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2011年6月23日 (木)

第六章「ハイヒール、やめた」⑨

 梅雨の合間の、真夏の空。

1106231s
 う~~ん、当たり前ですが、暑いッ!!。
 ですが、このくらいの暑さなら、まだまだ快適に過ごせるレベル?
 緯度の高いヨーロッパでは、今の夏至付近の時期が、一年で一番快適に
過ごせる季節なのだとか。

 さ、扇風機の風に励まされながら。
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         第六章「ハイヒール、やめた」⑨
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 不思議なものだ。タツばあさんは相変わらず動転しきった表情ながら、その
小雪の一声に操られるように、ドアのロックを解除した。
 「ごめんなさいませ」
 小雪は素早くドアを開けると、そのスラリとした長身を活かして、車内へ上半
身を伸ばした。ギアを「パーキング」にし、続いてキーを回して、エンジンを切
る。最後は、サイドブレーキをグイッと引いた。完璧だ。
 それを見届けた、車のボンネットの前にいた二人は、へなへなとその場にしゃ
がみこんだ。 
 「よかった・・・」
 「ね、主婦のバカ力よ・・・」
 この期に及んでも、茜はなおも冗談を言おうとしている。
 車を停めた小雪も、実は相当緊張していたのだろう。三歩、しゃがみ込んでい
る二人に歩み寄ってきたと思うと、同じようにしゃがみこんでしまった。
 「ふふふ・・・。ねえ、御仮屋さん。館主として、あなた、大不覚よ。さっき、
カウンターの上で倒れたとき、あなたしっかり男性陣に、今日のピンク色のパンツ、
ご披露しちゃっていたわ。まあ、私も女のくせに、ドキッとさせてもらっちゃんだ
けどさ・・・・」

 「えええっ!」

 もう、チビだっていいのさ。ハイヒール、やめた。
 身軽なのが、私の身上だ。ちょこまか動いて、ここ(紫尾支店)で、少しでも
役に立とう。
 早速、ハイヒールなんて脱ぎ捨てて、今日は通勤用に履いてきたスニーカーに、
履き替えよう。そして、ロビーに飛び散ったガラスの破片を履き集めるのが、私の
仕事だろう。
                    (第六章、了
                      まだまだ、つづく、です)

2011年6月22日 (水)

第六章「ハイヒール、やめた」⑧

 雨の夜の帰り道Part2。
 ふ~~、帰りついた・・・と思う時。

1106221s

 さて。今日22日が、私の4○歳の誕生日。
 以前なら、この時期は毎年毎年“婚活、婚活!”と騒いでおったの
ですが、さすがに「・・・・・・・」の境地。
 が。恥ずかしながら、悩まされるのは“性欲”。
 むしろ、二十代・三十代の頃より悩まされる頻度は高まったような・・・
(綾瀬はるかサマ~~萌え!なんて、している自分って・・・・)

 そう。己の煩悩との格闘から、生まれいずるのが、
               愛しのヒロイン・むっちゃんナリ。
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       第六章「ハイヒール、やめた」⑧
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 (んん、も~~っ!)
 ハイヒールのおかげで、自分がいかにもアヒルのように“お尻フリフリ”状態
で走っていることを意識してしまったが、それは、即座に振り払った。
 軽乗用車のボンネットの前で立ち止まり、改めて運転席を見てみれば、それは
タツばあさんだった。先刻、睦の前に立ちはだかっていた時の得意満面の表情か
ら一転、目は完全に焦点を失い、口は半開き状態だ。恐らく、駐車している車を
発進させようとした際、「バック」と「ドライブ」を入れ間違えたのだろう。ア
クセルを踏み込んだ足がとっさに縮んで、エンジンが吹かされたのは一瞬だった
からまだよかったものの、動転してしまっているタツばあさんが、またアクセル
を踏み込んでしまう危険がある。
 (落ち着いてもらわなきゃ)
 そう思った時、ボンネットの前に立つ睦の横に、もう一人並んだ。
 「ふふ~~ん、一度、カウンターを跳び越えるのって、やってみたかったのよね」
 見れば茜だ。睦が席から飛び出していった後を、即座に追いかけてきたのだ。実は、
睦よりも、はるかにスマートに格好よく“カウンター越え”を茜が披露したのを、睦
は当然知らない。
 「茜さん!危ないから、どいててくださいッ!!」
 睦は思わず叫んだが、茜をまったく意に介さず、ボンネットに手をついて、腰を
ぐっと落とした。
 「なんの。いい、主婦のバカ力を見せてあげる。私が車を抑えているから、睦ちゃん、
あなたが、タツばあさんを落ち着かせてあげてっ!」
 どこまでが本気なのか、冗談なのか。
 「もう~~っ」
 睦は困ったが、一刻の猶予もない。
 ぐっと車相手に力を込めている茜を横に、睦は運転席のタツばあさんに、必死にな
って作った笑顔を向けた。
 「いいですか、タツばあさん。まずは落ち着いて。そう、最初は深呼吸一回ッ!」
 タツばあさんに見えるよう、睦は自分も大きく深呼吸をしてみせた。

 その時、もう一人の人物が、車に近づいてきた。
 “カウンター越え”なぞというお下品なことをせず、きっちり回り込んでロビーに
出てきたのは、小雪だ。慌てず騒がず、それでもきちっと急ぎ足で。そして、運転席の
横で中腰になると、凛とした表情で、
 「平手さん。まずは、ドアを開けてください」
 と、車内に呼びかけた。
                            (つづく)

2011年6月21日 (火)

第六章「ハイヒール、やめた」⑦

 雨の夜の帰り道。

1106212s
 月曜夕方の定番コース。TSUTAYA出水本町店⇒だいわ。
 う~~ん、だいわのレジ係の人に「月曜夕方だけ出没するオジサン」として、
顔を覚えられてしまっているんじゃないかな・・・・・。

1106211s
 で、TSYTAYAでの買物。
 やっと免許証用の写真を撮影。これで、あとは警察署の足を運ぶだけ・・・・。
(それが面倒なのですが)
 思わず買ってしまったのは「ちょんまげぷりん」「ちょんまげぷりん2」
(荒木源著:小学館文庫)。
     ・映画『ちょんまげぷりん』
 がとても気になっていてので、つい原作を手に。
 今の自分には、思わず一晩で二冊とも読めてしまうような軽快な作品が、やっ
ぱりイイナァ・・・。

  さて、またまた一週間の始まり、ということで。
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       第六章「ハイヒール、やめた」⑦
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 結局、“タツばあさん”こと平手達子(ひらて・たつこ)は、睦が苦心して
“背丈を伸ばした”ことには一切触れず、意気揚々引き上げていった。
 地元スーパーから入金された売上金の勘定に奮闘していた、隣席の茜が手を
休めて、声を掛けようとしてくれるのを、睦はニコッと笑って、
 (いいんですよ)
 と首を振って制した。
 タツばあさんならずとも、「お金の扱いは、やっぱり金融機関で」という
主義の人、ことにお年寄りには多い。そして、タツばあさんが来る日は、窓口
には同じようなお年寄りのお客様が多い。タツばあさんの“口撃”に付き合った
時間のロスを取り戻さなければならない。たとえ、それがペーペーの新米の睦
であっても、最大限の努力はしたい。
 睦は、席に着く前に、手元に預かっている公共料金収納票に目を落とした。
 (他のお客様も、大事なお客様よね)
 自分に、改めて言い聞かせた。

 ふと、

 その時、

 ガッシャ~~ン!!!

 という乾いた大音響が、店内に響いた。

 はっと顔を上げた睦は、一台の軽乗用車がATMコーナー横のガラスを突き破っ
てくるのを目にした。幸いATMを利用している者は、いなかった。
 そして、床に飛び散るガラスが、また乾いた音をたてる。
 信じられない光景を目にした時、なにが起こったのか、それを理解するのに
時間を要する。さらには、自分がどう行動すればよいのか判断するには、さらに
時間を要する。
 また幸いなことに、クルマは、後輪がブロック一個分の段差に引っかかって、
とりあえず停まった。
 睦は必死に、起こった状況を理解しようとした。
(クルマが店内に突っ込んできた。とりあえず停まっているが、まだエンジンは
かかっている。ロビーには、お客様がいる。)
 睦はとっさにカウンターを跳び越えることにした。ひらり、と跳び越えてみせ
るつもりだったが、足がカウンターの縁に引っかかってしまった。
 
 バァ~~ン
 かなり格好悪く、睦はカウンターに叩きつけられた。原因は、8センチのハイ
ヒールだ。
 (なんの!)
 睦は泳ぐようにしてカウンターの上を這って、ロビーの側に降りた。そして、
車の方へ走った。
                          (つづく) 
  

2011年6月19日 (日)

第六章「ハイヒール、やめた」⑥

 他の方から見れば、「神経質過ぎる」と思われるかもしれませんが、
川の水位が、どうにも気になり・・・・・。
 今のところ、水位は低下しているように思うので、心配しないように
します。

1106191s
 ふ~~~。日曜日のため息。もう少しの気力・・・・。

 さ。
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       第六章「ハイヒール、やめた」⑥
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 「古武道」なぞと紹介されてしまうと、大方の人は、大男ですら一発で吹っ飛
ばしてしまう“秘技”があると思いたくなるようだが、それはせいぜいが漫画の
世界での出来事だ。身長150センチそこそこの睦を前にした時、大多数の者は「
強いのか?」なぞという質問は、ぐっと呑み込む。
 そういう意味では、さすが、タツばあさん、と言うべきなのか。

 「はい、弱いです。まだまだ修行中の身なので・・・・」
 睦は、正直に答えた。タツばあさんは、勢いを増す。
 「そうよね。あなたみたいな小娘が、強いわけないわよね。ふ~~ん、だけ
ど、なんであなたが、そのナントカ流の後継者になれたわけ?」
 「それは、ちょっといろいろ・・・・」
 窓口での世間話にしては、長くなってしまう。睦は、口ごもった。それは、
ますますタツばあさんの“口撃”を、強めてしまう。
 「ふ~~ん、さては、得意技は“忍法・色仕掛け”って、やつ?。変わり者
で、後継者もいない独り暮らしの年寄りに近づいて、色仕掛けで取り入って・
・・・って。そうよね、きっとそうよね」
 睦は、“じいさん”こと新納義彰(にいろ・よしあき)の顔を思い浮かべた。
傍から見れば、確かにそういう風にしか見えないのだろうが、ここは“じいさん”
の名誉がかかっている。
 「ちがいます」
 きっぱり否定した。ところが、
 「あ~ら、あ~ら、ムキになっちゃって・・・。近頃の小娘は、ホント、頭は
悪いくせに、身体の発育と色仕掛けを覚えるのは早いんだから~。うちの主人は、
ここ(紫尾支店)に来させちゃいけないわね。誘惑されちゃうわ」
 ここが、タツばあさんの絶妙な間合いだ。タツばあさんの家は、ここ紫尾では
有数の資産家なのだ。当然、鶴亀信用金庫の大事な顧客だ。「誘惑」とは言わな
いまでも、支店を上げて“良好な関係”を維持するよう務めている。
                               (つづく)

2011年6月18日 (土)

第六章「ハイヒール、やめた」⑤

 川の水位に一喜一憂する日々が、しばらく続きそう・・・・。

1106181s
 ふ~~。勤め先のコンビニにて。先週から勤め始めてくださった新人さん。
昨日「無断欠勤」で、ハイ、クビ・・・・・・。

 いや。
 自分だって、今でこそ職業・コンビニ店員をもう何年もしておりますが、
出水に来てから、まともに辞めた仕事なんて・・・・のが実態ですから、
その方には「負けないで」と言ってあげたいです。
 
 とはいえ。
 これで、とてもじゃないですけど、
 「株主総会に出たいので、休みを・・・・」
 なんて言える状態でなくなり・・・・・。
 南日本銀行・森頭取さま、無念であります。

 今をキツイ、きつい・・・と言っておりますが、
 たぶん、もうワンランク上の“キツサ”というのがあり、自作小説すら書く気に
ナレマセン・・・・・という状態が、きっとやって来るのでしょうね。

 ですが!
 せめて、それまでは、わが愛しのヒロイン・むっちゃんには“活き活きと、生きて
欲しい”という願いをこめて。
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       第六章「ハイヒール、やめた」⑤
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
小説」をクリックしてください。m(__)m)

 なにはともあれ、“敵”は「タツばあさん」こと平手達子(ひらて・たつこ)だ。
 タツばあさんは、やれ、電話料金の支払だ、通販で買った商品の代金支払だ、と、
とかく来店頻度が高い。公共料金なぞ「口座引落」があるし、近頃ではコンビニでも
「代行収納」取扱が当たり前だ。ところが、タツばあさんに言わせれば、「お金は、
常に目の前で動かして現状を把握することこそ、家計を預かる主婦の務め」となり、
「コンビニなんて、あんな安っぽいところ、誰が行くもんですか!」となる。
 まあ、それを口実として、愛車である軽乗用車のハンドルを握り、外出をするこ
とが、日々の楽しみなのだろう。ことに、睦のような格好の“口撃”相手を見つけ
だしてしまったのなら、一層張り切るのは、理の当然か。
 睦が先制攻撃とばかりに、大きな声で「いらっしゃいませ。おはようございますっ!」
と、入店してきたタツばあさんに挨拶をすれば、「あ~ら、なに~。そのいかにも、
コンビニの店員がするような挨拶は・・・・・」という反応となり、コンビニなんて、
いかに「代行収納」や「ATM」というサービスで客寄せして、買物をさせようとするの
か・・・・・、くどくどとタツばあさんの“コンビニ批判”論を拝聴しなければなら
なくなり・・・・・。
 またある時には、「おっぱいの大きい女性は、バカである。これは、医学的にも、
統計的にも、証明されている」という演説を始められてしまった。もちろん、男性が
こんなことを言ったら、即“セクハラ”であるのだが、もちろん相手は「タツばあ
さん」だ。その微妙な間合いは、しっかり掌握済みだ。

 さあ、時は来たれり。
 「いらっしゃいませ。おはようございます」
 慇懃無礼、声は大き過ぎず小さ過ぎず。睦は、カウンタ越しにタツばあさんと対峙
した。

 ・・・・・・
 確かに、タツばあさんの視線は、いきなり“背丈の伸びた”睦の上半身を舐めるよう
に動いた。しかし、それを見なかったことのようにして、
 「あなた、生意気ね。テレビに出ていたでしょ」
 と、第一声が発せられた。
 「はい、知り合いが取材してくれたもので・・・。生意気な限りですが」
 言葉短く答えた。
 「そうよ、生意気よ。で、あなた、本当に強いの?」
 単刀直入、斬り込んできた。
                         (つづく) 

2011年6月17日 (金)

第六章「ハイヒール、やめた」④

 それほど米ノ津川は増水せず。

1106171s
とりあえず出水地方では、梅雨前線の活動は小康状態。

 あっ!、今日は金曜日でした・・・・・。
 鹿児島銀行出水支店にお邪魔して、五千円札を準備するのを忘れてしまい
ました・・・。
 う~~ん、今度の土日、万札の出回り量は、どれくらい?

 さ、出勤前に。
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       第六章「ハイヒール、やめた」④
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小説」をクリックしてください。m(__)m)

 もちろん、先輩の茜と小雪から「そんな言われたことなんて、さっさと忘れ
てしまいなさい」と慰められたが、睦は内心痛く傷ついた。
 その日は家に戻ってからパソコンに向って、せっせとネット上を検索し始めた。
探し物は“仕事中にも履ける、消音効果付き、ハイヒール”。勤務時間中に履き
続けられて、なおかつヒール丈の高いもの。根気よく探し続けて、見つけた商品
は1万2千円だった。「えっ!」と躊躇したものの、親に「給料が入ったら、き
ちっと返しますから」と拝んで、お金を借りた。
 そんな苦労をして、手に入れたハイヒールの丈の高さは、八センチ。
 いざ履いて仕事に臨むと、やはり辛い。先輩二人から「いいのよ、そんな無理し
なくて。疲れるだけじゃない」と言われたが、「慣れれば大丈夫なはずです」と
笑って答えた。おまけに、ただでさえ小柄ながら、男性陣にとっては魅惑的な
プロポーションの睦だ。睦がちょっと席を立って歩くだけで、支店内の男性陣は、
思わず動いてしまった視線を、あわててあらぬ方向にそらす動作をする。
                              (つづく)

 すみません。恥ずかしながら「ハイヒール」を、せっせか検索してしまった
のは私です。時間切れ・・・・申し訳ありません。

2011年6月16日 (木)

第六章「ハイヒール、やめた」③

 雷混じりの激しい雨は、降り続き。
 以前なら「(米ノ津)川が氾濫するなんて、ない」と言っていられたの
ですが、やはり一度水害を経験してしまうと、少々不安です。

1106161s
 さて、久しぶりに。
 愛しのヒロイン・むっちゃんに、袋叩きにされておるわけです・・・・
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       第六章「ハイヒール、やめた」③
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 ところがだ。何ごとにも例外というものがある。そして、時にその例外は
“最もあって欲しくないケース”が該当してしまう。御仮屋睦(おかりや・むつみ)
が勤める、鶴亀信用金庫紫尾支店の職員一同、裏では口を揃えて「タツばあさん」
と呼ぶ平手達子(ひらて・たつこ)という、窓口の常連客だ。
 窓口を利用する際、窓口でテラー(窓口係)と世間話を楽しむ、という利用
客、ことに高齢者には多い。もちろん、テラーの側も“それも仕事”と割り切
って、出来るだけ話し相手をするよう心がけている。ことに新人の睦は、先輩
職員である田所茜(たどころ・あかね)や水溜小雪(みずたまり・こゆき)の
作業が滞ってしまうことのないよう、自ら“おしゃべりの相手”を買ってでる
ようにしている。その姿勢も、大多数の常連客の好感を与えるようで、「御仮
屋のむっちゃんに、会いにきたど」と、冗談を言いながら店内に入ってくる者
もいる。
 しかし、「タツばあさん」は、少々?、いやかなり口が悪い。
 勤め始めて早々、睦が新人として挨拶をしようとしたら、
 「あ~ら、あなた、挨拶って、立ってするもんじゃない?」
 と、強烈な一言がタツばあさんの口から出てきた。
 防犯上の観点から、支店のカウンターはいささか高い。小柄な睦は、どうし
ても“カウンターの高さに埋もれてしまう”。それを、強烈に皮肉られたのだ。
                            (つづく)

2011年6月 7日 (火)

第六章「ハイヒール、やめた」②

 コンビニの窓で餌を探すヤモリを発見。
 ああ、夏が近づく・・・・。

1106071s
 でも、ふと疑問に思ったのですが、夏の数ヶ月以外はどこで過ごして
いるのでしょう?

 ふ~~~。雨音を聞きながら、うたた寝。ちょっと生き返った感じが
します。休みの日は、きちんと休まねば。
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       第六章「ハイヒール、やめた」②
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 “お堅い”金融機関に勤める身として、テレビに堂々と登場した睦を、上司・
同僚がどう見るのか、とても気になるのだが、皆おおむね好意的に見てくれた
ようだ。もちろん、睦の普段の仕事に対する取り組みに、「新人らしい一生
懸命さ」が伝わり、好感を持たれているという前提があるからだろう。

 伝票の金額と現金の帳尻を合わせる作業がある。新人の睦から見ると、先輩
OL田所茜(たどころ・あかね)と水溜小雪(みずたまり・こゆき)の電卓を
さばく指の動きは、もはや“神技”だ。睦は、もっぱら伝票の金額を読み上げる
役にまわる訳だが・・・・。
 「十五万八千・・あ・・・ごめんなさい。桁間違えました・・・え・・・
    百五十八万四千四百五十六です」
 先輩の茜が、電卓のキーを叩く手を止めて、冗談交じりに声をだす。
 「試心館の館主サマも、仕事の現場では、まだまだ七難八苦の連続ね。
    さ、がんばりましょう。次、読み上げて」
 「は、はい。次は・・・・」

 また、鶴亀信用金庫紫尾支店の来店する者の中にも、睦の顔を見て、
「あっ、あんた、テレビに出とったね~」
 と気づいてくれる割合が高い。さらには、
「ふ~~ん、こんなカワイイ女の子が、古武道の達人なのかい・・・」
 と感心されるのが、大方の反応だ。
                          (つづく)

2011年6月 5日 (日)

第六章「ハイヒール、やめた」①

 さあ、さあ、あと一日頑張れば、休みじゃ、休みじゃ・・・
 さっさと帰るぞ!と思った午前1時過ぎ。

 黙々と大量の商品陳列に格闘する夜勤者の姿が、目に入って
しまい・・・・・。
  自分が手伝うべきか、気づかぬふりをするべきか・・・。

  しばし考え込んでしまった10秒間・・・・・。

 今日は「鮎解禁日」だ。
 午前3時までには、ある程度終わっているよう、手伝おう。
(鮎解禁合図の花火が上がるのが、午前4時。その1時間前ほどから、
川のそばのコンビニは、お客さんが増えるのです)

1106051s

 今日の店番は穏便に終了してもらうことを願いつつ。

 さ、愛しのヒロイン・むちゃんにも、頑張ってもらわねば。
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       第六章「ハイヒール、やめた」①
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 「紫尾(しび)市にお越しの際は、御館町(おたてちょう)武家屋敷街に
ある新納流試心館(にいろりゅうししんかん)へ、ぜひ遊びに来てください」
 画面の中で、新米館主・御仮屋睦(おかりや・むつみ)が、テレビカメラ
に向って言う。そして、カメラはさっとズーミングされる。
 「待ってま~す!」「ワンッ!」
 “じいさん”こと新納義彰(にいろ・よしあき)、警察官の大山隆志(おおやま・
たかし)、睦の先輩OLである水溜小雪(みずたまり・こゆき)を入れた四人が
声を揃えた。「ワンッ!」と一声入ったのは、飼犬タダモトだ。
 もっとも、純粋に試心館の関係者といえば、むつみと義彰とタダモトだけだ。
「“紫尾市の活性化”のためなら!燃えます!」というカメラマン・桐嶋誠治(
きりしま・せいじ)が、無理やり登場人物としたのだ。
 だが、確かに桐嶋のカメラマンとしての腕はいい。睦が大山相手に演じた試技
を、きっちりアップシーンも取り入れ、それでいて煩雑な画面転換にもならず、
かなりスピード感のある動きとして、画像に収めてくれた。

 桐嶋が、地元鹿児島の民放局「桜島テレビ」にフィルム(データ)を送った
のだろう。数日後の夕方、地元ニュースの時間枠に取り上げられた。
                            (つづく)

2011年6月 4日 (土)

第五章「御仮屋書店にて」⑯

 年々寂れているように思うのですが。
 それでも、出水市のNo.1ビックイベント「鮎解禁」に向けて。

1106041s
 そうそう。
 コンビニの売場で見つけてつい購入してしまいました。
『まいど!南大阪信用金庫』作:平井りゅうじ 画:北見けんいち

1106032s_3

 いえいえ・・・、今月下旬の株主総会に向けて、ではなく、あくまで、
今書いている自作小説のヒロインが、信用金庫の新米テラーさんという
設定だからです。オッホン
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       第五章「御仮屋書店にて」⑯
(最初から読んでみたいと思ってくださった方は、右「カテゴリー」内「自作
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 「よしっ、絶対成功させます」
 坂道が気合をいれる。そして、
 「ボールよ。頼むから、一周してきてくれよっ!」
と改めてボールに念じている。坂道はコツを飲み込むのが早い。最初の方向転換
は、ほぼ成功するようになっている。問題は、こちら側に戻ってくるための方向
転換を成功させられるか、だろう。
 ブツクサ文句を言いながらも買物に出かけた瞬が、帰ってくるまで約三十分
だろうか。

 「さ、行け!」
 坂道が、ボールを放った。

 そろそろ三十分が経とうとしているだろうか。
 「今度こそ!」
 坂道は、小刻みにバウンドする程度に、ボールを強く放った。店の奥の壁にぶつ
かって、一度目の方向転換。ボールは奥の通路を進む。
 そして、
 「あっ!やった~」
 睦は、つい声を上げてしまった。
 ボールは二度目の方向転換にも成功して、通路をこちら側に進み始めた。
 が、しかし、転がる勢いがかなり失せてしまっている。
 「頼む!、帰ってきてくれッ」
 「聡君のところに、帰っていらっしゃい」
 たまらず、睦と坂道がボールに声援を送る。

  あと二メートル・・・・・・。
 ボールも、最後の力を振り絞っているように進む。
 たまらず、坂道がその長身を活かすように腕を伸ばして、ボールをすくい上げた。
  「やった~ッ!」
  「お~っし」
 こういう場面では、二人でどう喜びを表現しようか。
 「そうだ。聡君、ハイタッチしよう」
 睦は、提案した。
 「ええ・・・・、その~~」
 坂道がためらう。そりゃあそうだ。睦と坂道の身長差は三十センチ以上。ひょいと
坂道が腕を上に伸ばせば、天井に届きそうな勢いだ。
 「いいから、いいから」
 坂道に腕を伸ばさせた。
 「いくよっ!」
 睦は、脚のバネを最大限活かして、ジャンプする。

   パチン

 坂道は手のひらを、睦の手を迎えるために、さっと下げてくれた。
 睦の胸が、小気味よく揺れる。それを目にした坂道は、また赤面する。
                (第五章 おわり
                     いえ、話はまだまだ続きます)     
 

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