自作小説 Feed

2011年3月29日 (火)

第四章「新米館主、初仕事」⑦

 休みの日。一週間の寝不足を解消。
 夕方になってから、ガサゴソ起き出して、近所のスーパーへ。
 値引きになったお惣菜を買ってくるのが、ここ数週間のマイ
ブーム。

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 さ!、今日だけは、渡辺淳一か、はてまた谷崎潤一郎か、気分で。
 (ご不快に思われる方は、以後読まないでくださいますように)
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    第四章「新米館主、初仕事」⑦
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 睦はあらためて立ち上がり、意を決してポロシャツのボタンに手をかけた。
そして、シャツを首から引き抜いた。確かに、障子で閉め切られた空間にふわ
りと芳香が広がった。睦の師匠である義彰は「一里(約四キロ)先から、その
香りを嗅げる」と豪語したが、今この空間に同席する者がいたとしたら、誰も
がその芳香に気づいただろう。
 掃除・散歩とこなしてきた身体の肌は、ほんのり上気して、障子越しのやわ
らかな光の中で、かすかに輝いている。ああ、そして、服の下からでも、その
存在を強烈に主張してきた胸。睦は、今の新緑の季節に合わせて、薄緑色のス
ポーツブラを着けてきたのだが、シャツ一枚覆いを外された胸は、ここぞとば
かりにその高まりを魅せつける。
 続いて、ジャージの紐をゆるめて、腰から落とす。実のところ、睦のヒップ
があまりに立派なため、腰から落とす時は、少々力をこめなければならない。
ブラと色を合わせた薄緑色の女性用トランクスに覆われた腰が姿を現す。ジャ
ージを脚から引き抜くために突き出された腰が、胸に負けじとそのボリューム
感を誇示する。最後に両足の靴下を脱ぐ。
 下着姿になった睦は、くるりと室内を見回してみた。床の間にかけられた(
新納)忠元公の頬が、気のせいか赤らいだように思う。

                         (つづく)

  って、読んだくださった男性の方々、少しは興奮できましたでしょうか・・・。

                     作者(私)、大照れ・・・。

2011年3月25日 (金)

第四章「新米館主、初仕事」⑥

 午後6時40分ごろ。

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 さ、一気にミネラル・ウォーターが当店でも、品薄に・・・。

 で、照れずに。
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    第四章「新米館主、初仕事」⑥
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 (さてと・・)
 睦は、手にしていたバックを置き、その中から道着を取り出した。
 道着といっても、新納流には正式な“道着”なぞない。睦が十代の頃の
“稽古”といえば、もっぱらジャージ、夏場はTシャツに短パン姿で、あった。
「いやいや、やっぱり形(かたち)も大事じゃないの」と、高校一年の時、お
年玉をはたいて購入したものだ。上下真っ白な剣道着でも、と思ったのだが、
刺子地の剣道着では重過ぎる。胴着は、帆布地の空手着にした。
 もっとも、これまで数回しか着たことはない。
 高校での勉学が大変になってきたから、という理由ももちろんあるが、急激
に“女”の身体へと変貌していくわが身への戸惑いが、睦の「新納流(にいろ
りゅう)」への熱意を失わせたのかもしれない。
                 
                        (つづく)

 わ~~い、まだ照れています・・・・。

2011年3月23日 (水)

第四章「新米館主、初仕事」⑤

 昨日は午後7時からでよろしい、とのことで、お言葉に甘えて。

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 ふ~~。ひとつ、大発見したこと。
 「為替相場」をまったく気にしなくなると、毎日堂々とお昼頃まで
寝れる~~!!これは、とっても健康的なことであるぞ~~、うむうむ・・。
 もう一段階進化して、起きたらさっとシャワーを浴びて、髭剃って、身なり
を整えて、外出します!!となれば、さらによし、なのですが。
(今のところは、パソコンの前で眠気覚ましのコーヒーをすすりながら、
ボ~~ッ・・・というパターン)

 さて「自作小説」ですが。
 たかが私ごときが書く“青春小説”であっても、「震災」をどう取り上げる
のか?というのは、ひとつ難しい課題であるな~~と。
 まったく「震災」に触れずに書くことだって可能であるわけですが、それは
とってもウソっぽくなるし・・・・。
 プロの小説家の方々は、例えば今執筆中の作品にどう反映していくのでしょ
うか・・・・・。
(いやいや、もちろんただ今現在「小説どころじゃねえだろ!」という方々が、
この日本に多数いらっしゃること、自覚しておるつもりです)

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    第四章「新米館主、初仕事」⑤
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 (見せるお相手は、これで揃ったか・・)
 新納流試心館(にいろりゅうししんかん)の新米館主・御仮屋睦(おかりや・
むつみ)は覚悟を決めた。
 「それじゃあ、私、着替えます。じいさん、表の間を貸してね。」
 「うむ。床の間に、武蔵守(新納忠元の官名?)殿を掛けておいた。」
 「ありがとう。大山さんも、着替えよろしくお願いします。」
 柔道の有段者である警察官・大山隆志(おおやま・たかし)自身に、相手を
務めてもらうつもりだ。新納流の継承者である新納義彰(にいろ・よしあき)を
相手に、「演武」を演じてみせることも可能なのだが、それでは新納流の「形なぞ
なし」のよさを伝えられない。事前に、大山には柔道着の持参を頼んでいた。
 表の間の障子に手を掛けて、ふいと睦は振り向いた。
 「あっ、そうだっ。すみません、水溜先輩、じいさんがのぞかないよう、見張
って頂けませんでしょうか。」
 「ぎゃ~~、ジェントルマン(紳士)であるわしの評価を下げるようなことを、
言うでない。」
  いつもの軽口の応酬だ。
 「OK。安心して。」
 先輩・水溜小雪(みずたまり・こゆき)も、その雰囲気に即合わせてくれた。

 睦は、表の間に入って、障子をきちっと閉めた。
 午前中のこの時間帯は、表の間は日当たり良好だ。障子によって柔らかくされた
光が、部屋の隅々まで行き渡っている。
                        (つづく)
  さあ、着替えシーンなのですがムズカシイ・・・・。

2011年3月22日 (火)

第四章「新米館主、初仕事」④

 気がつけば、公園の桜が咲き始めておりました。

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 ふ~~、自分も元気にならねば!

 って、ことで。
 
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    第四章「新米館主、初仕事」④
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 ふいと、門の前に一台の車が停まった。
 (あのクルマは!・・・・)
 一見軽自動車のようだが、実はイタリアのメーカー・FIAT(フィアット)社
製。赤色に彩られたその車の中から、一人の女性が手を振った。
 「水溜(みずたまり)先輩ッ!」
 御仮屋睦(おかりや・むつみ)は、大きく頭を下げた。
 「ちょっと待っててね。車、停めてくるから。」
 この武家屋敷街は観光地として、整備が進められている。「新納(にいろ)家
屋敷」も、重要な観光スポットのひとつなのだ。幸いなことに、道をへだてた反
対側には駐車場が広がっている。
 「ほう・・・・。むっちゃんには、あんなきれいな先輩がおるんか・・・。」
  当家の主人・新納義彰(にいろ・よしあき)が感想を洩らす。

 「おはよう。御仮屋さん。皆さん、おはようございます。」
 薄緑色のカーディガンを羽織り、白のひざ下丈パンツ。すらっとしたふくらはぎ
の白さが眩しい。水溜小雪(みずたまり・こゆき)は、ニッコリと男三人に微笑ん
だ。男たちがぎごちなく挨拶を返す。
 「あっ、こっちのワンちゃんの、名前はなんていうの?」
 「はい、タダモトって、いいます。」
 「そう、お利巧そうなワンちゃん・・・」
 小雪はしゃがみこんで、タダモトの頭をなでる。
(もう、タダモトったら・・・)
 睦が相手であれば、挨拶代わりにまずじゃれてくるタダモトのくせに、小雪
の前では、きちんと“お座り”をして、その代わりに尾を激しく振って、歓迎の
意を表している。頭をなでられて、大満足なのだろう。

 「あの・・・、水溜先輩、昨日のうちに“(鹿児島)市内”に戻られたん
じゃ?・・・・。」
 紫尾市から県庁所在地・鹿児島市まで、峠を二つ越えて、車で約二時間弱。平日は、
紫尾市内にアパートを借りて寝起きし、金曜、仕事を終えたら、さっと車を走らせて
“市内”に戻る。小雪の一週間の生活パターンだ。だから、小雪が「私も、新納流
とやらを見てみたい」と言ったのは、あくまで“話のあや”だと解釈していた。
 「ううん。一応支店長・係長から、御仮屋さんの“お目付け役”を仰せつかって
いるの。それにね、私は、あなたにちょっと興味があるな・・・、ふふ。」
 「そんな~、先輩、休みの日まで・・・、恐縮です。」
 睦は、再び大きく小雪に頭を下げた。
                         (つづく)

 だっから~、クルマのことは、私全然知りません・・・。
 出水市内から鹿児島市内まで、約1時間半?
 

2011年3月19日 (土)

 お天気が下り坂になって、日中の気温は温かくなりました。
 これは、春のお天気パターン?

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 勤め先のコンビニで。
 なにげなく、チューハイ類(お酒ですね)の欠品(発注できない)が
多くなってまいりました。「有事の際、そんな“不要不急の品”を生産
している場合じゃない!」って、こと?

 さて、“不要不急”の際たるもの、わが自作小説。
 作者としては、ホント不思議なもので、
 他の方からは、「気持ワリイ」と思われるでしょうが、
 作中人物から「書け~!」とせがまれるもので。
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    第四章「新米館主、初仕事」③

 それでも睦は、
 「ちょっとジイサン、昔は武道雑誌の取材すら受けなかったくせに、
今日は撮影OK、なんて言ったんじゃないでしょうね~。」
 と文句を言ってみた。
 「もちろんOKしたさ。わしだって、桐嶋君と同じく、美人古武道の
達人、御仮屋睦ちゃんをテレビで見たいのさ。ファンレター殺到なんて
ことになったら、むっちゃんだって、嬉しかろ。」
 「もう・・・・。ポリシーないんだから・・・・。それで“道場破り”
までやってきちゃったら、私、館主としてじいさんに相手を命じますから
ねっ!」
 「ほほう・・・・。そりゃあ、楽しみだ。美人館主を守るために、戦う
老武芸者、ちとカッコイイかのう・・・・」
 (はぁ・・・・。ダメだ、こりゃあ・・・)
                      (つづく)

  時間がなかった・・・・

2011年3月17日 (木)

第四章「新米館主、初仕事」②

 今日は「日記」の部分と「自作小説」の部分を分割して
みました。

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    第四章「新米館主、初仕事」②
 「あっ、自己紹介させてください。私、こういうものです。」
 名刺を差し出してきた。

 『紫尾写真館
    常務取締役 桐嶋 誠治(きりしま・せいじ)』

 「紫尾写真館」といえば、紫尾市では古参の写真店だ。“常務取締役”
という肩書きは、おそらくその「跡取り息子」という意味なのだろう。
 「あっ、鶴亀信用金庫といつもお取引してくださり、ありがとうござ
います。」
 睦は、新米館主から信金の新米預金係の顔に、あわてて戻って頭を下げた。
 「いやいや、そんな~、今日は、そんな堅苦しい挨拶は抜きにして。
  すみません、もう一枚、私の名刺もらってください。」
 と、もう一枚差し出してきた。

 『紫尾テレビ・ニュース社
    代表 桐嶋 誠治
   桜島テレビ 嘱託カメラマン』
 
 「桜島テレビ」といえば、鹿児島のローカルテレビ局だ。「嘱託カメラ
マン」ということは、どうやら地元・紫尾地区で撮ったニュース映像等を、
局に送る仕事もしている、ということだろう。
 「あっ、いや~~、こちらは半分趣味のような肩書きで~。紫尾地区に
密着した、超ローカルテレビ局を作りたいな~と思っていたりするもの
で・・・。」
 桐嶋は、ちょと照れたように説明してくれた。
 「桐嶋さんとは、言葉は悪いんですが、よく交通事故現場等で顔を合わせ
ているうちに、なんとなく仲がよくなって・・・ですね。防犯訓練の時の
映像も、ニュースではカットされた御仮屋さんの華麗な動きを、後で見させ
てもらったんです。」
 大山が、横から付け足した。
 「そうそう・・・。御仮屋さんのような美人が、古武道の流派の跡取りに
名乗り上げたって~~!そりゃあ、もう密着取材するきゃない!!って、今、
新納さんに、お話していたところなんです。」
 桐嶋は、意気高々と語った。

 (えっ、テレビ取材~!)
 ついつい「じいさん」こと、当家の主人・新納義彰(にいろ・よしあき)の
方に目を走らせたが、「じいさん」は素知らぬ顔をして、そっぽを向いた。
                          (つづく)

  本当のところ、警察官とその他一般市民が仲良くなる・・・・・
   って、あまりイメージないのですよね・・・・・・。
(普通に一緒に酒を飲む、なんてあるんでしょうか・・・)

2011年3月16日 (水)

第四章「新米館主、初仕事」①

 ファザード看板の照明を消して営業中。

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 ・・・・って、お昼過ぎに両親に電話しようとしたところ、
呼び出し音のみ。 
 オイオイ、おやじ!おふくろ!~。
  頼むからあまり外出しないで、家でじっとしていてくれ~~。

 「食べ物」を求めて、ヨタヨタ街を彷徨う姿が思い浮かんでしまい・・・。
 う~~~ん、自分が両親の手足代わりになるために、いったん帰省すべき
なのかな・・・・・・。
 でもね・・・、たぶん“様子見”のつもりで帰ったら、もう出水には
 戻ってこれないんじゃないだろうか・・・・。

 以下は、わが心を紛らわすために。
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   第四章「新米館主、初仕事」①
 土曜日は、穏やかな春の晴天に恵まれた。 
 「新納流試心館(にいろりゅうししんかん)」の新米館主・御仮屋
睦(おかりや・むつみ)は、平日よりも朝寝坊をさせてもらってから、
「試心館」に顔をだした。待ってました!とばかりに大騒ぎするタダモ
トに「ごめん。今日は土曜日だから、朝寝坊したの」と謝ってから、いつ
もどおり屋敷内外の掃除、そしてタダモトとの“散歩”に出た。山の中を
「走る」ときは用心して、手は軍手、女にとって最も大事な(?)顔は
しっかり頬かむりをするようにしている。『堀跳び』は、まだ再挑戦して
いない。
 もっとも今朝は、他の多くの飼犬と同様、タダモトには大人しく道路上
を歩いてもらった。「穴埋めは、ちゃんとするから」と言い聞かせた。

 睦が散歩から帰ってきてみると、この家の主人(あるじ)・新納義彰
(にいろ・よしあき)は、二人の男性を縁側に上げて、なにやら楽しそう
に談笑している。一人は、もちろん紫尾警察署の巡査・大山隆志。
 もう一人の男性が、睦の姿を見かけて、ぴょこんと立ち上がった。傍ら
には、かなり高価そうなテレビカメラが置かれている。
 「どうも。おはようございます。はじめまして、でしょうか・・」
 その口ぶりからすると、相手の方は睦のことを知っているらしい。
 (そうか。防犯訓練の時、テレビカメラで撮影していた人だっけ・・・)

                         (つづく)

  出勤前に、もう一回両親に電話してみます・・・。

2011年3月11日 (金)

第三章「新規顧客=新弟子?」⑦

 午後7時前、ねぐらを目指すカモの一群。
 自動車の音にまぎれて、上空からカモたちの鳴き交わす声。

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 東北地方で、また大きな地震があったよし。
 心から、お見舞い申し上げます。

 さて、わっ、もうこんな時間。第三章の締め、だけでも。
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  第三章「新規顧客=新弟子?」⑦
 結局、御仮屋睦(おかりや・むつみ)は、次の土曜日午前、『新納流』
を披露することとなってしまった。もちろん断ることも出来たが、睦の
内心に、「新納流を知ってもらいたい」という気持が強くあったからだ
ろう。

 ・・・・・・とはいえ、
 新納流には、ルールを持った試合のようなものも、他人に見せるため
の“形”のようなものもない。
     さて、どうしたものだろう・・・・・。
                       (第三章おわり)
                         次章へ

2011年3月10日 (木)

第三章「新規顧客=新弟子?」⑥

 スミマセン。毎日、ワンパターンな写真になってしまっていますね。

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 ふ~~。今日は“午後7時からの出勤でよろしい”となっているの
ですが、10日“給料日”ということで、忙しいのでしょうね・・・。

 さてさて。
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  第三章「新規顧客=新弟子?」⑥
 「ええ、あの、少しだけ・・・・」
 睦は、言葉を濁す。
 「合気道でしょうか?」
 大山は、さらに質問を重ねてきた。
 「そうですね・・。強いて言えば、古武道って、言うのでしょうか。
それを、少々・・・・」
 (『新納流(にいろりゅう)』と言っても、知らないだろうからね)
 「ほう、古武道?ですか。・・・・・あっ、そういえば、パトロール中
に、御館町(おたてちょう)で、う~ん、なんて読むんだろうか、『にい
ろりゅうししんかん(新納流試心館)』?っていう看板を見かけたことが
あって、一度覗いてみたいと思っていたんですが、その流派でしょうか?」
 大山は、『新納=にいろ』と読むそれなりの知識と、仕事熱心さを持ち
合わせているらしい。睦は、好感を持った。
 「はい、その『新納流』です。」
 「あっ、あの・・・、自分、その稽古を見学させてもらうわけには、いき
ませんでしょうか・・?」
 (えっ!)
 稽古もなにも、新米館主である御仮屋睦と『じいさん』こと新納義彰
(にいろよしあき)、そして犬のタダモトがいるだけだ。睦は、答えを
思いつかず、つい黙ってしまった。それを察した相手は、
 「あっ、ひょっとして部外者には見せない、秘伝の流派だとか・・?」
と推測してくれるが。
 「あっ、いえいえ。決して、そういう流派じゃないんですが・・・」
 (私が館主の流派だなんてね・・・・、説明しようがないじゃない・・)

 不意に、
 「あらあら。その『新納流』とやら、私も見てみたいわ。御仮屋さん、
ダメ?」
 という声が横から飛んできた。休憩を終えて、フロアに戻ってきた水溜
小雪(みずたまり・こゆき)だ。
 「あっ、あの~、稽古もなにも・・・。館主が私で、あっ、いえっ、
昨日私が『館主になります』って、宣言したばかりで、あと『じいさん』
って、あ、あの~、屋敷の持ち主がいるばかりで・・・・・」
 睦はつい、しどろもどろになりながら、『新納流試心館』の現状を説明
してしまった。
 (しまった~!)
 と思ったが、後の祭り。
 大山、小雪、茜はもちろん、さりげなく話を耳に入れていたフロア内
の者全員の視線が、睦の方に向けられた。
                       (つづく)

2011年3月 9日 (水)

第三章「新規顧客=新弟子?」⑤

 川面にも、春の気配?

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 昨夜は、ちょっと体力温存することができました・・・。

 さてと。
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  第三章「新規顧客=新弟子?」⑤
 今どき“お付き合い”で、数千円程度入金して新規口座を開設されて
も、金融機関の側としては経費がかさむばかりで、正直歓迎しない。し
かし、ただ今現在来店している大山は「警察官」=「公務員」。やはり
鹿児島県のような地方においては、なにをおいても“上客”だ。おまけ
に、警察組織は“鉄の規律”に覆われている組織だ。主な利用金融機関
は、県内トップを誇る桜島銀行が圧倒的だ。そんな警察官である大山の
来店は、睦の“手柄”だろうか。
 睦が必死になって口座開設の手続きをする間、先輩の茜がせっせと大
山に話しかける。
 「大山さん、ご出身は?・・・・・まあ、鹿屋!、遠いのね~。じゃあ、
今のお住まいは、あのオンボロ・・!・・、あらあらごめんなさい、あの
単身者用アパートに?・・・そう、おかわいそうに。不規則な勤務で、食事
も大変じゃないかしら・・・・・。」
 話し続けながらも、茜はついと睦の方に一枚のチラシを滑らす。
 『いざ!というときに、便利
     クレジット・カード機能がついた、新型キャッシュ・カード
                          つるかめカード』
 (大山さんに、ご案内しなさい!)という意味だ。

 睦は、なんとかキャッシュ・カード作成申込の手続きまで完了させた。
 大山には、粗品のボックス・ティッシュとボールペンを差し出しながら、
 「ありがとうございます。今後も、鶴亀信用金庫をよろしくお願いします。」
と、頭を下げた。ところが、だ。相手の目的は、もちろん単に口座開設だけで
はない。
 「あの・・・・・、御仮屋さんは、なにか武道をやっていますよね?」
 大山は、本題を切り出してきた。
                       (つづく)
  金融機関だと、支店長なり、次長なり、もっと登場人物がいないと
おかしいのでしょうが、う~~~ん、人物設定がムズカシイ・・・・。

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