、ブン!と響く。
 「こりゃあ、もう『野太刀(のだち)』じゃの」
 じいさんが、つぶやく。

 やがて、かなりの汗が噴出し始めた慎三郎が、一礼して、素振りを終えた。
 睦がすかさず拍手をする。周囲の者も、後に続いてくれた。
 「やっぱり、昼の太陽が出ている時にすると、汗が出てくるのも早い」
 慎三郎が、感想をもらす。その表情は、かなり満足そうだ。

 「ねえ、慎三郎さん、今日は私たちの“お見合い”よね。ここは、私たち
らしく、お手合わせ、しない?」
 睦は、提案した。
 「お手合わせ、って・・?」
 「立ち合いよ。私と試合しない?」
 慎三郎は、ぎょっとしたのだろう、睦の顔をまじまじと見つめ返してきた。
 「怖くないのか・・・・」
 「ははっ。まさか、まさか。そんな木刀を相手にしたら、私なんて、一発
で地面にめりこんじゃうわ」
 睦は、後ろを振り向いた。
 「聡くん、ごめん。道場の中へ行って、その棒と同じ長さだけれど、ひと回り
細い棒と、竹刀、持ってきてくれない?」
 高校生のボーイフレンド・坂道に頼んだ。
 「ここ、古武道の道場だから、各種武具、取り揃えてございま~す、ってね」

  やがて、ひと回り細い棒と竹刀が、睦の手元に届いた。
 「どう?、これなら、怖くないでしょ」
 睦は、竹刀を慎三郎に差し出した。
                          (つづく)

2011年8月25日 (木)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑰

 とかなんとか、マイブーム(?)と化しております、「おでんラーメン」。

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 昨夜は、具に「味付け玉子」「さつま揚げ」「豚なん骨」を。

 ああ、本日は世間様では「給料日」。
 コンビニ、忙しいのやら。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑰
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 「あっ!、でも・・・。人前は、苦手?」
 そうだった。相手は、“引きこもり”というデリケートな人種なのだ。
 「バカにしないでくれ。昔は、マイクを持って人前でしゃべるのが、仕事
だった」
 どうも慎三郎は、睦に対抗心を抱いたらしい。
 (うふっ。ちょっといい傾向かしら・・・・)

 観光スポットでもある、試心館に居合わせた観光客も、「はい、次の目的地へ」
とならずに、次の成り行きを見守っている。

 慎三郎は、緊張をほぐすように、手にした木刀を、片手で振ってみせた。
 「きゃっ!、すごい腕力・・・」
 睦は、つい声が出てしまった。その木刀は、柄こそ握りやすい太さになって
いるが、それ以外は丸太のように太いのだ。慎三郎の、さりげない力の誇示だ。

 「それでは、軽く素振りでも」
 慎三郎は、木刀を振り上げて『八双の構え』をとった。『示現流』のつもり
だろうか。“引きこもり”と言っている以上、誰かの下に師事しているわけで
はないはずだ。たぶん、ネット上をあれこれ調べて真似をした我流なのだろう
が、その構えは、木刀の重さにも負けず、結構サマになっている。

 「きえっ~~~!」
 大きな気合とともに、木刀が振り下ろされる。
  ブ~~~ンッ
 空を斬る木刀が、迫力満点にうなり音を出す。
 そして、ピタッと地面すれすれで止められた。

 (なかなか強敵・・・)
                       (つづく)

2011年8月24日 (水)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑯

 ファミリーマート、今週の新発売商品。
 「おでんらーめん」(一玉120円。具のトッピングは、ご自由に)

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 う~~~ん、これなら、カップラーメンの方が・・・・。

 さ、愛しのヒロイン・むっちゃんに活躍して頂くべく。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑯
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 「こらっ、慎三郎。御仮屋さんに、失礼じゃない。お辞儀くらい、きちんと
しなさいよ~」
 「いいんだ、おふくろ。オレが、リアルな女は嫌いなこと、知っているだろ」
 そんな親子の会話が、睦の耳にも届く。

 仕方がない。
 「聡くん、ちょっと、この棒、持っててね」
 棒を坂道に預けると、二人のそばへと歩み寄った。
 「おはようございます。私が、御仮屋睦です。平手慎三郎(ひらで・しんざぶろ
う)さん、ですよね。はじめまして。あの、その姿は・・・、剣道をやっていら
っしゃるんでしょうか?」
 「そうなの、そうなの・・。実は、私が御仮屋さんに隠していたの。慎三郎は、
庭に巻藁(まきわら)を立てて、夜中に何時間も、木刀で叩いているのよ~~。
ちょっと怖いくらい・・・・。でも、私だって、御仮屋さんに、本当に慎三郎の
こと、気に入って欲しいな~って気持もあるの、母親だもん。どう?外見だけ
なら、ちょっと青年剣士でしょ」
 タツばあさんが、ここぞとばかりに説明してくれる。

 ・・・・が、当の慎三郎はというと。
 睦を前にして、みるみる顔が紅潮し始めている。
 「おっ、おまえ、女っ臭えな・・・・・」
 確かに、一運動した後の睦からは、それだけ激しく芳香が湧き上がっている。
 「ほ~~、むっちゃんの香りが、わかるか・・・」
 じいさんが、感心する。
 当の慎三郎は、顔面の紅潮を、なんとか取り繕うとしているらしい。
 二,三咳払いをした後、
 「ご、誤解するな。顔が赤くなったのは、あんたに会ったからじゃない。
普段、若い女を見る機会がないから、身体が勝手に反応しているだけだ。単なる
“生理現象”って、やつだ」
 言い訳にならない、言い訳をする。
 (あらあら・・・・・。ふ~~ん、やっぱり、ここは私が、積極的にリード
しちゃって、いいのかしらね・・・・)
 「そう、大変・・・。話は、あとにしましょう。その頭にのぼっちゃった血を
戻すためにも、せっかく愛用の木刀を持っていらっしゃたようだから、私たち
に、あなたの剣の腕を見せてくれないかしら」
 慎三郎は、二十代後半か三十代前半といったところか。二十の睦に、にわか
にタメ口にされて、ちょっとびっくりしたようだが、ろくな挨拶をしなかった
慎三郎に非がある。気にしないふりをするつもりのようだ。
 
 「・・・・・わかった。いいとも」
 慎三郎が応じた。
                         (つづく) 

2011年8月22日 (月)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑮

  秋雨の夜。
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 う~~~ん、でも、これって、

  天からの、せめてもの“慈悲”?
(結局、『電力不足』という事態は回避されたような・・・)

 いやいや!。

 でも、これからは『コメ不足』の危機が報じられるようになる
ノデショウカ・・・・・・。

 笑いたい方は、どうぞ私を笑ってくださいませ。

 私が、できること。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑮
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 漆黒に染められた剣道着姿で現われた、その男性こそ、確かにタツばあさん
が睦に紹介しようとしている、息子・平手慎三郎(ひらで・しんざぶろう)で
あるのだろうが。

 それにしても・・・・。

 睦が持つ“引きこもり”のイメージは、『日照不足で色白、運動不足でブクブ
クに太った肥満体』なのだが。
 現われた男性は、たしかに色白で、この初夏といってもよい太陽の陽射しに、
目をショボショボさせているのだが、その体形は、剣道着の上からでも、きちっ
と均整がとれているのが、見て取れる。おまけに、右手にはどうにも重たそうな
“素振り用木刀(?)”を手にしている。

 (えっ!?)
 と思ったものの、今は睦自身、技を披露している最中だ。
 頭上で回していた棒を、
 「ヤッ!!」
 という気合とともに、打ち下ろして、地面スレスレで止めた。

 再び、棒を背中に隠すようにして、一礼。
 拍手がおこる。「ワンッ!」という吠え声は、タダモト。

 「ふ~~ん、無骨な新納流に、むっちゃんは色っぽさを加えてくれたの・・・」
 とは、じいさんだ。

 そして、
 「素敵!、御仮屋さん、素敵よ。
 ちょっと遅れちゃって、ごめんなさい。これが、私の息子・慎三郎」
 と紹介してきたのは、もちろん、タツばあさん。
 睦は、タツばあさんとその息子という二人に、改めてさっと礼をしたのだが、
その息子とやらは、かるく顎を動かしてみせただけだった。
                           (つづく)
 

第八章「新米館主、お見合いする?」⑭

 連休の時間は、あっさり終わり・・・・・。
 さっ、夕方からまた、「いらっしゃいませ~!」漬けの日々。

1108221s
 ふと、「炊きたての白いご飯、食べたい~~!!!!」という
衝撃に駆られたものの、わが家の電気炊飯器は、すでに何年も
放置状態・・・。う~~ん、使えるんだろうか??・・・・・
という疑問の前に、結局「だいわ」のお惣菜売場のお世話に。

 そんなこんなの連休でありました・・・。

 で、小説書きの方は、捗らず・・・。
 けれども、
FC2小説ー恋愛からミステリーまで無料ネット小説
小説家になろう

 で、他の方の作品を、真剣に(!)拝読させて頂いたつもりですが・・・。

 う~~~ん、結論としては、

 無料(ただ)ほど、安いものはない!

 1ページ目を読んで、「な~んだ、つまらない」であれば、その場で、ポイ!

 読み続けてくださる読者の方を「一人つくる」。

 その険しさを、実感します。

 さ。
 それでも、愛しのヒロイン・むっちゃんであります。
 当然のことながら、オジサン作者としては、「胸の躍動感」を描写したくなる
のですが、・・・・・その前に、あったぞ!!!!
 “女性の美”を表すものとして、「髪」があるじゃないか~~!!!!!
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑭
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 御仮屋睦の自慢のひとつ、腰まで伸びた黒髪は、睦のお気に入りの髪型・
ポニーテールに、今日もまとめている。(アップにしてみようかな・・)と
思ったのだが、結局いつも通り。それでも、今日はえんじ色のシュシュを加えて、
おしゃれをしてみたつもりだ。
 その長い黒髪が、睦の動きに合わせて、
  パン、パン、パン
 と、小気味よく背中を打つ。睦がターンをすれば、黒髪は三日月となって、空
を斬る。

 そして・・・・・・

 (いやん。私、まだ、おっぱいって、成長中なのね・・・・)

 考えた挙句、今日はストラップレスのブラジャーを着けてきたのだが、それは
失敗だった。睦の胸は、ここぞ!とばかりに暴れまくる。ワンピースの布地すら
突き破るつもりだ。

 (もう・・・・)

 そんなこんなで、実は悪戦苦闘中の睦であったが、門をくぐってきた人影に、
すぐ気づいた。
 一人は、“タツばあさん”こと・平手達子。そして、・・・・・

 (えっ??!!!・・・・、あの“引きこもり”って、いう???)
                            (つづく)

2011年8月19日 (金)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑬

 お隣の学習塾の「夏期講習」も、お盆休みが終わって、再開。

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 学生たちの夏休みも、あと2週間たらず。

 ふ~~~。私も、今夜をしのげば、「連休」。
 まあ、でも、立ち尽くめでむくんだ足を治すため、寝るが一番!
                     ・・・・・となりそう・・・。

 あっ、パソコンの前で小説書き、というのも、まあ足への負担は軽いでしょうか。

 さ、今日の分。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑬
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)
 「ほっ」
 再び発した気合とともに、さっと棒を前に振り出す。そのまま左手も添えて、
身体の前で、棒を回し始める。
 (うふ、身体は覚えているものね・・・)

 棒の扱いは、睦が小さい頃から、じいさんの下で学んできた技のひとつだ。
習熟度、身体の成長度に応じて、棒の長さ・太さを替えておこなってきた。そ
して、じいさんこと新納義彰の人柄なのだろう、『鍛錬』としてではなく、睦と
『遊ぶ』姿勢で教えてきてくれたものだ。

 (さ、失敗しませんように)
 身体の前だけでなく、右側、左側で。そして、両手を差し上げて、頭上で。
くるっと身体をターンさせながら。さらには、ぐっと左足に体重をかけた後屈
姿勢で。棒が風を斬る音が、耳に心地よい。

 その睦の姿は、見る者に、力強さと同時に美しさを魅せる。小柄な睦が、ひと
きわ大きく見える。また動きとともに、ふわりとひるがえるワンピースの裾から、
時おりのぞく脚線が、美しさを添える。
                         (つづく)
      動作の描写も、またムズカシイ・・・・・。

2011年8月17日 (水)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑫

 ここ数日の雨続きで、川の流れもぐっと勢いが増し。

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 立ちっ放し、というのは、やっぱりシンドイ・・・・。

 さ、がんばるぞ~~!!
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑫
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
    「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 「そうでしょ。でも、聡くんなら、棒回しくらい、すぐ出来そうだけれど、
この棒、ちょっと持ってみて」 
 睦は、棒を坂道に持たせた。
 「あっ。意外に重いですね」
 棒が、人の手を渡って、それぞれが手にしてみる。

 再び棒を手にした睦は、
 「さあ。それでは、小さい頃から、じいさん・・・・って、あっ、やっぱり
『じいさん』って、呼ぶね・・・・、新納さんことじいさんと、“遊んで”き
た私が、“棒回し”をしてみますね」
 「ちょっと待ってください!。まさか、その格好でするんじゃないですよね!?」
 と声を出したのは、桐嶋だ。
 「はは、だめですか。ちょっとコスプレみたいかな・・・」
 「待った、待った!。ここは、しっかり撮らなければいけません。レフ板を用意
します。新納さん、坂道くん、ちょっとお手伝いをお願いします・・・・」
 たちまち、レフ板によって睦が明るく照らされる状態となった。
 「あの・・・、私も写真を撮っていいですか?」
 という声をきっかけに、観光で訪れた者も、デジカメ・携帯電話等それぞれ持ち
構えた。

 「すごく、緊張してしまいます。失敗しても、そこはご愛嬌、ということで、
許してくださいね。さすがに私では、片手でこの棒を扱えないので、両手を使っ
ての“棒回し”を、見ていただきます」
 睦は、一礼する。そして、
 「はっ」
 と、一声気合をいれて、まず右手で持った棒を背中に隠す構えをとる。
(やっぱりハイヒールを脱いで、裸足になればよかったかな・・・・)
                             (つづく)
 

2011年8月16日 (火)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑪

 深夜の大雨。

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 そうそう、書いておきたかったことがあります。
 先日、出水では有名人、今では観光名所の『東雲あじさい園』を、独り
黙々と開墾したという逸話の持ち主・Mさんが、コンビニに来店してく
ださりました。
 そして、
 「仕事ばっかじゃ、いっげ~(一気に)、老けっど(老けるぞ)」
 と。

 なんとかしたい・・・・・・。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑪
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
  「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 そんな睦の杞憂を知ってか知らずか、じいさんが
 「むっちゃん、今タダモトに新納流鍛錬法のひとつ、『屋敷回り』をやって
もらったところじゃ。
 どうじゃ、むっちゃんも、なにかひとつ、披露してはいかがかな」
 と、提案してきた。観光客の面々はもちろん、坂道、桐嶋もそれを期待して
いるのだろう。
 (その時のことは、その時。
  ここは、まず楽しんでもらおう)
 「そうね。う~~ん、なにをお見せしましょうか・・・。今日は、こんな格
好ですし・・・。そうだ!。皆さん、少々お待ち願いますね」
 と言って、睦はいったん道場に入った。壁には、各種の武具が掛けられている
が、その中から、長さ一間(約1.8メートル)の木の棒を選んだ。いわゆる『棒術』
で使うためのものだ。
 皆の前に戻ってきた睦は、
 「さて、皆さん、『棒術』って、聞いたことありますよね。鹿児島県内では、
『棒踊り』という伝統芸能として、伝わっているところも多いですよね。棒とい
う、比較的身近にさっと武器の代わりになるものを使った武芸として、昔は結構
広く伝わっていたようです」
 とおおまかな解説を加え、
 「そこで、この棒。身長は百五十センチほどの私が持つと、とっても長く見
えてしまいますが、だいたいこれが標準の長さとされています。ただし、この
棒は、斬り込んできた刀を受けても、すぐ折れてしまわないよう、やや太めです。
ほら、私ぐらいの手では、正直ちょっと扱いづらいんです」
 と、睦の身体とその棒を比較するように、説明した。

 「さ、『棒術』といえば、皆さん、どんな動きが思い浮かびますか?」
 ここで睦は、聞き手に質問した。
 「あっ、棒をぐるぐる回すやつ!」
 坂道が、さっと反応した。
                           (つづく)

2011年8月15日 (月)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑩

 夕日のなごり。

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 今日は雨。晩夏へと。

 さあ、週のはじめ、気合を入れるためにも。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑩
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、
  「新米館主・御仮屋睦」の目次ーFC2小説
                       を是非に。m(__)m)

 カップルでドライブ・デートの最中に立ち寄ってくれたのだろう、男の方が、
 「かわいい~~」
 という感想を口から洩らしてしまい、隣の彼女から肘打ちを喰らうのを、睦
は目撃してしまった。
 「テレビで拝見しました。ホント、小さくて、おきれいで、自分の娘にしたい
感じだわ~」
 という褒め言葉をくれたのは、仲のよさそうな熟年夫婦。
 
 そして、と言うべきか、人垣は観光客ばかりでない。
 「おっ、聡君、おはよう」
 睦の“高校生のボーイフレンド”、坂道聡の姿があった。
 「睦さん、おはようございます。新納さんが、呼んでくださりました」
 「むっちゃんの友達ということは、わしの友達でもあるからな・・・・」
 と、しれっとじいさんが付け加えた。
 
 そして、こちらは、やっぱり、と言うべきだろう、
 じっと睦の姿を、ビデオカメラで追い続けているのは、紫尾写真館の若
ダンナこと、桐嶋誠治だ。
 「御仮屋さん、いいっすよ。今日のファッション、極まってます」
 
 残念ながら、警察官の大山隆志は、今日は勤務中のようだ。

 とはいえ、今日は本当は「お見合い」なのだ。表の間の縁側にでも座って、
相手とゆっくり話をしようという目論みは、無理なようだ。
                          (つづく)

2011年8月13日 (土)

第八章「新米館主、お見合いする?」⑨

 真夏の快晴。

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 他の方は、どう思われるでしょうか。真夏の空って、「入道雲が湧いて」と
いうイメージが強いのでは?。

 さて、今日は、いささかなりともの意地を。
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         第八章「新米館主、お見合いする?」⑨
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 実は、8センチのハイヒールは朝の通勤用になっている。そして、きれいに
見える歩き方、はてまた走り方を、考えながら歩を進めている。今日は「お見
合い」だ。相手と試心館の敷地内をぶらぶらする時に、その研究の成果が発揮
されるはずだ。

 さて、改めて“じいさん”こと新納義彰の屋敷、つまり「新納流試心館」へ
着いてみると、いつもはひっそりとしているところが、今日はなにやらにぎやか
だ。
 (なにかしら?)
 疑問に思いながら、門をくぐってみると、
 (ああ、もうGWなのね・・・・)
 ドライブがてらに、武家屋敷街見物にやってきたのだろう、観光客らしい
者が八人ほど、小さな人だかりを作っている。その人だかりの注目する先は、
この屋敷の飼犬・タダモトだ。
 タダモトは、くるっくるっと小さく円を描いて勢いをつけると、さっと屋敷の
壁に飛びついて、一気に駆け登った。屋根瓦の上を、トントン・・と走って、向
こう側で飛び降りたようだ。しばらくすると、今度は縁側の下から、タダモトが
姿を現した。床下をくぐり抜けてきたのだ。
 「ワンッ!」
 一声、自慢げに吠えたタダモトは、いち早く睦の姿を見つけ、駆け寄ってきた。
そして、いつもの立ち上がっての歓迎だ。睦も、前足を受け止めてあげる。

 「おおっ、皆さん、今日は運がいいですぞ~。
  あれこそは、ここ新納流試心館の新館主、
             むっちゃんこと、御仮屋睦さんじゃ」
 じいさんが、素早く解説を加えた。皆の視線が、一斉に睦に集まった。
 「あは・・・、照れてしまいます・・・・・。
   皆さん、ようこそ、いらっしゃってくださりました」
  照れながらも、なんとか睦は挨拶した。
                           (つづく)
                 

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