第六章「ハイヒール、やめた」⑨
梅雨の合間の、真夏の空。
う~~ん、当たり前ですが、暑いッ!!。
ですが、このくらいの暑さなら、まだまだ快適に過ごせるレベル?
緯度の高いヨーロッパでは、今の夏至付近の時期が、一年で一番快適に
過ごせる季節なのだとか。
さ、扇風機の風に励まされながら。
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第六章「ハイヒール、やめた」⑨
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不思議なものだ。タツばあさんは相変わらず動転しきった表情ながら、その
小雪の一声に操られるように、ドアのロックを解除した。
「ごめんなさいませ」
小雪は素早くドアを開けると、そのスラリとした長身を活かして、車内へ上半
身を伸ばした。ギアを「パーキング」にし、続いてキーを回して、エンジンを切
る。最後は、サイドブレーキをグイッと引いた。完璧だ。
それを見届けた、車のボンネットの前にいた二人は、へなへなとその場にしゃ
がみこんだ。
「よかった・・・」
「ね、主婦のバカ力よ・・・」
この期に及んでも、茜はなおも冗談を言おうとしている。
車を停めた小雪も、実は相当緊張していたのだろう。三歩、しゃがみ込んでい
る二人に歩み寄ってきたと思うと、同じようにしゃがみこんでしまった。
「ふふふ・・・。ねえ、御仮屋さん。館主として、あなた、大不覚よ。さっき、
カウンターの上で倒れたとき、あなたしっかり男性陣に、今日のピンク色のパンツ、
ご披露しちゃっていたわ。まあ、私も女のくせに、ドキッとさせてもらっちゃんだ
けどさ・・・・」
「えええっ!」
もう、チビだっていいのさ。ハイヒール、やめた。
身軽なのが、私の身上だ。ちょこまか動いて、ここ(紫尾支店)で、少しでも
役に立とう。
早速、ハイヒールなんて脱ぎ捨てて、今日は通勤用に履いてきたスニーカーに、
履き替えよう。そして、ロビーに飛び散ったガラスの破片を履き集めるのが、私の
仕事だろう。
(第六章、了
まだまだ、つづく、です)
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